081 -Aono-
蒼乃はある程度のことはある程度できる才能を持っていた。勉強にしろ運動にしろ、ゲームにしろ。そして、蒼乃のグループ内の立ち位置もゲームに影響を与える。誰かを標的にすることができるゲームがあった時、標的には選ばれない。そういう面では律がもっとも被害に遭う。もっともそれは律の良いところだと思う。
「なんで、私ばっかり狙うの!?」
律がコントローラーを駆使して逃げ惑う。三人から集中砲火を受けていた。
律に罰ゲームを受けてほしくない蒼乃だが、それ以上に自分が罰ゲームを受けたくない。仕方のない選択だった。
「律の負けですね」
罰ゲームは総成績で決めようということになっていた。しかし、一戦しただけで察する。罰ゲームを受けるのは律だろうと。
「ひなちゃんがゲーム得意なのが納得いかないんですけど……」
「うちは家族みんなでゲームしたりしますよ」
「それなら蒼ちゃんが上手いのはどうして」
「言いにくいけど、私が上手いというより律が上手くないんだと思うわ」
律は不器用なのだと思われる。体を直接動かすスポーツはできても、指先だけでキャラクターを動かすのは不向きなのだ。
「りっちゃんが得意なゲームを選んでもいいよ」
「得意……」
律の言葉が止まる。得意なゲームが特にないことに気づいてしまったらしい。
それでもなんとか律が選んだゲームは、人生ゲームだった。運に身を任せることにしたのかもしれない。
ただ、初手の職業を決めるマスで不運に見舞われた律はフリーターとなる。蒼乃の横で「やっぱりヒモなのかなぁ」と呟いていた。
蒼乃はゲームの中でくらい律と結婚をしたかったが、蒼乃の相手になったのは遥だった。律が遥とくっつかなかっただけマシと思おう。
「なんでフリーターなのに、私はこんなに借金をしないといけないんだ……。というかお金ない人間から祝い金をもらう方もどうなんだ……」
「りっちゃんは運がないねー。リアルだと結構運がいいのに」
「そうなの?」
律の運が良かったエピソードを聞いたことがなかったので、蒼乃が食いつく。
「ゲーム機本体をガラガラで当てたり、抽選系はよく当たるよね。律のおばさんも懸賞は律の名前で申し込むと当たるって言ってたし」
「律、今度六つの数字選んでもらっていいですか?」
「それで宝くじが当たるなら私が買ってるよ」
運の良いラインが微妙なところにあるのが律らしい。
持ち前の運を発揮できず、人生ゲームでも律は大敗だった。律は落ち込むと蒼乃に甘えてくるので、いっそのことこのまま負け続けてもらってもいいかもしれない。
寄りかかってくる律の頭を撫でながら、蒼乃は遥と日向が次のゲームについて話し合っているのをぼーっと聞く。
改めてしっかりとリビングを眺めた。律が何度も訪れたことのある家。
「遥、写真って飾らないの?」
リビングには家族写真も置いていなかった。
「あたしの部屋にあるよ。ゲーム終わったら見せてあげる」
遥の写真ということは、律の写真ということだ。律が嫌そうな声を上げていたが、無視した。いくつか昔の写真は遥から送ってもらったことがあるものの、全部は見ていない。全部見たい。
次のゲームは最初にやったミニゲームを何回も繰り返すものだった。二回目となると蒼乃は随分と操作性にも慣れたが、経験者の律はまだ慣れないらしい。他プレイヤーと確実に独立したゲームであっても自滅していた。もはや罰ゲーム目当てなのか疑いたくなってくる。
「りっちゃん、小学生の頃の方がゲーム上手いんじゃない?」
「そんなことない……」
「あれか。りっちゃんは進歩してないんだな」
遥に決闘を挑まれボコボコにされる律。確実に四人の中では遥が上手だった。ゲームの持ち主だし、当たり前と言えば当たり前だ。
結果、何回やっても律の罰ゲームは変わらなかった。
「蒼乃は律を羽交い締めにするのと、くすぐるのどっちがいい」
どっちも蒼乃が務めたかった。蒼乃と言えど分身はできないため、仕方なくくすぐり役を買って出る。逃亡を図ろうとする律を遥が捕まえ、羽交い締めにする。そんなにくっつかないでほしい。
日向はカメラを回していた。動画でも撮るつもりだろうか。あとでもらおう。
「律、じっとしててね」
「嫌だよ!」
蒼乃は足をジタバタさせる律の懐に入り込む。
「首と脇腹どっちがいい?」
どちらも蒼乃が触ると、律が大袈裟に騒ぐ場所だった。太腿もそうなのだけれど、ここでは遠慮しておく。
「どっちも、」
「どっちもね」
律の言葉に蒼乃の言葉を重ねる。右手は脇腹に、左手は首筋にあてくすぐる。
「やっ、めて!」
律が必死の抵抗をするも、体格差には勝てない。彼女の嫌がる素振りが可愛らしくて、蒼乃もやめ時が分からなくなる。
くすぐり終えた後、律はぐたーとして遥に寄りかかろうとするから、慌てて蒼乃が回収する。
「律、大丈夫?」
「大丈夫なわけがない……」
「それだけ喋れるなら大丈夫よ」
よしよしと頭を撫でる。律はとても拗ねた顔をしているが、可愛いのでもっと撫でる。
「律、可愛い……」
「現状を褒められても嬉しくない」
可愛いものは可愛いのだから仕方ない。律をめいっぱい愛でていると、リビングを出て行った遥が戻ってきた。
手に持っているのは、アルバムのようだった。




