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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第18話 追撃

国王はただ、立っていた。


廊下の壁を背にして。


目の前では、若者たちが血を流しながら戦っている。


ユーリが壁にめり込んだ。


レッカが斬撃を浴び続けた。


ユウトが膝をつきかけた。


「……」


王の拳が。


静かに握られる。


守られている。


ただ、守られている。


この国の王が、

若者たちの背中に隠れているだけだ。


「……情けない」


誰にも聞こえないように、呟いた。



(……あかん)


ユウトは内心で舌打ちをする。


加速神域を展開しながら、

レッカの動きを目で追いながら、冷静に現状を分析していた。



(ダメージは通っとる)

(でも……足りへん)



イデアの再生速度はどれだけ斬っても追いつかない。


瞬歩に加速神域を重ねた神速でも削りきれない。



(火力が足りへん)

(決定打がない)


そして。


もう一つ。


もっと深刻な問題。


(俺の魔力が……)


ユウジ戦での加速神域の連続使用。


その消耗が


今になって全身に重くのしかかっていた。



(アイツが……)


脳裏に。


白い髪が浮かぶ。


赤い瞳。


隻腕の斧使い。



(アイツがいれば)

(雷神斬の一撃なら……届くかもしれへん)



だが

ティナはユウジ戦での負傷で。


今はアスミの治療を受けている。


戦線にはいない。


(頼れへん)


(今は俺とレッカだけや)


歯を食いしばる。


レッカへ。


もう一度。


加速神域をかけようと魔力を練る。

その瞬間


「——ッ」



膝が崩れた。

石畳に片膝をつく。


視界が揺れる。


魔力が空だった。




レッカは自身の身体が急に重くなったことを即座に察した。


バフが切れた。


ユウトの魔力が尽きた。


それだけで理解する。



だが

「……関係ねえ」


構わず。


踏み込む。


「——ッ!!」


瞬歩。


加速なし。


それでも。


突っ込む。


イデアはその様子を見て


ゆったりと笑った。


「……支援が切れましたね」



余裕の声。


「それにしても」


レッカの軌道を静かに見極めながら。


「アナタの剣術は」


一拍。


「師匠……シンには。及びませんねぇ」


「それに」


裂けた口が歪む。


「ユウトの加速神域がなければ」


「アナタなど……虫同然だ」


「んだとォ!?」


レッカの目に火が灯る。


「言ってくれんじゃねえか!!」


加速なし。


それでも


全力でイデアへ。


一直線に突っ込む。


「——ッ!!」


だがイデアは動じない。


レッカの軌道を。


完全に、見抜いていた。


「直線的すぎる…と前回も言ったはずですが…」


静かに。


呟いて。


カウンター。


爪撃が。


レッカの胴を捉えた。


「——がっ!!」


吹き飛ぶ。


地面に叩きつけられる。


転がる。


「……ぐっ」


立ち上がろうとする。


だが、脇腹がじくじくと痛む。


軽傷。


だが立てない。





ユウトは、膝をついたまま立とうとする。


「——ッ」


震える。


全身が鉛のように重い。


魔力が空だ。


それでも、立とうとする。


だが立てない。


「……」


イデアは。その様子を見ていた。


ユウトの膝が震えている。


レッカが地面に倒れている。


ユーリは壁にめり込んで動けない。


状況を一瞬で把握した。


「……ふぅ」


息を吐く。


「では」


両手を上げる。


魔力の衝撃波が、両の掌に集まる。


「終わりにしましょうか」


狙いはユウトとレッカ。


二人同時。


放たれる。


その瞬間。




ザシュッ!!

鈍い音。


血飛沫が。


宙を舞った。


金属と肉が交わる音。


それは、イデアの背中から走った。


「——ッ!?」


イデアの身体が。


前に傾く。


初めて驚愕がその顔に浮かんだ。


「なっ……」


振り返る。


その視線の先。


廊下の奥。


白い髪。


「……」


赤い瞳が

まっすぐにイデアを見ていた。


左腕に血の付いた斧を構えて。


「遅れた」


短く。


ただそれだけ言って。


ティナは静かに立っていた。




ユウトはその姿を見た瞬間。


「……っ」


言葉が出なかった。


治療中のはずだった。


まだ傷が癒えていないはずだった。


それでも来た。


レッカも、地面から顔を上げて。


ティナを見た。


そして

二人は同時に。


ニヤリと笑った。


「……やっぱ来たか」


レッカが呟く。


ユウトは、震える膝を押さえながら小さく笑った。


「……遅いわ」


その一言に。


ティナの口元が、ほんのわずかだけ。


動いた。


「うるさい」


静かに返して。


斧を、握り直す。


赤い瞳が


イデアを。


射抜いた。


廊下の空気が、一変した。

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