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店へ入ろうと引き戸に手を延ばした時、その戸がひとりでに開いた。つい動きを止めてしまうと、同い年くらいの女性が出て来て僕と同じように顔を強張らせた。制服を着ているので、どうやら学校帰りのようだ。
「あっ、い、いらっしゃいませ。あの、今お店の人いないみたいなんですけど、私でよければお話お聞きします」
彼女はそう言うと、僕が入れるように道を譲った。どうやら僕をお客さんだと勘違いしたらしい。可哀相なので訂正してあげることにする。
「僕この店のバイトだから」
「えっ!?あっ!?」
彼女はしばらくうろたえていたが、何か閃くものがあったようだ。彼女はその瞳をいっそう大きく開けると、僕に人差し指を指して言った。
「もしかして瀬川さんですか!?あたし、玄武店の田村椏月です」
僕はその名前を何処で見かけたのか考え、無事に思い出せて一安心した。
「ああ、この前はありがとう」
「いえいえ、怪我はもう大丈夫なんですか?」
「まぁ、日常生活は問題ないくらいには」
田村さんは鞄を持ち直すと、一歩踏み出して外へ出た。
「実は荒木先輩に会いに来たんですけど、さすがにこの時間じゃ来てないみたいですね」
「荒木さんは大学生だから五時過ぎなきゃ来ないよ」
田村さんは「そうですか」と相槌を打ち、簡単な別れの言葉を告げて駅の方へ歩いて行った。僕はその後ろ姿を見てぼんやりと思う。荒木さんにも知り合いが増えたものである。




