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病死という名の自殺  作者: 傘花
第一章
6/13

1-5

小説の更新情報は下記の傘花SNSよりご確認いただけます( ・∇・)


Instagram:@kasahana_tosho

 仕方なく、酒井を浩介の書斎へと連れて行く。


 室内へ入ると、にこやかに笑うわけでもなく、けれど穏やかな表情を浮かべる浩介がじっとこちらを見ていた。


 酒井がゆっくりと浩介の遺影に近付く。慣れた手つきで線香の先に火を付けて、手を合わせる。


 目を閉じたまま、酒井はしばらくそうしていた。その背中に声をかけることもできず、私はただ本棚を上から下まで何度も眺め続ける。


 実家にいるはずなのに、ただずっと居心地が悪かった。


「酒井さん。紅茶とコーヒー、どちらが良いですか?」


 だから、敦子がそうやって空気を遮るようにして書斎にやってきたことに、私は少し安堵する。


 漸く酒井が顔を上げて、優しげな笑みで敦子の方へと振り返る。「コーヒーで、お願いします」


 酒井の言葉に、意気揚々と敦子がキッチンへと戻っていく。


 そんな母親のわかりやすい態度を見れば、話し相手ができたことが嬉しいのだとすぐに察した。


 その役目を自分が背負い切れないことにちくりと胸の痛みを覚えて、けれどすぐに考えることを放棄する。


 もう帰りたい。ただそれだけが、私の頭を支配する。


「静波、さん」


 敦子に向けられていた酒井の視線が私を捉える。その視線に何故だかとてつもないほどの嫌な予感を感じて、私は反射的に眉を顰めていた。


「何故、私がここへやってきたのか、そのお話がまだできていませんでしたね」


 浩介から、きっと色々聞かされていたのだろう。敦子のこと、私のこと、家族のこと。だから酒井は何の疑問を抱くことなく私が浩介の娘だとわかったのだろうし、敦子のことも忘れずに覚えていた。涼佑のことも知っているに違いない。


 そんな人が、今、私の目をじっと見ている。その状況に、酷く億劫さを感じる自分がいる。


「……父に、会いにきたんですよね」


 私はこの人と関わっていかなければならないのだと、そんな予感がして仕方がなかったから。


 酒井がふっと息を吐く。そして、ダンスに誘うかのような紳士的かつ軽快な態度で口を開く。


「静波さん。私と一緒に、お父様の死の真相を調べませんか?」


 そんな台詞に、酒井の姿を見つめたまま、私はその場から一歩も動けずにいた。


 凍り付いた私の顔を見ても尚、彼は穏やかな笑みを浮かべて言葉を続ける。


「一緒に、調べて欲しいのです。私のために」

次回投稿は3/4(水)

を予定しております。

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