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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
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魔術大会本戦 ⑤

《旧霊鉱石採掘場跡》

 旧霊鉱石採掘場跡。そこはかつて霊鉱石の採掘を行っていた場所で王都の外にある。ここは毎年試合会場として選ばれるわけではないがそこそこの頻度で選ばれる。その理由は『採掘が面倒だから』である。採掘自体は大昔に止められているが実際のところ鉱脈自体は枯れていないという調査結果が出ているが、諸事情が合わさり採掘再開の目処は立っていない。しかし、ここで採れる霊鉱石は世界的に見ても純度が高く、もし採掘できる状況が整えばすぐにでも採掘が始まるであろう。そしてその状況を生み出す一環として王国は学院にここでの試合を提案してきている。ここで大規模な戦闘が起こり地面がえぐれ鉱脈が露出するのを期待してのことだとされている。

 だからこそここでの試合は白熱しやすい。どんな大規模で高火力で広範囲で高威力だとしてもそのすべてが許容されるからだ。

『東から現れたのは嫉妬の派閥! 予選では愛の派閥に敗れてしまいましたが総合的に安定した勝ち星を挙げ本選準決勝まで勝ち上がってきました! 対して西から現れるのは愛の派閥! 予選では終焉の派閥にのみ敗れましたがそれ以外では全勝、それも人数不利があっての勝利なわけですからこれには期待が集まります!』

 特殊な魔工製品によって会場全体にアナウンスが響き渡る。

「緊張しないでくださいな」

 エイリス先輩が僕の背中をポンと叩いてくれた。さすがに一回戦の時よりかは緊張はしてないけどそれでもやっぱりドキドキはする。

「頑張ります」

『それでは両者宣誓をお願いします』

「私たち愛の派閥は全身全霊を持って戦うことを誓います」

 ここから相手は視認できないと。いうより、割と背の高い岩が僕たちの目の前にあるから僕たちからは何も見えないし相手も多分僕たちを見ることはできないだろう。

『それでは試合開始です!』

 相手の宣誓は聞こえなかったけど、どうやら言い終えたみたいで試合が始まった。

「レイ、手はず通り」

「はい!」

 僕は岩陰から飛び出して外縁を走る。

『《目覚めよ!》』

 僕は開始位置から十分に離れたのを確認して産声を呼び出す。詠唱と同時に天空から雲を突き破って閃光をまといながら《産声》が地面に突き刺さる。僕はすぐ《産声》に手をかけ地面から引き抜く。そして目一杯の魔力を流し込む。

『霊力発生率四十五パーセント。立体魔法陣発動のための最低基準を満たしました。半径の指定をしてください』

 《産声》の言葉に従って僕は「半径五十メル」と指定する。

『承りました。半径五十メルの立体魔法陣を展開します。詠唱をお願いします』

「ありがとう」

 僕は一度あたりを見渡す。いかにもな大技を使いそうな僕は格好の的だと思うんだが……。僕が詠唱をするために口を開いた瞬間。

「今だ! 一斉砲撃!」

 嫉妬の派閥の三人が僕を囲むようにして飛び出してきた。アガリス先輩を筆頭に、三方向から容赦のない魔術が同時に放たれる。

「逃がさんぞ! 《泥濘の縛鎖》!」

 アガリス先輩が僕の足元を狙って、地面から泥と化した土の鎖を這わせてきた。僕をその場に拘束するつもりのようだ。

「吹き飛べ! 《繝ャ繝シ繝エ繧。繝?う繝ウ》!」

「切り裂け! 《風刃》!」

 さらに残り二人は、僕の退路を完全に塞ぐように業火の矢と真空の刃を放ってきた。回避不可能な完璧な奇襲。本来なら為す術もなくやられていたかもしれない。

(僕が攻撃魔術を行うために魔力回路を切り替えたタイミングでの一斉砲撃! それに加えて《産声》で両手が塞がっている時に、狙ってきたか!)

 僕は迫り来る三つの魔術を見据え、仕方がないと割り切り強引に魔力回路を繋ぎ直す。

「《不動心》!」

 僕が口で唱えたその瞬間、僕の足元に絡みつこうとしていた土塊の鎖はボロボロと崩れ落ち、迫り来ていた火球と風刃は、まるで最初からそこになかったかのように霧散した。

「間近で見ると気色の悪いものだな! 頭領の《宵闇》と似た効果か!」

 嫉妬の派閥の生徒たちはここまでは予想通りといった雰囲気でその場にたたずんでいる。

(相手はアガリス先輩とあと誰だっけアンノウンって人だったっけ? 読み方忘れたな……それとあと一人)

 選手変更権を使ったのか知らない女の人が一人いる。

「チッ、事前の情報通り、あの小賢しい無効化魔術か! ならば物理で叩き斬るまでだ!」

 アガリス先輩が叫ぶと同時に、彼女の手に握られていた杖が変形し、禍々しい黒光りをする両刃の剣へと姿を変えた。

「合わせろ!」

 号令に呼応するように、他の二人も自身の杖を魔術で組み替える。現れたのは、魔力を弾丸として物理的に撃ち出す二丁の長銃だった。

(銃! ちょっ、それは聞いてないって!)

 刹那、二つの銃から弾丸が放たれる。

「クッソ!」

 目に見えているわけではない。ほとんど勘だ。でも《産声》の補助もあって思考速度は跳ね上がっている。しかし、かといって体を素早く動かせるのかといったらそれはまた別の話だ。

「グァ! ってぇな!」

 一つは運よく避けられたがもう一つが左肩を直撃する。赤い血がどくどくと流れ出てくる。予め先輩から渡されていたスクロールを素早く取り出して傷口に当てるが、アガリス先輩が回路に魔力を流すことを許さない。

 純粋な因果改変現象そのものを消されるなら、魔術で生成した武器による物理的、連続的な飽和攻撃で仕留める。それが彼女たちの僕用の戦術らしい。

「撃て!」

 銃口から連続して放たれる魔力の弾丸。岩を容易く砕く威力のそれが、雨霰と僕に降り注ぐ。

「くっ……!」

 僕は治療を中断し、《産声》を両手で構え直した。身体強化の魔力を巡らせ、弾丸の軌道を見極める。

 キンッ! カンッ!

 槍の石突と刃を巧みに回転させ、迫る銃弾を次々と弾き落としていく。肩がぐじゅと音を立て激痛が走るがそんな事気に留めてられない。

「よそ見をしている暇があるのか!」

 弾幕の死角から、アガリス先輩が鋭い踏み込みで肉薄してきた。上段から振り下ろされる重い黒き大剣。

 僕は《産声》の柄を斜めに構え、その凶刃を受け流す。

 ギガガガッ! と金属同士が軋むような激しい音が鳴り、目の前で火花が散った。

「くそっ、一年生の分際で、その槍捌き……!」

 忌々しそうに顔を歪めるアガリス先輩。二人の銃撃と猛攻。三対一の圧倒的不利な状況だ。もちろんケガも負って焦りもあるし、痛みもある。苦しいけど……

(レティシア先生のあの地獄の槍術特訓に比べたら……これくらい!)

 僕はアガリス先輩の剣を弾き返し、素早く後ろへ跳躍して距離を取る。

 まだだ……まだ《産声》の立体魔法陣は崩れていない。ここで決めてみせる!


『ここに来たれ! 《白夜の天涙!》』

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