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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
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魔術大会本戦 ②

 試合が始まった瞬間相手は三人とも僕たちの方に向けて走ってきた

「罠を張るわ! レイは相手の魔術を一人でいい、打ち消しなさい!」

「了解!」

 僕は言われるがまま手を叩き、一人を目掛けて《不動心》を発動させる。

「なっ!」

 相手は動揺してか動きが止まった。自分の継続回復の魔術が効果を失ったことに驚いているようだ。

「よくやりましたわ。おかげでレイシナムが三つ罠をはれました」

「今の一瞬で三つもですか!?」

 レイシナム先輩のほうをちらりと向くと、ニッコリと笑う先輩の姿。

(つくづく規格外だなぁこの学院の女性たちって)

「これがあなたの戦術ですか……レイシナムさん」

 相手の一人がレイシナム先輩に向かって話しかけてきた。

「私こういうの好きなのよね」

「答えになってませんよ」

「あら? 分からなかった?」

 腹の探り合いのような会話は一瞬で済んだ。もう一度継続回復の魔術をかけたのか三人で突っ込んできた。

「来ますわよ!」

「詠唱します!」

 僕はもう一度《不動心》を発動したのち《産声》呼び出す。

『《目覚めよ!》』

 僕が唱えた瞬間、天空から一筋の光が降りてきた。その光に目をやられたか事前に伝えていたエイリス先輩とレイシナム先輩を除き動きが止まった。

「よくやりましたわ!」

 エイリス先輩はそれを逃すまいと相手に急接近し一人を穿つ。

『《擬・天撃!》』

 ピンポイントで僕が不動心で継続回復を打ち消した人の鳩尾に向けて放った先輩の一撃はものすごく、相手を十メルほど後方へ吹き飛ばした。

「クソッ! 《氷柱!》」

 相手がエイリスに向けて魔術を放ったが軽々と避けて僕の方まで戻ってきた。

「追撃はしないんですか?」

「あなたが武器を使い始めてからって予定でしたわ。それにレイシナムの罠と組み合わせたほうが効果的です」

 なるほどと思い、僕は《産声》を握った。

『お久しぶりです。レイ様』

「久しぶり、特訓の時以来だね」



《二週間前》

「ひとまず《不動心》のコード使用達成おめでとう♡」

「あ、ありがとう……ございます」

 僕は愛の派閥棟の地下訓練室でレティシア先生から指導を受けていた。なかなかにハードな特訓でまず攻撃魔術の習得から始まり《不動心》のコード使用を習得させられた。新しい魔術の習得そのものは苦じゃなかった。体系化魔術のおおよそはどのように意識したら魔術が発動するのかが明確になってて非常にわかりやすい。詠唱するだけでできるっていうのも慣れてしまえばなんてことない。

 でもコード使用はそうはいかない。コード使用は身体にある魔子を知覚するところから始まった。無限に魔術を使い魔力回路を発熱させ体の何処の部位に魔力が流れてどの魔力回路が発熱しているのかを感じ取りそれを「自力で」再現する。自力で、という部分がなかなかにできない。魔力回路は無駄に発熱するし、体力は持たないし、体術訓練だってあったし、レティシア先生が《産声》をもっと上手く使えるようにって言って槍術まで叩き込まれるしで僕は疲労困憊だった。

「これでレムちゃんから頼まれてたのは終わりね♡」

「あ、ありがとうござい……」

「何言ってるのよ♡ まだ槍術が残ってるでしょ♡」

「あっ、あっ、あぁ」

「次は《産声》の召喚スペルキーの習得よ♡」

「あっ、あっ、あっ、あぁぁ」

────

───

──

 今思えば懐かしく思えてくる。

「来るよ!」

 レイシナム先輩の声で一気に現実に戻された。相手は一度治療し、もう一度継続回復の魔術を使ったのかまた突っ込んでくる。

「レイシナムの罠は半径五十メルの円周上に張られてますわそこまで攻撃は厳禁ですよ」

「わかりました!」

 僕は《産声》を構えてひたすら待つ。

 そしてレイシナム先輩の罠の上に敵が足を踏み入れた瞬間爆音と共に地面が炸裂した。

「地面に《火球》を仕込みましたね! レイシナムさん!」

 相手三人は何とか爆風に耐えている。そのせいで足が動いてなく腕も砂埃から目を守るのに使っている!

「今ですわ!」

 その声を合図に僕は三回、パンパンパンと手を叩き相手三人の継続回復を無効化する。僕とエイリス先輩、そしてそれに続くようにしてレイシナム先輩も全速力で敵の位置へ走り始める。

「一人一殺です!」

「はい!」

 砂埃の中に突っ込み敵の目の前まで迫る。相手はどうしてここにお前がいるのか、と言いたげな顔をしていた。

「《産声》行くよ!」

『かしこまりました。レイ様』

 《産声》の槍先が白く光る。またあの感覚だ。世界が引き伸ばされて自分だけが取り残されている感覚。すべてを置いていきすべてを抜いていく全能感と万能感が僕をつつみ込んだ。

『《第三形・空斬》』

 僕は刃を裏返して峰で相手の腹を薙いだ。

『《擬・天撃!》』

 それと同時にエイリス先輩も一人に当たったようで、僕たちの攻撃を受けた二人は闘技場の壁まで吹き飛ばされた。

「頭領!」

 エイリス先輩が合図すると同時に砂ぼこりが晴れ、レイシナム先輩が最後の一人の目の前まで来て美しく魔術を紡いだ。

『《恋人の鎖》』

 レイシナム先輩の魔術が最後の一人を鎖で拘束すると同時に一枚の紙、おそらく魔法陣がひらひらと相手の胸元から落ちてきた。レイシナム先輩はそれを拾いビリッと破ると……

『試合終了! 勝者、愛の派閥!』

 僕の初披露は意外と上手くいったんじゃないか?



《観客席にて》

 アガリスとレナが会話していた。

「まさか雌豚どもの三人目が一年生とはな。それに魔術を打ち消す魔術だと……はぁ、今夜は忙しくなるな」

「わたしは大方予想ついてたからあんまり作戦変えることはないわ」

「はっ、流石学院二位の実力者だな」

「あなただって学院一の魔術使いでしょ」

「……アヤツがいなければな」

 二人はそれぞれ愛の派閥と命の派閥の試合を見届けていた。

「それにしても勝ち上がってきたせいで私たちと雌豚が準決勝で当たることになるとはな……リベンジマッチだ」

「立体魔法陣はなかなかに驚いたよ」

 レナが世辞を送るがそれを鼻で笑い飛ばす。

「ハッ、あんただって使えるでしょうが先輩」

「運がいいだけよ」

「どうだか」

「それよりもあの一年生の魔術どう思う」

 その問いにアガリスは顎に手を添え考える。

「見る限りだと手を叩き無効化しているからそれがコード使用だと思う。となれば手のひらを叩けない状況に持っていけば問題ない……はず」

「歯切れが悪いわね」

「コード使用の条件をわざわざ自分から言う馬鹿はいない。私だって先輩だってそうだろ」

 そう言ってアガリスは席を立つ。

「何処か行くの?」

「あの雌豚どもをぶちのめす策を考えるんだ。先輩も試合頑張れよ」

 手のひらをひらひら、くるくると回しながらアガリスは去っていった。

「化け物め」

 残された女は闘技場を眺めていた。

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