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「ただいまー」
四十分ほど読書をしていると、目の前の引き戸が開いて店長が現れた。店長か荒木さんかどちらが早いかと考えていたが、どうやら前者だったようだ。
「リッ君おはよう。どれくらい待った?」
「一時間くらいですかね」
腹いせに気持ち多めに答える。すると店長はあっさりこう返した。
「四十分も店番させちゃったか。ごめんごめん」
まぁ、僕が普段出勤する時刻から逆算すれば簡単に見抜ける嘘だったのだが。
「お客さん来てないよね?」
「はい、相変わらず」
僕は本を閉じて立ち上がった。店長が店の裏に移動する間に来客用のソファーへ向かう。僕が再び開いた本を次のページに捲ったところで、コーヒーを持った店長が戻ってきた。
「そういえば今日村田さんに会ったんだけどさー。覚えてる?四月に依頼受けた村田さん」
「覚えてますよ。引きこもりの」
「そうそう。今日駅前でばったり会ったんだけど、何か人生エンジョイしてたよ」
「へー、よかったじゃないですか」
「うん。で、話し込んでたら四十分遅れた。ごめんね」
「怒ってませんよ」
僕が本から顔を上げると、店長はへらっと笑みを浮かべた。




