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「瀬川君っ」

背後から声をかけられて振り返る。視線の先には荒木さんが立っていた。

「買い物?」

「うん。この本を買おうと思って……」

僕は半身を捻ると、本屋の新刊コーナーの山から一冊の本を取り上げた。売り切れる前に買っておこうと放課後足を運んだのだ。

「荒木さんは早いね」

「うん。教授が腹痛だって。この教授、前も腹痛って言って授業無くなってるんだよね」

僕は「そうなんだ」と当たり障りのない返事をする。まだ高校生の僕には、大学という存在は極めてあやふやだ。まぁ大学に進学する予定もないが。

「瀬川君、買うものはそれだけ?なら一緒に店まで行こうよ」

荒木さんの左手を見ると、一階のスーパーで買い物をした証拠にレジ袋が提げられていた。その袋の膨らみ方を見ると、彼女がバイト前にコーヒーや紅茶を買い置きしたことが簡単に推測できる。おそらくその帰りに軽い気持ちで本屋に寄ったら僕を発見したのだろう。

僕は荒木さんの提案を受ける旨を簡潔に伝え、本を手にレジへ向かった。レジの店員が会計をしている間に彼女を探すと、彼女はファッション雑誌の前で足を止めて立ち読みをしていた。




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