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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第22話 じゃあな

白かった。


どこまでも、白かった。


暖かい。


風もない。


音もない。


ただ、白い空間が広がっていた。


ユウジは目を開けて、ゆっくりと起き上がった。


「……ここ、どこだ。」


呟く。


辺りを見渡す。


何もない。


誰もいない。


ただ、白い。


困惑しながら、思考を巡らせる。


爆発。


イデアの自爆。


剣を突き立てた感触。


どす黒い光が自分を飲み込んでいく感覚。


そして。


「……なーんだ。」


ユウジは小さく笑った。


「俺、死んじまったのかよ。」


不思議と、怖くなかった。


思い出す。


屋上から落ちていった日のこと。


目が覚めたら、腕と足がなかった日のこと。


魔王に出会って、全てを与えてもらった日のこと。


この世界で剣を振るい続けた日々のこと。


魔王やリナの下で戦い続けた日々のこと。

そして。


ブレイビアの戦場で、ユウトと刃を交えた日のこと。


「……俺の生き様か。」


呟く。


「めちゃくちゃだったな。」


誰かを傷つけた。


誰かを殺した。


間違いだらけで、後悔だらけで。


それが自分の人生だった。


だが。


「……でも。」


最後の瞬間が、蘇る。


どす黒い光の中で。


剣を突き立てた瞬間。


ユウトが叫んでいた。


自分の名前を。


必死に。


「……役に立てたじゃねえか。」


ユウジの口元が、柔らかく緩んだ。


最後の最後で。


誰かのために動けた。


それだけで、十分だった。


その時だった。


気配がした。


顔を上げる。


白い空間の向こうから。


ゆっくりと、人影が現れた。


黒髪に。


金色の差し色。


柔らかな笑みを浮かべた。


女性だった。


「……」


ユウジの思考が、止まる。


「……母……さん?」


声が、震える。


「母さん……なのか?」


目を大きく見開く。


女性は何も言わなかった。


ただ、手招きをした。


「こっちにおいで。」


優しい声。


記憶の奥底に刻まれた、あの声。


「——ッ」


途端に。


頬が熱くなった。


何かが頬を伝う。


…涙だった。


いつの間にか涙が一粒。


零れていた。


「……っ」


気づいた瞬間。


止まらなくなった。


ユウジは走っていた。


白い空間を。


全力で。


母親の元へ。


母親はユウジをぎゅっと抱きしめた。


温かかった。


ずっと忘れていた温もりだった。


「……お兄ちゃんとは、仲良くできたかい?」


優しい声が、頭上から降りてくる。


「俺っ……俺!!」


ユウジは嗚咽を零した。


「たくさん兄貴に迷惑かけたっ……!!」

「迷惑ばっかりかけて……ちゃんと……ちゃんと向き合えたか分かんねえ……っ!!」


声が割れる。


涙が止まらない。


母親は目を閉じたまま、抱きしめ続けた。


「そっか……。」


静かに。


「ちゃんと仲直りは、できた?」

「そんなの分かんねえよ!!」


叫ぶ。


「でも……っ!!」


一息。


「兄貴に、ホントの気持ち言えたぜ!!」


しばらく、沈黙が続いた。


母親は何も言わなかった。


ただ、ゆっくりと背中を叩いた。


それから。


「なら、大丈夫だよ。」


穏やかに言った。


「お兄ちゃんはね。」


一拍。


「ユウジのこと、大好きだからね。」


ユウジの嗚咽が、また大きくなった。


「母さん!!」


ユウジは顔を上げた。


涙でぐしゃぐしゃのまま。


「ごめん……ごめん!!」


「俺……たくさんの人を傷つけた!!」


「殺したりも……した!!」


声が、震える。


「だから……俺、母さんと同じとこ行けねえ!!」


言葉が続かない。


ただ、涙だけが止まらない。


母親はゆっくりと。


またユウジを抱きしめた。


そして。


「ユウジ。」


名前を呼んだ。


「私はいつでも、ここで待ってるよ。」


それだけだった。


ユウジは困惑した顔で顔を上げる。


「なんで……。」


「なんでこんな出来損ないの俺なんかに……。」


言いかけた、その時。

「母親だからだよ。」



静かに遮った。


ユウジの言葉が、止まった。


「……そっか。」


数秒後。


ゆっくりと呟いた。


「そうだったよな……。」


ユウジの顔から、力が抜けた。

ぐしゃぐしゃだった表情が、ゆっくりと。

柔らかくなっていく。


次第に、白い空間がさらに柔らかな光に包まれていった。


温かい光だった。


眩しいけれど。


痛くない。


優しい光だった。


ユウジは母親の肩に頭を預けたまま。


その光を見ていた。


「……なあ、母さん。」


「なに?」


「俺さ。」


一拍。


「最後、兄貴の役に立てたと思う?」


母親は答えなかった。


代わりに。


ぎゅっと。


もう一度だけ。


抱きしめた。


ユウジはそれで十分だった。


目を閉じる。


光に包まれながら。


最後に思ったのは。


あの日の病室の拳だった。


コツン、という小さな音。


「次は……次こそは……」


「必ずっ兄貴に勝ってみせるから!!」


あの頃の自分の声。


「……ハッ。」


小さく笑う。


「結局、勝てなかったな、兄貴。」


「でも。」


「まあ……いいか。」


光が全てを包んだ。





じゃあな、兄貴。







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