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「あっ瀬川君、ちょうどよかった。もしかして二〇〇五年の四月のファイル持ってない?」

店の本棚に資料を取りに来た僕に、荒木さんはそう言った。彼女の腕には二冊のファイルが抱えられており、カウンターには開きっぱなしのファイルが佇んでいる。どうやら二〇〇五年の四月のファイルを探している最中だったらしい。

「僕は持ってないよ。部屋にあったファイルも昨日全部返したし……」

「そっかぁ……。どこ行ったんだろ」

荒木さんはそう返して首を伸ばす。僕も視線を上げ、彼女の背では届かない所を探した。

「まぁ無くても出来ないことはないんだけど……」

荒木さんは「ちょっとしたところの確認だから」と付け足した。彼女がそう言った直後、僕は最上段に並ぶファイルの上の僅かなスペースに、一冊のファイルが横にして押し込められているのを見つけた。手を伸ばしてそれを掴む。

「あ、これみたいだよ」

軽く埃を払いつつ、背表紙の日付を確認する。荒木さんは幾分か表情を明るくした。

「よかった~あって。でもこんなところに突っ込んだの誰だろ?店長かな」

荒木さんのその言葉に、僕は何も答えられなかった。数カ月前、日付順に片付けるのが面倒でこのファイルをあそこに放り込んだ記憶が鮮明に蘇ってきたからだ。

荒木さんは礼を言ってカウンターに戻って行った。僕は自分の目当てのファイルを手に取ると、そそくさと自室へ向かった。




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