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「ど━━して蓮太郎さんでなく貴方なんですの!」

花音さんはコーヒーカップを半ば叩き付けるようにテーブルに置いた。

「君のそれ、もう何回聞いたかわからないよ」

「何回でも言ってやりますわ。私、せっかく今日学校が休みですのに、どうして蓮太郎さんでなく貴方なんですの!」

「なら僕も何回だって言うけど、文句なら店長本人に言ってよ」

花音さんは演技がかったため息をつき、手持ち無沙汰にお盆の底をパンと叩いた。ちょうどその時、会議室のドアが開いてこの店の店長である陸男さんが入って来た。

「悪い、待たせたか……おう、どうした花音」

陸男さんはドア付近の花音さんの顔を見て眉を寄せた。

「どうしたもこうしたもありませんわ。お兄様なら蓮太郎さんに来ていただけるよう言えたでしょうに」

「何だ、瀬川君じゃ不満か?」

陸男さんは「またいつものか……」という煩わしさを声色に滲ませながら、僕の目の前の席に座った。花音さんはお盆と手の平をテーブルに叩き付けながら陸男さんに詰め寄る。

「不満どころではありませんわ!超!不満です!大ブーイングですわ!」

「そうかそれは残念だったな。次は蓮太郎が来るように言ってみるさ」

「次は次はって、お兄様はいつも……」

陸男さんが呆れたような顔を上げた時、部屋のドアがノックされた。花音さんは渋々部屋を出てゆく。どうやら別の仕事で呼ばれたようだ。

「悪い、待たせたみたいだな」

ようやく本題に入れることになった。僕は資料を広げながら「いつものことですから」と返した。




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