神々との契約
ここら編から分からん言葉増えるかもしれませんなぁ
用語集は用意してたら載せますわ
目が覚めると、そこはいつかに見た真っ白い場所だった。そして、なぜか椅子に拘束されていた。
「さて、ここ数日とぉってもお楽しみでしたね! レイ」
後ろから聞き覚えのある声がした。でも、その声は記憶にある妖艶な感じではなく、ただ幼い少女の駄々のような声だった。そして並々ならない圧を感じる。
「お、お久しぶりですレイラ様」
「私というものがありながら、他の女と同衾とはいいご身分ですね、レイ」
コツコツとゆっくりとわかりやすく足音を立てながら近づいてくる。そして、とうとう僕の肩に手をかけ正面に回り込んできた。そして僕のひざに座る。
「ヒィィィ!」
鬼! それ以外にふさわしい言葉が見当たらなかった。
「ねぇ、レイ」
笑っている、笑っているけど笑ってない! 口角が上がっていても目元は笑っていない!
「私はあなたの主神、そしてあなたは私の眷属、間違いないわね」
僕はそれに思いっきりそして何度も頭を縦に振る。
「それなら、あなたは私の伴侶ということよね?」
「え?」
「はぁ?」
何を言ってるのか分からなかったからそれ相応の反応をしたのに、レイラ様の顔から笑顔さえも消えてしまった。
「えっと、その、伴侶ってのはどういう」
僕が勇気を出して聞き返すと、レイラ様は僕の頭を抱きしめて自分の豊満な胸に押し込んできた。
「こういう事だけど? 伴侶は伴侶、夫婦以外にないでしょ?」
ますます訳が分からない。
「でも、僕は人間でレイラ様は神様じゃないですか! それが夫婦だなんて。それに、僕結婚なんてした覚えありません!」
「神様かどうかなんて今は関係ないのよ! 私があなたを愛していること以外に理由なんてあるわけないでしょぉ! いい! あなたは前前前前前前前ぜぇーーん世から私の眷属なの! そしてはじめのあなたは私の夫だったの! だからあなたは私の夫! 旦那様! マイダーリン!」
「はぁー!?」
「だから、浮気ダメー!」
レイラ様はより一層腕の力を強めて僕の頭を胸に、特に谷間にねじ込んでいく。
「いや! でも、僕そんな事知りませんでしたし!」
僕がそう言うと彼女は動きを止め僕から離れて立ち上がった。
「そもそも、ちゃんと僕に事情を教えてくれなかったのが悪いんじゃないんですか! レイラ様ったら十五年前にいきなり抱きついてきたりして、神様ってそんな感じなのかなぁってついつい思ってたじゃないですか!」
「あ、あなた以外にあんな事するわけ無いでしょ! それに、あのときはいつもよりも転生に時間がかかって久々に会えたから、あのままだとあなたを襲っちゃいそうだったから……」
もじもじしながら小さい声だったけど確かに聞こえた。聞こえてしまった。
「え?」
「今もちょっとヤバいかも」
「は?」
僕には分かる、今のレイラ様の目がまさに熱っぽい視線とか、そういう目ってやつだと。そこで、僕は素晴らしいことを思いついた。
「レイラ様」
「何かしら?」
未だ熱っぽい視線を浴びながら僕は思いついたことを口にする。
「清廉潔白で聡明で凛々しい女性って素敵だと思いませんか?」
「…………」
「…………」
互いの間に無言が生まれた。僕はその間もニッコリと笑ってその顔を維持する。レイラ様は一度僕に背を向けて、何度か深呼吸をしている。時折こちらをチラチラと見てくるので笑顔は崩さない。
「そ、そう」
レイラ様が前髪をかきあげながらこちらに振り向く。目元もこころなしかさっきよりもキリッとしてるし、姿勢だって背筋を伸ばしている。レイラ様の考えつく清廉潔白で聡明で凛々しい女性を頑張って演じているのがよく分かる。だからこそ、レイラ様がたぶん今一番欲しがっている言葉を伝えなくては。
「素敵ですよ! レイラ様!」
「はぅぅ」
レイラ様は両手を頬に添えて体をくねくねくねくね。
「それで、ずっと疑問だったのですけどなぜ僕はここに?」
「はっ! 本題を忘れるところでした」
「てか、あったんですね……本題」
今までの会話のなかでどのようにしたら別に本題があったと思えるだろうか。レイラ様は一度咳払いをして指を鳴らす。そうすると僕の拘束具が光の粒になって消えていった。
「さて、本題ですが伝えなくてはならないことと授けなくてはならないものがそれぞれあります。どちらから聞きたいですか?」
「じゃあ、伝えられる方で」
僕がそう言うと、レイラ様はまた僕の膝のうえに乗ってきた。
「あの、なんで座って……」
「浮気者への罰です」
レイラ様は僕のほうに、まるで背もたれの様に体重を預けてきた。
「伝えなくてはならないことの一つがあなたを正式な眷属にすることを忘れていたことです。本来、眷属は主神から何かしらの恩恵を受けることをもって眷属になります。あなたの場合は《産声》の支配権。でも、私が詠唱文を伝え忘れていたので正式に眷属ではなかったということですね。そのせいで今回は危険な目に合わせてしまいごめんなさい」
「いえ! あれは魔人のせいですよ! レイラ様は悪くありません!」
「それでもです、あれは主神として助けれたはずのことでした」
確かに事の発端はアイラの提案で、それは僕が眷属じゃないからという所に起因する。そこに責任を感じているんだろう。
「次に二つ目です。来年には王都の学院、リーヤシュヴァレン学院に入学することになると思います。そこで、私の名前は出さないほうがよいということ。理由は私が無名の神様であなたが差別やいじめに遭うかもしれないこと、そして万が一にでも私のことを知っているものがいれば、あなたの前世や前前世に至るまでバレてしまうからです。それはあなたの魂の起源、つまりあなたの魔子のルーツと同義です。知られてしまっては悪用されかねません。代わりにとある神に話をつけておきました。どの神かは当日までのお楽しみということで秘密ですけど」
そしてレイラ様は一度立ち上がりながら、「そして最後に」とつぶやいて、対面で僕の膝に座り直す。そして僕の手をそっと取り、自分の腰に添わせる。そして僕の耳元で囁いた。
「私の貞操を差し上げます」
「はぁ!?」
「私は処女神ですから本当に初めてですよ」
「え!」
あまりの衝撃の言葉に思考がまわらなくなる。なんて言葉を返せばいいのかも分からないままアワアワとしているとレイラ様が、急に笑い出した。
「フフフ、冗談ですよ。少し鹹かっただけです」
「あは、あはは……流石にですよね」
「でも、この身体はあなたのものですから好きにしていいですよ」
そう言ってレイラ様は目一杯抱きついてきた。その豊満な胸がムニュミニュと形を変え、その圧倒的な存在感を主張してきた。
「まぁ、冗談さておき」
そう言ってレイラ様はついに膝から降りてくれた。
「かつて、人間と神々とのあいだで契約がありました。それは反逆者の討伐に協力するかわりに褒美が欲しいというもの。つまるところ、武功を上げたらさらなる力を寄越せという傲慢な人間からの欲求です。それを、神々は了承しました。それは今でも有効、それ故に私はあなたに魔人討伐の褒美として魔術を一つ授けねばなりません。さしあたり、どの系統がいいですか?」
その話は知っている。お伽噺でもよくある話だし、生まれた時にもらった知識にもそのことは入っていた。
「どの系統って言われても……」
「火、水、風、土の四大元素や愛、毒、呪い、結界、神性なんかの特攻系統何でも構いませんよ」
しばらく悩んだがどうもしっくりこない。
「相変わらずあなたは無欲なのですね」
「すみません」
「いえ、懐かしく思えるので不快ではありませんよ」
そう言って微笑んではくれているが僕は内心焦っていた。
「どうしても決められないなら深層心理を反映しましょうか」
「え?」
「言葉通りですよ。あなたの深層心理を反映した魔術、それにしてはどうかしら?」
レイラ様は加えて「魔術は因果改変へのつよい欲求にその効果は左右されるから深層心理の反映は効果の向上にもつながるわ」と教えてくれた。
「では、お願いします」
このまま悩み続けても埒が明かないと思い、レイラ様の提案を受け入れた。レイラ様は軽く頷くとどこからともなく杖を取り出した。
「始めるわね」
そしてレイラ様は言葉を紡ぐ。
『魂の門よ、呼び声に応えよ
その形を読み取り、祝福をもたらそう
神託は今、ここに
《魔の産出》』
次の瞬間、ものすごい眠気に襲われた。ふらふらと倒れそうになるとレイラ様が支えてくださった。
「おやすみなさい。次に目が覚めたときには終わってます」
そこで僕は意識を手放した。
水の中でぷかぷか浮かんでいる感覚。夢か現実かよく分からない感覚。そんな感覚を味わったことはあるだろうか? 今、まさにその感覚を味わっている。
『さぁ、始めようか』
自分と全く同じ声が聞こえてきた。そしてこう問いかけてきた。
『貴様は何者だ?』
僕は答える。
「僕はレイ」
『ではレイ、貴様に問おう。貴様の目の前には本がある。どんな内容だ?』
少し悩んで僕は答えを口にする。
「巨悪に立ち向かう、英雄たちの物語」
『では、その本には一ページだけ色のついているページがある。物語のどのあたりだ?』
「終盤」
『何色だ?』
「赤」
『何故だ?』
「巨悪に対して人間はきっと無力だから……きっと、血を流さない戦いはないから」
『その物語の結末は?』
「主人公は巨悪に敗れる。でも、次代がその想いを受け継ぐ」
『ほぉ、意外だな。最後に問う、貴様の欲望は何だ。何を欲し、何を求め、何をその手に渇望する』
僕は改めて考えてみる。生まれてから不自由は特に感じたこともなかった。親の顔は分からないけど、多分同じくらい大切にしてくれる人たちに囲まれてるし、何より友人にも恵まれた。危なっかしい友人だけどやっぱり面白い。不満はない。
(そんな僕が望むもの)
僕は今の自分に満足している。それなら、答えは一つだった。
「僕の欲望は『無欲』」
『ハッ! 無欲が欲だと? 何故だ、小僧!』
「無欲とは充実だと思う。満ちた人生には欲望はない。今の僕に欲しいものは特にない。友人に恵まれ、人に恵まれ、確かに村の暮らしは不便だけど、全然不自由じゃないし、不幸でもない。僕は、自分が満足できる人間でありたい」
『それが貴様の欲望か』
「起きましたか」
「……レイラ様」
「えぇ、あなたのレイラです」
目が覚めると僕はレイラ様に膝枕されていた。
「では、早速ですけど発現した魔術を確認しましょう。レイ、一度起きてくれませんか」
僕が言われた通り立ち上がるとレイラ様も立ち上がり、僕の額に口づけをする。その時魔術の知識が頭のなかに流れ込んできた。
「はい、終わりです」
次の瞬間、急に視界が歪み始めた。
「意識が身体に引っ張られ出しましたね。そろそろ目覚めの時間です」
その言葉を聞いたのが最後だった。
《魔の産出》
魔術区分:精神魔術
詠唱文
『魂の門よ、呼び声に応えよ
その形を読み取り、祝福をもたらそう
神託は今、ここに
《魔の産出》』
深層心理を読み取り、最適な魔術を一つ発現させる。神々にのみ扱える魔術。人間からしたら魔法になる。積極的に魔法陣による再現が研究されているが、進捗はほぼない




