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「痛っ」
小さく上がった悲鳴に顔を向ける。静かな教室でその声は目立っていた。
「どうした、大名」
チョークを動かす手を止め、教師も振り返る。二つ後ろの席の大名さんは、注目を浴びることを少し恥ずかしそうにしながら答えた。
「すみません、指を切ってしまって……」
彼女の左手にはこの授業の開始と共に配られたプリントがあった。
「そうか。誰か絆創膏持ってるやつはいないか?」
教師が教室を見回すと、大人しそうな女子生徒が控えめに手を上げた。その女子生徒の手から、数人の手を渡って大名さんへ絆創膏が届いた。彼女はか細い声で礼を言った。
教室が気を取り直して授業を再開させた。黒板に次々と白い文字が刻まれてゆく。大名さんが発端の先程の出来事は、もう忘れ去られていた。




