068 -Ritsu-
三連休が明け、約束のお弁当の日がやってきた。言われた通り、律は今日手ぶらで来ているし、なんなら間食も控えた。いつもは四時間目前には我慢できなくてお菓子を摘むが、我慢した。
蒼乃の頑張りは、たまにとても空回りをするので、もし重箱が出てきたとしても対応できるようにしていた。
しかし、蒼乃に渡されたお弁当箱はよくある二段タイプのものだった。
ついでに言うと、漫画とかでよくある、料理をしたら指を切って絆創膏だらけという展開もない。
「ありがとう、蒼ちゃん」
重みのあるお弁当箱。いつもの四人で机を囲み、緊張した手つきで律はナフキンを解いていく。
お弁当の上段はお米だった。さすがの蒼乃も『LOVE』とかは入れてきていない。ふりかけがかかっていて、種を抜いた小さな梅干しが乗っている。
「ハンバーグだ!」
下段には律の好物が詰まっていた。ハンバーグにポテト、唐揚げ、卵焼き、ミニトマト、少し狭そうにブロッコリーが入っていた。
彼女が初めて作ってくれたお弁当なので、普段料理の写真を撮らない律でも写真を収める。
「いただきます!」
ひとまずハンバーグからだ。冷凍のものとは比べようがないくらい美味しい。多分、牛肉と豚肉の合い挽き肉だ。
「蒼ちゃん、とっても美味しいよ」
「それならよかった。ゆっくり噛んで食べて」
朝早く起きて、律のために作ってくれたと思うと、それだけで嬉しい。蒼乃を抱き締めたい気持ちに駆られるが、せっかくのお弁当があるので食べてからとする。
律が箸を口に運ぶたびに「美味しい」と言い、そのたびに蒼乃が嬉しそうにする。遥と日向からしたら胸焼けものな光景だった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
「お弁当箱は洗って返すね」
「気にしなくていいのに」
「さすがに気にするよ」
律も蒼乃も食べ終わったので、律は椅子を蒼乃の横につけ、彼女を抱き締めた。遥が「うわぁ」と呆れた。
日向が二人の姿を写真に撮った。
「次の特集記事はこれですかね」
「なんのこと?」
律が話の流れを読めないでいると、蒼乃が校内新聞で律と蒼乃のことを書いているのが日向だと教えてもらった。律もプライバシーをばらまいていたのが身内だとは思わなかった。
「そんなわざわざ校内新聞で広めることないでしょうよ」
彼女から離れることもなく、律は校内新聞が取り扱う記事について憂いる。
「いいじゃない。私たちが仲良いことが広まれば、律に手を出そうとする輩が減るでしょ」
「私は新聞に載るのは恥ずかしいんだけどな……」
「じゃあ、りっちゃん、あれつけてもらえば。目のところに黒い線引くやつ」
「急に怪しいやつになるじゃん……」
いかがわしい感じになる。やめてほしい。
「内容が気になるようでしたら、今までの記事を全部送りましょうか」
「日向には悪いけどいらないよ……。ただの黒歴史だよ」
「なに、律。私との関係が黒歴史だって言うの?」
「いや、そうゆうことではなくて……」
蒼乃に髪をわしゃわしゃとされる。律が「やめてー」と言いつつもまんざらでなさそうにしていたので、今度はボサボサになった髪を撫で始めた。
「君たちは本当に仲良しだね」
「当たり前でしょう」
蒼乃の腕が律の頭を抱える。不可抗力で蒼乃の胸が顔に当たる。柔らかい。
一日一回くらいこの体勢、いいかもしれない。




