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「おっ、陸が店番してる時に来れるなんてレアだな!」
勢いよく引き戸を開け放つなりそう言った寿等華さんに、僕は少々驚きつつ「この時間はいつもしてますよ」と返した。
「それより、店長ならいませんよ。今出かけました」
「マジかよ!ついてねー。やっぱ連絡入れてから来るべきだな」
と答えながら、寿等華さんはずかずかと店に上がり込み来客用のソファーに腰を下ろした。ソファーが一瞬だけ大きく沈む。
「どこ行くか聞いてるか?」
「いえ。相変わらず何も言わずに出て行きましたけど」
僕は文庫本から顔を上げずに答えた。顔を上げたところで、どうせカウンターからではソファーは見えない。荒木さんならここでお茶の一つでも淹れるのだろうが、寿等華さんに対してはそれも不要だろう。
「レンの奴どれくらいで帰ってくんのかなー」
「急ぎの用なんですか」
「いんや。暇だから来ただけだけど」
暇だからというだけでわざわざこんな所まで足を運ぶとは、彼女はよほど暇なようだ。僕だったらせっかくの暇をそんな無駄なことには使わず、家で本でも読んで過ごすのに。
店の中は寿等華さんがつけたテレビと僕がページをめくる音だけが積もっていった。




