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「その本面白い?」
荒木さんは唐突に手を止めると、ソファーにいる僕に声をかけた。彼女の右手には、埃を取るためのはたきがぶらんと引っ掛かっている。
「まあまあかな……」
僕は「響く警鐘」というタイトルの本から顔を上げ答えた。
「そっか。私その人の本一回読んだことあるよ」
「何てタイトル?」
「幽体離脱の向こう側」
残念ながらその作品は僕がまだ読んでいないものだった。正直にそれを伝えると、彼女は「友達に勧められて読んだだけだから」と笑った。
再び掃除に戻った荒木さんの背中を見て、僕は何故「幽体離脱の向こう側」を先に読んでおかなかったんだと自分を責めた。棚の上を滑る荒木さんのはたきが、右に左に揺れていた。




