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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
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魔術大会本戦 ⑥

《二週間前》

「今日はあなたに攻撃魔術を一つ覚えてもらうわ♡」

「一つでいいんですか?」

「逆に使いこなせるの♡?」

「じ、自信ありません」

 僕はレティシア先生から攻撃魔術を教わっていた。

「もちろん体系化魔術から覚える事になるけど、最終目標はコード使用かスペルキーを習得することよ♡」

「あの、スペルキーってなんなんですか?」

 先生の説明のなかで度々出てくる単語だけど僕はその言葉をまだ習っていない。なんとなーく予想はつくけども……

「あらあら♡ まだ習ってないのね♡ スペルキーっていうのはコード使用の一種よコード使用が指先や足の動きで魔術を発動させるのならスペルキーは特定の言葉を詠唱して魔術を発動させるの♡ 例えばこんな感じね♡ 《火球♡》」

 先生が魔法名を唱えただけで手のひらには小さな火の玉が出来上がっていた。

「凄い!」

「ふふっ、ありがとう♡ それじゃあ、練習始めるわよ♡」

「はい!」

 そのかっこよさから意気揚々と返事をしてしまったが僕はそれを後悔することになる……


《観客席》

 時は戻って観客席にて一人の女が霧の窓に映る試合の中継を眺めていた。

「お隣いいですか?」

「あらあら♡ お久しぶりですね♡ ヒルベルト先生♡」

 レティシアは「どうぞどうぞ♡」と言って隣の席においていた荷物をどかす。

「珍しいですね♡ こういう行事には一切顔を出さないから興味がないのかと思ってました♡」

 レティシアのその言葉に、ヒルベルトの眉間にしわが寄る。

「俺だってできれば研究室にこもって研究に没頭したい。でも今回はそう行かない事情があるんだ」

「あぁ、そういうことですね♡」

 レティシアには心当たりがあった。ヒルベルトの研究テーマ、それは「アルカナの再現」である。つまり七百年前の神匠の領域に足を踏み入れようとする途方もない研究である。

 七百年前の「黎明期」──。

 現代の魔工製品の基礎や疑似魔法陣を構築した「神匠ウルスラ」。魔力発生装置アルカナと実銃を発明した「神匠レインロッド」。そして、ディゴスシリーズの製作と建築学の開祖である「神匠ヴァディゴス」。

 彼らがほぼ同時期に現れ、世界に与えた影響は計り知れない。それ以降、彼らと肩を並べる存在はこの七百年間、誰一人として現れなかった。

 そして今、その三人に最も近いとされる天才研究者が、目の前にいるヒルベルトなのである。

「研究テーマ的にヴァディゴスの武器は見たいのですか♡?」

 レティシアのひと言にヒルベルトは頷く。そして口を開く。

「魔力とは魔子の流れだ。しかし霊力をうまく使うことができれば魔力を増幅させることは知っているだろ」

「もちろんよ♡ 伊達に教師してないわよ♡」

「文献によるとレイが持つ第三番《産声》は霊力発生装置だ。これまでの歴史のなかで霊力を発生させるには魔力を使う以外には霊鉱石を使う以外になかった」

「だから霊力単体を発生させられる《産声》は異常♡ そう言いたいのよね♡」

 レティシアはヒルベルトの意を汲み取る。それに対してヒルベルトも頷く。

「だから何としても見ておきたい。神匠の遺物だ。何か手がかりがあっても不思議ではないからな。それにあれはもっとも私の研究テーマに近い」

 レティシアが霧の窓に目をやるとそこには肩を弾丸に貫かれ傷ついたレイが立っていた。辺りには立体魔法陣が広範囲に展開されている。

「あれほどの霊力操作を一年がやってのけるとは……さすが神匠の遺物、どこまでいっても規格外だな」

 ヒルベルトは小さく感嘆を漏らすが、レティシアの表情は険しかった。

(よりにもよって三人がかりなんて♡ アガリスも中々に容赦がないわね♡)

 自分の教え子が痛めつけられている状況というのはなかなかに不快らしく次第に眉間にしわが寄る。しかし、それは相手に対しての怒りというよりもあれほどの手ほどきを自分にさせておきながらここまでやられているというレイの不甲斐なさに対してだった。

 しかし、次の瞬間霧の窓に映った光景にレティシアの頬は緩む。

『ここに来たれ! 《白夜の天涙!》』 

 レティシアは「やっと♡」といった表情を浮かべた。

 《白夜の天涙》。それは広範囲殲滅魔術。区分としては上級魔術に分類され、習得難易度は「易」でコード使用、スペルキー習得難易度は「難」とされている。実際に発動させようと思ったら詠唱が長く歌い切るよりも先に戦いが終わるほどであるからコード使用、スペルキー習得が大前提。しかしその難易度は全魔術のなかでも指折り。

(ふふっ♡ やっぱりあなたはすごいわぁ♡ さすがヴァディゴスの生まれ変わりね♡)

 そんな魔術のスペルキーを苦戦しつつも習得したのだからレイの異質さが垣間見えた。ヒルベルトも目を丸くして口を開けている。しかしレティシアはその状況を一人の観客として楽しんでいた。

ちなみに受験期にここまで書いてました

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