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「瀬川君も、よかったら」
そう言って古之河さんは小さな包みを差し出した。そのオレンジを基調としたラッピング袋の口は、紫のリボンで止めてある。今日は十月三十一日、ハロウィンだ。
「ありがとう」
おそらく中身はお菓子だろう。ならばと有り難く包みを受け取る。古之河さんは朝のホームルーム後から、こうしてクラスのほぼ全員にお菓子を配って回っているのだ。マメな人である。
「手作りだから味の保証はできないけど、不味くはないはずだから!」
古之河さんはそう言って照れたように笑った。すぐに別の人にお菓子を渡しに行くのかと思ったが、どうやら世間話を繰り広げる意志があるらしい。
「瀬川君、甘いもの大丈夫だった?」
「まぁ」
「そっか、よかった。苦手な人もいると思って割とビターめな味付けにしたんだけど」
と言われても何と返せばいいのだろう。結局僕が「そうなんだ」と言おうとしたその時、窓際の席にいた男子生徒二人が古之河さんを呼んだ。
「古之河~、俺達にもくれよー」
古之河さんが振り返ると、二人は手を振って彼女にアピールした。
「もう、黙ってても全員分あるよ」
古之河さんは「ふぅ」と息を吐くと、僕に「じゃあまた」と言って彼らの方へ向かった。
僕は手にしたままだった包みをそっとスクール鞄に入れた。




