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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
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魔術大会本戦 ③

 楽園での決闘、第三試合、終焉の派閥対狩の派閥の結果は終焉の派閥の勝利。第四試合、烈日の派閥と雪の派閥では烈日の派閥の勝利。かくして魔術大会三日目の楽園での決闘の試合が終わった。明日、つまり四日目の最終日には楽園での決闘の準決勝、決勝、三位決定戦で合計四試合が予定されている。

 そんな明日に備えて早めにご飯を食べて早めに寝ようと思っていたのだけど……

「レイ! なんで楽園での決闘に出てるのよ! 私知らないわよ!」

「そうだそうだー! 私だって聞いてないー!」

「俺も聞いてねぇぞ!」

 アイラ、リファー、バルの三人に詰められていた。

「ちょっと、落ち着いてよ!」

 僕はカクカクシカジカと事情を説明する羽目になった。もうここまでくれば隠す必要なんてないだろう。

「なるほどねぇ、レイシナム先輩から口止めされてたんだぁ」

「それならまあ納得」

 三人とも納得してくれたようで良かったけど、それはそれ、これはこれといった感じでありとあらゆる事を根掘り葉掘りと質問攻めされた。最低限の秘密だけ守って全て話す羽目になってしまった。そのせいで時間を食われて結局早めに寝るなんてことは叶わなかった。

 僕はバル、リファーと大浴場でお風呂を済ませ、バルはこれから派閥で会議があるということだったから別れてリファーと二人で部屋まで戻っていた。

「にしてもレイが会場に上がってたときはびっくりしたよー」

「あはは、ごめんね。口止めされてたから」

 辺りはすっかり暗くなっていた。学院の中で所々に街灯があって真っ暗ではないとはいえそれでも暗くて見えない場所はできるというもの。リファーは怖がりらしく、暗くなってからだと一人で帰ることが出来ないらしい。それが本当か嘘かは知らないけれど僕の腕に抱きつくのだけはやっぱり控えてほしい。あと、大浴場で思ったけどなんで女性モノの下着を着ているんだ? 僕の頭にはリファーのかすかな胸の膨らみとそれを覆うブラ、そして女性モノのショーツを着たリファーがくるくると頭の後ろの方に居残っていた。

「やっぱりレイはすごいなぁ」

「リファーだって……」

 僕の言葉を遮るようにリファーは首を横に振った。

「ううん、私は全然だよ」

 リファーの腕を抱く力が少しだけ強まった。

「だって私予選敗退だし、それに特別なことなんて何もできないし」

 リファーは近くのベンチを指さして「少し付き合ってよ」と誘ってきた。と言うよりも僕は強引に腕を引っ張られた。

 二人並んで座ったあとしばらくしてリファーが話し始めた。

「私ね、故郷だとずっと一人ぼっちだったんだ。ほら、私こんなだからさ、女の子の友達も男の子の友達も出来なかった。みんな私を気持ち悪がってね、好きなことが自由に出来ない人生って意味あるのかななんて思ったこともあったんだ」

 リファーはうつむいたままでもしっかりと僕の手は握ったままゆっくりと口を動かしている。

「愛の神様を呪ったこともあったよ。なんで私に愛の神様としての恩恵を与えながら私を一人ぼっちのままにしてるんだってね。わがままかもしれないけど本気で苦しかったんだ。だからここに来てレイやアイラちゃんやバル君みたいに私のことをただの友達として接してくれることが嬉しかったんだ。

 ……そして今はもうそれだけじゃないよ」

 リファーは僕の膝のうえに乗ってきて急に抱きしめてきた。

「ど、どうしたの? リファー」

 驚いてるけど割と冷静に対処できる辺り僕もリファーの扱いに慣れてきた気がする。

「レイ、あなたが好き。どうしようもないくらいあなたが好き」

 リファーはより一層強く抱きついてきた。

「私を受け入れて……」

 僕はリファーを……



 突き飛ばした。



「キャ!」

 リファーは可愛らしい声を上げた。まったくもって女の子そのもの。いや、女そのもの。

「……お前誰だ」

「な、なんのこと?」

 リファー、いや誰かわからないからただの「女」と呼んでおこう。

「リファーは確かに女の子だ。どこを切り取ってみても女の子そのものだ。でもな、「女」じゃないんだよ。リファーは「男」だ。リファーは言ったよ『無い性器を生やすことはどんな魔術でもできない』って」

 僕がそこまで言うと女は急に表情を変えた。

「アハハ! 女の子の股の感触で判断したってわけ? サイテー! 結構再現にこだわったんだけどなぁ」

「誰だ……答えろ」

「あ? 答えろって言われて答えるバカがどこにいんだよ」

 リファーの声とは思えないほど低い声。

(リファーの体を操っているって感じじゃないな)

「今日は君の様子をすこーし見に来ただけだし御暇するよー」

 女はそう言うと地面を軽やかに蹴り学舎の屋根まで飛んでいった。

「あっ、そうそう」

 女は屋根の上から見下すような、馬鹿にするような笑みを浮かべてこう言った。

「私からちょっとした忠告だよー。死なないようにねー、『レイ・アレストライ』君」

 突風が吹き僕がまばたきをすると次の瞬間にはもうすでに女の姿はなかった。

「なんだったんだよ……あいつ」

 僕の本名を知っている人間がレナ先輩の他にもいる。つまりそいつは僕の過去に関係のある人物、または……

「レナ先輩の協力者」

 僕がレナ先輩を救おうと(まぁ、まだ何もできていないけど)しているのと同じようにレナ先輩も僕に対して何かしようとしているのだろうか……

「死なないようにね……か」

 やっぱり一度レナ先輩と話さないといけないかもしれない。そんな事を思ったが……

「リファー!」

 それよりもリファーの安否のほうが気になり、急いで寮まで戻ってリファーの部屋を叩いたらちょうどアルス君が出てきた。

「どうかしまし……」

「リファー!」

「ちょっと!」

 僕は開きかけの扉を無理やりこじ開けた。そこにはちょうどなぜか下着姿のリファーがいた。とりあえず僕は安堵して部屋に戻った。

 リファーから「えっ、えっ、どったの?」と言われて一目見て帰ったから「えっ、えっ、私の下着見ただけ!?」と後ろから叫ばれたが正直どうだっていいわ。

 ……とにかく、今日はもう寝たい。

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