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「おっ、陸!久しぶりだな!」
僕はその声に振り返り、右を見て、左を見て、また前を向いた。あの声は確かに闇烏さんのものだったと思うが、彼女の姿はどこにもない。
「こっちだこっち、上、上!」
その言葉に顔を上げると、すぐ脇の家の屋根に闇烏さんが立っていた。彼女はパッと飛び降り、その家の塀に着地する。
「今帰りか?」
「はあ……。寿等華さんは仕事ですか」
「まぁな。たぶん陸の家の近くだと思うぜ」
今日は仕事を終えるのが少し遅くなって、現在は日付が変わる一時間ほど前だ。彼女が仕事をするにはまだ早い時間だと思うが。
「こんなところにあなた達の仕事の対象になる人がいるんですね」
「ま、偉いやつばっかり狙ってるわけじゃねーからな。標的はクライアントによりけりだ」
「そうですね……」
かくいう自分の店も、仕事内容は依頼人によりけりなのだから、彼女の今日の標的をおかしいと思うことはおかしい。
「じゃ、アタシそろそろ行くな。一応雀と作戦会議しなくちゃなんねーし」
闇烏さんはそう言うと、大袈裟に手を振って屋根の上を駆けて行ってしまった。彼女の白く大きな羽織りが、あっという間に視界の外に消える。
僕は自転車のペダルに乗せた足に力を込め家路についた。




