第八話
公開討論会が終わった日、気力を使い果たしてぐっすりと眠るシアの横で、アルドはなかなか寝付けなかった。頭が暑い。まだうっすらと、公開討論会の熱狂が残っている。
アルドはリュックから手帳を取り出して新しいページを開くと、さらさらとペンを走らせた。
──親愛なるベルーセ村のみんなへ。
ついに、ついにシアが目的を果たした!
芸術都市ジャンボの突然の侵略から六年、ついにシアは、やり遂げた。ベルーセ村で被害に遭った全員の仇を討ったようなものだ。
最初に計画を聞いたとき、どうやってジャンボの略奪を問うのかと不思議だった。泣き寝入りするしかないんじゃないかと、暗い気持ちでいたこともあった。
けれどもシアは、やり遂げたんだ。
正直なところ、俺にはよくわかっていないところもある。けれども、よくやり遂げたものだという感慨の方が勝っている。
シアはベルーセ村の英雄みたいなものだと言ったら、彼女は鼻で笑った。
「性格が悪くて、ちょっと口が達者なだけだよ」
シアは照れ屋だから、すぐそうやって自虐する。成果を誇らないところが彼女らしい。
「私がそうしたかったんだよ」
そんなふうに、自分がどうしたかったかに置き換えてしまう。けれども俺は、知っている。シアはまぎれもなくベルーセ村のために戦い切った。被害を公にした。
そんなシアが、とても好ましい。
彼女の隣にいられること、彼女を武力で守れることは、心の底から俺の誇りだ。
「アルドくんがいたから、安心して屁理屈をこねられたんだよ」
シアはそう言って笑っていたけれど、その目は潤んでいた。
シアにも、やり遂げたって感覚があるんだろうな。
明日、俺たちはベルーセ村に向けて出立する。
村に帰ったら、しばらくゆっくりとベルーセ村での暮らしを楽しむ予定だ。乗合馬車はちょっと俺には窮屈だからな。
……村でののどかな暮らしが懐かしいよ。
村に戻ったら、みんなの墓参りもするつもりだ。
それじゃあまた。略奪によって命を落としたみんなが、安らかに眠っていることを願って。
──アルド
送らない手紙をしたためて、アルドはぱたんと手帳を閉じた。
先ほどより、のぼせた頭が冷えてきた。アルドはリュックに手帳を戻すと、ゆっくりとシアが眠っているベッドの端に寝転んだ。
シアがもにゃもにゃと寝言を言って笑う。
アルドはその様子を微笑んで見守ると、まぶたを閉じた。




