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イケメン推理小説家の今日の献立  作者: 東 万里央
第二話「小鮎の天ぷらと二種のかき揚げ」
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のどぐろ県兼六園市(2)

 美羅の挙式と披露宴は地元の観光地、兼六園近くのホテルで執り行われ、いずれも滞りなく進み、同時に大いに盛り上がった。


 今日の永夢は薄紅色の振り袖を身に纏っている。


 ドレスでは小柄な永夢はどうも着られた印象になってしまう。しかし、和服は女性の平均身長が一四三センチから一四六センチの江戸時代に発展しただけあり、永夢でもしっかり似合うどころか可愛い、可愛いと手放しで褒められる。この際、「馬子にも衣装」なる諺は忘れることにした。


 幼い頃仲の良かった美羅のためにと奮闘し、親族のみならず招待客にビールを注いで回る。


「さ、さ、おビールどうぞ!」


「ああ、あんた天野のところの永夢ちゃんか。大きくなったなあ。来年は高校卒業かい?」


「……」


 途中、肩を叩かれ振り返る。花嫁の美羅が笑顔でビール瓶を手に立っていた。先ほどの会話を立ち聞きしたのか、永夢を慰めようとしているらしい。


「永夢ちゃん、ありがとう。でも、自分もちょっとは飲まなくちゃ」


「……うん。自分が大人って証明するためにも一杯飲みたい気分」


 永夢は自分の席に腰を下ろした。美羅がグラスにビールを並々と注いでくれる。


 藤色のカラードレス姿の美羅は、花嫁に相応しく眩しいほど輝いていた。成熟した大人の女性の美しさもある。


 それに比べて自分はと溜め息を吐いた。


「胸はあるんだけどなあ。この際、ファッションを露出系に転向しようかな」


「えー、若く見られるんだからいいじゃない。羨ましいよ」


「よくないって。年相応が一番だよ。舐められるし、年配の先生にはこんな子どもみたいな女じゃ不安だって、編集長に訴えられて担当外されかけたこともあるし」


 ふと、東海林だけは自分を外見で判断しなかったと思い出す。女であっても、経験が浅くても、永夢を対等の立場にある者として扱ってくれた。もっとも、最近は欠食児童と見なされている気がするが。


「それに、考えてもみてよ。ずーっとこのままで行けるんだったらいいよ。でも、年を取らないなんて有り得ない。目尻にシワ、頬にほうれい線の浮かんだ老けたお菊人形みたいになったらホラーじゃない?」


「あはは、ちょっと受けたわ」


 美羅はビールを呷る永夢を見下ろした。


「で、永夢ちゃんの方はどう? 結婚を考えるような彼氏はできた? まだMUSASHIの空也追っかけてるの?」


 永夢はうっと口を噤んだ。さすがに数ヶ月前彼氏と別れましたとは言いにくい。


「まあ、ぼちぼちと……」


 空也、上杉空也とは高校時代から大学時代にかけて永夢が夢中になったアイドルグループの一人だ。悠人と同じく爽やかな王子様系のイケメンだったが、モデルとのスキャンダルが発覚したのち、芸能界から姿を消している。


 全身全霊で空也を追っ掛けていた永夢は、抜け殻状態から数ヶ月立ち直れなかった記憶があった。


 ちなみに、明日会う予定の小説家の卵、高岡万次郎の本名も岡田空也で上杉空也と名が同じだ。偶然だとは思うが少々珍しい名なのでなんとなく気になっていたのだが──

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