表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイザワ夫婦は全校生徒から祝福されている  作者: 妖精卿
アイザワ夫婦はチョコを作る
74/76

074 -Aono-

 通常、女同士のカップルはバレンタインとホワイトデーの役割をどうするのだろうか。蒼乃(あおの)(りつ)は、ひとまずバレンタインで一緒にお菓子を作ることにした。


 場所は(りつ)の家だった。まず、バレンタイン当日に(れん)がバイトとデートで不在なことを確認済み。それから気を使った(りつ)の母親が、父親を連れて一日家を空けてくれる。クリスマスデートの時もそうだが、物分かりのいい親がいるというのはありがたい。


 バレンタイン当日、蒼乃(あおの)(りつ)と待ち合わせをして買い出しから始めることにする。

 買い物かごは(りつ)が持ってくれた。


(あお)ちゃんとこうゆう買い物するの新鮮だねぇ。新婚さんみたいだ」

「言ってて恥ずかしくならないの?」


 蒼乃(あおの)はちょっと恥ずかしかった。だから手元にあったスマホの買い物リストに視線を移した。


「まずチョコは買わないとね」


 バレンタインデー当日で売り切れてやしないかと思ったが、特設コーナーができて山積みになっていた。


「八十グラムですって」


 (りつ)がチョコの内容量を見て、二枚かごに入れた。それからさらに一枚追加した。


「多くないかしら」

「おやつ用に買おうと思って」


 これから何を作って食べるのか、(りつ)は理解しているのだろうか。


「次はバターね。無塩だから気をつけて」

「塩入ってるのだとダメなの?」

「しょっぱくなるんじゃない?」


 蒼乃(あおの)はお菓子作りには詳しくなかったので、適当に返事をする。わざわざ無塩と記載されているのだから、無でないとダメなのだろう。


「バターって高いんだね。普段はパンに塗るくらいしか使わないのに」


 大した量を使わないのに、売っているバターは大きいサイズばかりだ。残ったのは相沢(あいざわ)家で消費してもらうしかない。


 他にも生クリームやケーキの型をかごに入れていく。


(りつ)、重くない? 私が持つわよ」

「ううん、大丈夫。そこまで重くないよ」


 (りつ)がかごを高く持ち上げて平気だよアピールをする。(りつ)の細腕が心配であるものの、好意に甘えるのとにした。


「買うものはこれで全部かしら」


 メモとかごの中身を照らし合わせる。メモより少し多いが、足りないものはない。


「他に買うものある?」

「甘いものにはしょっぱいものかなぁ」


 (りつ)蒼乃(あおの)の腕を引いてお菓子売り場に戻る。


「ポテチとお煎餅どっちがいい?」

「私はどちらでも構わないけど……」


 蒼乃(あおの)はそもそもガトーショコラだけでいい。食べた後は(りつ)堪能(たんのう)したいと思っている。(りつ)は散々迷って、ポテトチップスのコンソメ味をかごに入れた。はたして、食べる暇があるのか。


 蒼乃(あおの)(りつ)はお買い物に来ている親子より、仲良く手を(つな)いでレジに向かう。


「荷物は私が持ちます!」


 (りつ)が得意気にリュックを見せてきた。


「ありがとう、(りつ)

「私さ、お菓子作るのほぼ初めてだよ」

「ほぼ?」

「幼稚園の(もよお)しものでクッキー作ったのと、中学の調理実習でケーキ焼いたくらい。自分の家で作ったことない」


 無人レジで会計を済ませ、商品を(りつ)のリュックに詰めていく。


(あお)ちゃんは家で作ったことある?」

「あるわよ。バレンタインのチョコ作りで」

「えっ……、まさか男子に?」


 いつもとは立場が逆転して、(りつ) 怪訝(けげん)そうな顔をする。しばらくその顔でいてほしかったが、蒼乃(あおの)はすぐに首を振る。


緋月(ひづき)が作りたいっていうから、一緒に作っただけよ」


 リュックを閉じ(りつ)に背負わせ、空いた手を(つな)ぐ。逃さないようにしてから、蒼乃(あおの)は問う。


(りつ)はどのくらい手作りチョコをもらってきたの?」


 (りつ)の足が止まる。必然的に歩き進めている蒼乃(あおの)の手が引っ張られるが、引っ張り返して(りつ)蒼乃(あおの)の横に並ばせた。


「まず小学生の思い出でも聞きましょうか」


 上りエスカレーターに(りつ)を乗せ、張り付くようにして蒼乃(あおの)は一段下に立つ。


(りつ)


 エスカレーターから降りて、(りつ)の腕にしがみつく。言い(よど)む彼女の名前をもう一度呼ぶ。


「小学生の時はそうね……そうだな……。友チョコだけど、クラスメイトの女子みんなからもらったり、前のクラスで一緒だった仲の良い子にもらったり……したかな」


 クラスの女子全員からチョコをもらう話って本当にあるのだ、と蒼乃(あおの)は素直に驚く。


「でもね! うちの小学校、いや中学校もだけど、女子の人数多くないから。仲もね、みんな良かったの。和気あいあいというの? だからね、そんなにすごいことじゃないよ」

(はるか)も全員からもらってたの?」

「…………」

「そんなにチョコもらってどうするの?」

「チョコだもの。食べるよ」

「食べたカロリーはどこにいってるのよ……」


 改めて(つか)んでいる腕をしっかりと触る。余分な脂肪は一切ついていない。


「それじゃあ中学生の時は?」

「……まぁ、ほら、中学って母数増えるじゃない?」

「それで?」

「さすがにみんな少し大人になったからね。クラスの女子全員からもらうとかはなかったですよ?」

「確か後輩からモテてたのよね?」


 (はるか)がたくさんチョコをもらっていたとしっかり発言しているのを忘れてはいない。


「中学生なんてちょっと歳上に(あこご)れを持つじゃん……それだよ……」


 後半がもごもごしていてよく聞こえない。駅の近くまできて喧騒(けんそう)も激しくなってきているので、はっきりと言ってほしい。


「先輩には猫に(えさ)をあげる感じでもらってただけだし、後輩からは、その、気持ちだけでも受け取ってくださいっていろいろもらったかな……」

「いろいろ。いろいろねぇ」


 そこには数多くの本命チョコが(まぎ)れていたのだろう。


「念のため聞いておくけれど、昨日とかチョコもらってないでしょうね」

「もらってないよ。おはようからさようならまで一緒にいたから知ってるでしょ」


 正確には一つもらっている。(はるか)が友チョコと言って持ってきた、手作りチョコだ。蒼乃(あおの)ももらった。隠さず堂々と持ってきたので許した。


「とりあえず(りつ)が私の想像の何倍もモテるのは分かったわ……」

「私は好きな人に好かれるだけでいいんだけど」

「どこの誰よりも(りつ)のことを好きよ」

「私も(あお)ちゃんのこと誰よりも愛してるよ」


 人通りの激しいコンコースで愛を語り合う。早く歩けと後ろのお姉さんが二人を抜かした。


 最終的に甘いところに落ち着いたので、すでに蒼乃(あおの)の胃も満たされたが、(りつ)が楽しみにしているのでガトーショコラは作る。


「時間通り、父と母は家を出たそうです」


 (りつ)がスマホを確認する。


 あとは(りつ)の家に行って、さっさとガトーショコラを作ればいい。蒼乃(あおの)は電車内でレシピを見返す。最短時間で作ろうと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ