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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
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魔術大会本戦 11

 レナ・アレストライの所有するディゴスシリーズ、それは第二番《黒波》である。神匠ヴァディゴスが嫁であるダイアナの助言のもと作り出した界力発生装置の試作機。刃を格納可能で格納した場合、レインロッドから着想を得た『銃』へと形を変える。

「《第八形・色即是空》」

 その銃身から放たれた弾丸は星一つない夜空と同じ色だった。弾丸は正確に核心部を捉え、空間を歪めるほどの超速で後方に漆黒の残像を残しながら、周囲の物体を粉砕し、標的を射抜こうとする。ほんの半秒もない、瞬きですら追いつけないほどの一瞬の後、空中要塞全体を巻き込む大爆発が起こる……はずだった。

 レナ自身もそれを予想していた。

『《第八形・天地開闢》』

 レナの放った弾丸が空中要塞の工業全体を支える核心部を正確に射抜いた直後、そこから起こるはずだった爆発、そのエネルギーごと、いいや、その『空間ごと』切り裂かれた。

 レナは目を細め、微かに唇を噛む。肩が次第に震え、顎が自分の意志とは無関係にカチカチと音を立てる。目の前では確かに核心部が破壊されガラガラと音を立てて中央塔が瓦解しているのが見える。

 しかし、それが自分自身が意図して起こった結果だとはレナは思っていなかった。

(あぁもう、私がトラウマを植え付けられただなんてね)

 レナは思いっきり犬歯で唇を噛む。血の味が口のなかに広がるのと同時に頭の中から恐怖心が消えていく。恐怖心が支配していた脳の思考領域が痛みで上書きされていく。

「あれが化け物……か」

「ね、ねぇ、頭領……あれって僕らの手に負える存在なの……?」

 ダンテとミラがそれぞれ冷や汗を流しながら呟く。彼らにとって力の象徴とも言えるレナの一撃をなんの損傷もなく受け止めきったというその事実に二人は戦慄した。

 レナたち三人の目線の先には核心部が崩れ、山となって積み上がっている瓦礫の上に槍を構え悠々と立つレイの姿があった。

「見つけた」

 レナは小さく呟きミラとダンテに指示を出す。

「化け物は私が相手をする。ミラとダンテは後の二人をやれ……加勢はいらない、確実に仕留めろ」

 レナは銃弾をレイに向かって放ちながら走り始めた。

「頭領、一人称が……」

「ダンテ、俺らは俺らの仕事をしよう」

 ダンテの心配するような声を励ます、というよりも意識を逸らさせるようにミラは話しかける。

「……そうだね」

「俺がエイリスをやる」

「じゃあ僕がレイシナムだね」

「健闘を祈る」

「そっちも」

 二人もレナの後をついていくように核心部、要塞の中心に向かって走り始めた。

────

───

──

─

「じゃあレイ君、手はず通りに」

「わ、わかりました」

 レイは一度大きく深呼吸をする。その手には転移以前にすでに天界から召喚された《産声》が握られている。しばらく緊張を打ち消すように深呼吸をしているうちにその時はやってきた。

『それでは試合開始です!』

 レイはそのアナウンスと同時に駆け出した。核心部に向かって目の前にある工業パイプはすべて斬り伏せながら突き進む。

『前方、高エネルギー反応を二つ確認』

 うち一つは核心部のエネルギー反応、もう一つは……

「急ぐよ!」

 レイは一層加速する。しかし《産声》からの返答は冷酷だ。

『高エネルギー反応の移動を確認』

 次の瞬きのあと前方に拳大の、しかし、十分に威力があるとはっきりとわかる漆黒の弾丸が迫っていた。

「《産声!》」

 レイは大振りに構える。

『《第八形・天地開闢》』

 界力による加速を受けた槍先は亜光速に達する。核心部を構成する巨大な塔の根元をごっそりと削るように槍先に向かって吸い込まれ、その姿を消す。根元が消えた塔はガラガラと音を立てながら瓦解する。上から落ちてくる瓦礫を《産声》が自動的に切り刻む。

「はぁ……はぁ……」

 レイは核心部の瓦礫の上で乱れた呼吸を何とかして鎮めようとしていた。

(……間一髪!)

 レイシナム先輩の作戦はレイの負担を一切考えないものだった。

『レイ君にはね、レナ先輩の一撃を受け止めてもらうわ!』

 レイシナムの作戦の第一段階がそれだった。

「はぁ……《冷却》」

 やっと呼吸が落ち着いたのかレイはじっと発火点を見つめる。そこには銃身をこちらに向けて構えたレナが立っていた。

 恐怖心から身体が震える。手も足も出なかった圧倒的上位の存在を目の当たりにして顎がカチカチと音を立てる。レイは思いっきり歯で唇を噛む。ふぅ、と呼吸を整えるたび思考がはっきりとしていく。

「よし、始めよう」

 どちらからというのはない、レイとレナは互いに引かれ合うようにお互いに向けて駆け出した。

 レナは鍛え抜かれたその豪脚をもって、レイは《産声》からの支援で超速へ至る。互いに接触するまで残り二秒といったところ……

「通常魔弾装填、発砲」

 レナが銃弾を放つ。

 一発、二発、三発。

 しかし、それらはすべて弾かれる。

『脅威自動排除』

 《産声》の淡々とした声がレナの耳にまで聞こえた。

(遠距離は対策済みか……それなら)

 レナが《黒波》を大振りに振ると格納された刃がその姿を現した。

 またたく間に二人の距離は縮まる。

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