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「なー瀬川。お前イケメンに生まれたかったって思ったことある?」

休憩時間中スマートフォンのネット機能を駆使して懸命に情報収集をしていると、背後から肩を叩かれると共に呑気な声が聞こえた。後ろの席の冨永である。

僕は思い切り無視する。肩まで叩かれたのだから明らかに聞こえているが、それでも無視する。

「なー瀬川ってば、なー」

「ないよ。冨永はそんなこと考えてるの?」

「そりゃーイケメンに生まれた方が得に決まってんじゃねーか」

なーなーうるさいので仕方なく半身を向けて答える。なーなー気を引こうとする冨永とそれをスルーする僕のやり取りを見て、教室の角で雑談をしていた女子生徒のグループが暖かい眼差しを向けているのだ。

「顔なんて気にしなくていいよ。冨永はスポーツも得意なんだし」

「スポーツなんてスポーツしてるとこ見せなきゃ意味ねぇじゃねーか。イケメンは歩いてるだけでモテるんだぞ」

冨永のくせにもっともなことを言う。適当にあしらって作業に戻ろうと思ったのだが、なかなか難しくなってきた。次の授業まであと六分だ。

「大事なのは顔じゃなくて中身だよ」

「俺は顔もイケてたい」

「まさか中身は決まってると思ってるの?」

「瀬川お前だんだん俺に容赦なくなってきたよな」

「何のことを言っているのかまるでわからないよ」

そんなくだらないにも程がある会話をしているうちに、教室に教師が入って来た。と同時にチャイムが鳴る。

ガヤガヤと席に戻り出すクラスメイトと、それを急き立てる教師の声を聞きながら僕は反省した。自分は何をやっていたのだろうと。




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