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以前より冷たくなった風を頬に感じて、僕は少し嬉しく思った。秋がやって来たのだ。
僕は一年の中で秋が一番好きである。夏の暑さや冬の寒さについてはもはや言う事など無い。あんなものを好きな人の人体構造は、きっと普通の人より人生楽しめるようにできている。
秋というのは、過ごしやすく、それでいて春より落ち着いているのだ。素敵である。
「瀬川君、おはよう」
そんなことを考えながら店の引き戸を開けると、目の前のカウンターに座っている荒木さんが挨拶をした。僕はそれに返事をする。今日は学校の関係で、出勤時間が少し遅くなった。
僕が閉める引き戸の隙間から、秋の涼しい風が入り込んできた。荒木さんは風で乱れた前髪を片手でパッと払う。
「だいぶ涼しくなってきたよね」
荒木さんの言葉に僕は「そうだね」と答えた。引き戸がピシャリと閉まる。
「やっとあの暑さから開放されると思うとやる気出てくるよねぇ。そういえば、瀬川君はどの季節が一番好き?」
「僕は秋かな……。暑くもないし寒くもないから。荒木さんは?」
「私は春かなぁ。暑いのも寒いのも嫌だし、それに春って秋より幸せな気分にならない?」
荒木さんはそう言って微笑んだ。僕は心中で「なるほど」と呟いた。




