95/101
95
「あ、起きた?」
その声に右を向くと、運転中の店長がちらりとこちらに視線を向けた。僕は返事の代わりに目をこする。
仕事を終えてその帰り道だった。業務が全て片付いたのが朝の四時半。今はもう五時になりかけている。どうやらうたた寝をしてしまったようだ。
「店長眠くないんですか」
「眠いよ」
「そうは見えないんですが」
普段通りの表情の店長を見て、その言葉がどこまで本当なのか考える。いや、店長も一応は人間なのだから、長時間睡眠をとらなければ眠くなったりもするだろう。
「明日何時に来る?」
「十二時には行きます」
「了解。ちゃんと寝なきゃダメだよ」
僕は「店長こそちゃんと寝てください」という言葉を、結局口から出さなかった。あまりに眠いので、今はただぼーっとしていたかった。
しばらく走ると見慣れた町並みを抜け、毎日見ているあの古ぼけた看板が見えてきた。店長が車を車庫に入れている間、隣で僕は大きなあくびを一つ溢した。




