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「あ、瀬川君、おはよう。今日は遅かったんだね」

カウンターでファイル整理をしていた荒木さんはそう言って顔を上げた。僕は補習があって出勤が遅くなったのだと説明する。

「そっか。何の教科の補習だったの?」

「生物だよ」

「生物かぁ。私生物って苦手だったなぁ。科学の方がもっと苦手だったけど」

荒木さんはシャーペンのお尻を顎に当てて返した。僕は「荒木さんは文系なの?」と会話を続ける。すると彼女は一瞬だけ目を見開いた。

「うん、どっちかというと。まぁ勉強全般苦手なんだけどね」

荒木さんはそう言って眉を下げて笑った。どちらかというと勉強くらいしか取り柄のない僕は、自ずと言葉に詰まった。少しの間沈黙が流れる。

「そうだ、瀬川君は店長がどこ行ったか知ってる?今日は給料日だから帰って来てもらわないとね」

「店長なら今日はちゃんと仕事で出かけたはずだから、そうだね……あと一時間もすれば帰ってくると思うよ」

壁の時計を見上げた僕につられて、荒木さんも時刻を確認した。午後六時だった。

「そうなんだ。まぁ帰って来てくれるなら文句言わないけどさ」

荒木さんはわざとらしく唇を尖らせてみせると、目があった僕に微笑んだ。




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