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寒い。内心でそう呟いた。呟いたからってこの寒さがどうにかなるわけではないが、呟かずにはいられない。第一心の中で呟いたくらいで誰の迷惑にもならない。
すっかり暗くなった住宅街を自宅に向かって歩いていた。肩にかけたスクール鞄が重たい。無駄に多い宿題と、少しだけ残った今日の仕事の重さだ。僕は今家に向かっている。
急速に冷えてゆくのを感じた。身体がじゃない。数十分歩いて今ここにいるのだ、身体なんてとっくの昔に冷えている。
角を右に曲がる。もうあと三分も歩けば家につく。吐き出した息が白く曇って、夜の空気に溶けて消えた。
スクール鞄が重たい。無駄に多い宿題のせいだ。足も重い。一階から漏れるリビングの照明のせいだ。
玄関のドアを開けた。リビングからかすかなテレビの音が漏れ聞こえる。僕は一回り大きい革靴からなるべく離れた場所でローファーを脱ぐと、音を立てずに二階へ上がった。
冷たかった。ここには何もないのかと問うと、無性に悲しくなった。




