071 -Aono-
スケートを切り上げた蒼乃たちは、近場のショッピングセンターでお昼を食べた。律が食べたいと言ったオムライスを食し、今は買い物に向かっている。
買うものは遥の誕生日プレゼントだった。三人で折半する話であるが、買い物については日向から一任されている。
「蒼ちゃんの誕生日は夏休みだったからケーキにしたけど、さすがに平日にはきついよね」
「遥は朝練もあるし、昼まで常温取っておくのはちょっと怖いわね」
最初はお菓子の詰め合わせでもいいかと考えたが、スポーツウーマンな遥に渡すのは違うかもしれない。
「ちょっといいタオルとかはどう? 部活でも家でも使えるでしょ」
「それはいいね。どこに売ってるかな」
律がスマホを取り出して、三百軒以上ある店舗からタオルを取り扱っている店を探す。
「とりあえず南館の二階にあるみたい」
蒼乃たちがいるのは北館の三階だったので、南下することにした。友達のプレゼントを買いに行く時も、手を絡めてべったりと歩く二人。買い物を出汁にしている感はあった。
「蒼ちゃんってエスカレーター下りる時は前にいてくれるし、上る時は後ろにいてくれるね」
万が一に律が落ちても、蒼乃がクッションになるようにだった。
「優しい彼女で私は嬉しい」
「律以外には優しくないけどね」
「そうー?」
今も遥へのプレゼントは第二で、蒼乃が一番に優先しているのは律だ。律が消しゴムを忘れたら、蒼乃は自分の消しゴムを千切ってでも貸すけれど、他の人なら見て見ぬふりをする。本当に優しいというのは律みたいな人のことを言うのだ。その結果、人たらしになってしまったが。
「律はあまり私以外の人に優しくしないでね」
念押しをしても無駄だと分かっているけれど、一応伝えておく。
「私はあまり人に優しくするほど余裕のある人間じゃないよ。あ、お店あった。あそこだよ、蒼ちゃん」
生活雑貨のお店だった。タオルの他にもボディケアの商品や芳香剤の類も取り扱っている。
「タオルはここだねぇ」
タオルもいくつかカラーバリエーションがあった。
「遥って何色が好きか知ってる?」
「オレンジ」
聞いておいてひどい話だが、律に即答され、蒼乃は少しムッとした。
「でもオレンジのタオルはないね。近い色は焦げ茶かな」
蒼乃の内面を察することもなく、律は楽しそうに焦げ茶色のタオルを手に待つ。値段を見て「もう少し買えますな」と言い、店内を見回した。
「抱き合わせにしよう」
「それはちょっと使い方間違ってない?」
律の手に引かれる。店内を順に見ていく。
「芳香剤はなー、はるちゃんそうゆうの面倒くさがって使わないと思う」
「ボディソープとか乳液は? お風呂はさすがに面倒くさがらないでしょ」
「季節限定の香りとかあるよ。いいんじゃない? お値段的にも」
律がサンプルの匂いを嗅ぐ。ラベンダーは好みでなかったのか、少し眉をひそめていた。
「私は柑橘が好みだなぁ」
「じゃあそれにしましょ」
「蒼ちゃんは嗅がなくていいの? いい匂いするよ?」
「律の鼻を信じるから」
タオルとボディソープを両手で持ち、律がレジに向かう。ラッピングの間は、律が買いもしないオイルの香りを嗅いでいて、蒼乃は律にオススメされたものだけ一緒に嗅いだ。
「ミッション達成!」
包装された商品を受け取り、律が時間を確認する。スムーズに目的を達成したので、まだまだ時間に余裕がある。
「蒼ちゃん、まだデートしてくれる?」
身長差もあいまって、上目遣いだ。身内が危篤状態にならない限り、この誘いを断るわけがない。いつにも増して彼女が可愛い。
「何時まででもデートする」
「遅くなったら補導されちゃうよ」
律といられるなら補導くらい大したことではないが、彼女の経歴に泥は塗りたくない。
「どこ行こうかね。蒼ちゃん見たいものある?」
「いえ、特には」
「私たちいつも買い物してるもんね。じゃあ、ゲーセンにでも行ってみる?」
「私、あまり行ったことないけれど……」
「なら、なおさら行こ。きっと楽しいよ」
律がいればどこでも楽しい。蒼乃は人生で数回しか訪れたことのないゲームセンターに来た。




