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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
30/49

進展……開幕

 夢の月、第二週月曜日。その日、町中は異様な盛り上がりを見せていた。

『さぁさぁ皆さん! とうとうやって参りましたこの日が! そう! 王都六大行事の一つ、リーヤシュヴァレン魔術学院の魔術大会です! 今日から連続四日間、魔術学院生、魔術大学校生が各々の研鑽の成果を、実力を、努力を、この場で見せてくれることでしょう!』

 リーヤシュヴァレン魔術学院二大行事の一つ『魔術大会』が今日、始まろうとしていた。



《二週間前・愛の派閥棟・第一会議室》

「皆さん、集まってくれてありがとうございます」

 レイシナム先輩の言葉が部屋に美しく響く。その場には愛の派閥の生徒全員が集まっていた。大学院生を中心に同心円状に円卓を囲んでいる。

「では始めましょうか、派閥会議を。今日の議題は二週間後に迫った魔術大会についてよ、総長」

「はいはい」

 エイリス先輩が立ち上がるとみんなの視線が一斉にそちらに向く。

「魔術大会、この学院の二大行事のうちの一つです。種目数は合計で二十、四日にわたって開催されます。一日目、二日目が予選。三日目と四日目が本選です。この行事は一般公開され、王都中の人が見に来る行事です、ここで大きな活躍をした人が企業団に引き抜かれたっていう話もありますので気張ってまいりましょう。今日決めるのは、誰がどの種目に出るかです。では各種目の説明に移ります」

 魔術大会、それはエイリス先輩が言った通りこの学院で体育祭と肩を並べる二大行事のうちの一つだ。エイリス先輩は次々と種目の説明をし各々自分と照らし合わせている。先ほどまで「学校行事だるわぁ逆張り界隈」を気取ってた素行の悪そうな女子たちも企業団の引き抜きの件を聞いたあとは真剣に話を聞いている。

「以上で種目についての説明は終わりです。頭領」

 そこでバトンはレイシナム先輩の手に渡る。

「総長、ありがとう。では今日はどの種目に出たいのかその希望を取ります。今から一時間ほど決める時間をあげます。その間に友人と話し合っても構いません、どれに出場したいのかを決めてください。ただし、『楽園での決闘』に関してはもうすでにメンバーは決定してるので除外します。定員よりも出場希望人数が多い場合は選抜試験を行います。ではこれより一時間自由に話し合ってください」

 もうすでに決めてあったのか、上級生の何人かは既に希望用紙をナリス先輩とニリス先輩からもらい、提出している。

「ねぇ、レイは決めた?」

「まぁね、リファーはどうなの?」

 左隣りに座ってたリファーはまだ悩んでいるようで「うーん」と唸っている。

「ちなみにレイは何にしたのよ」

 次は右隣に座っていたアイラに尋ねられたが、ちょうどレイシナム先輩から「レイ君」と呼ばれたのでその場を離れ、レイシナム先輩の下へ向かった。アイラの不服そうな顔が見えたからあとから怒られるかもしれない……

「なんでしょうか?」

 レイシナム先輩は「荷物運びを手伝ってくれませんか」と言い、加えて「女の私だとどうしても重くて」と、僕はなるほどと思い後をついて行く。エイリス先輩も「重いものなら私は得意ですわよ」と言い一緒についてくる。会議室を出てあとをついていくとまた別の部屋に連れて行かれた。部屋には『第三会議室』と表札がかけられていた。三人でなかにいるとレイシナム先輩が指を鳴らす。パチンという軽いけど優雅な音を境に完全に無音の空間ができた。

「では、私たちの会議をしましょう」

「座りなさいな」

 レイシナム先輩とエイリス先輩に促されるままに僕も円卓の席に加わる。僕が席に着くとレイシナム先輩が話し始める。

「まず、あなたをここに連れ出したのは前にも言った通りあなたを試合当日まで、まぁ隠せて予選までですけど、秘密にするためです。魔術を無効化する魔術というのはどの派閥に対しても強力なカウンターになります。自分の重要性を理解しておいてください」

「はい!」

「では、今まで人目につかないように私たちと訓練してきたわけですが、ここからはより一層本格的に行います。今までは週二回でしたが、これからは毎日です。毎日私たちとの連携、そして対魔術師、対戦士を想定した実戦訓練を行います。場所はここの地下、何年も前の先輩が残した地下訓練場です」

 先日から先輩たちとの「楽園での決闘」に向けた特訓が始まっていた。週に二回、先輩たちと夜中に特訓する。はじめは体力づくり、途中からきり替わって個人での実戦想定と少し連携の訓練。そこそこ強くなってきた感触を感じてきた矢先にレナ先輩から襲われたわけだが。あの一件について、何故か外傷はなかった。あの一件は僕のなかでもスッキリしていない。何があったのか、何もなかったのか、現実なのかよく分かっていない。確かに会ったことなんだろうけどパッとしない。まるで種明かしをしない奇術師のような、記憶ははっきりしてるのに感触が伴わない。

「取り敢えず、明日から始めます。最初の二日は選抜の方の審査員として私とエイリスは参加できません。でも安心してください、強力な助っ人を用意していますので」

 レイシナム先輩は「くれぐれも参加することは誰にも伝えてはいけませんよ」と強く念を押して来て部屋に戻るように言った。とりあえず箱を渡された。

「レーイ!」

 部屋に戻るとすぐさまリファーに捕まった。

「なにに呼ばれてたのー?」

 僕が箱を床に置くとすぐさま腕にしがみつき距離を詰めてくる。

「えぇっと、まぁ秘密?」

「なんで疑問形なのかわかんないけど……」

「秘密なのは秘密! てか、離れろ!」

「いやぁん♡ ドコ触ってるの♡」

「もうー!」

 アイラ、その目をやめてくれ。違うんだ、リファーが勝手にやってるだけなんだ! 断じてこれっぽっちもそういう気はない! だってこいつ男だぜ! アイラさん、なんで無言でこっちに近づいてくるんですか? いや! あの、ちょっと!

 その瞬間、僕の絶叫が会議室に響いた。



《終焉の派閥・派閥棟》

 終焉の派閥、それは実に謎に包まれた派閥である。目立った功績を挙げているわけでも、表立って活動しているわけでもなく、他派閥から見ればただあるだけ。普段から活動している様子もなく、はたから見れば何をしているのか、誰が所属しているのか、派閥棟を使っているのかさえわからない。そんな謎の派閥も魔術大会となれば表立って動くというもの。

「さて、どうして僕たちを呼んだんだい?」

「そうだ。いくら幹部とは言えいつもならお前の独断で動いていたはずだ」

「どうせ魔術大会でしょー」

 そんな終焉の派閥の幹部三名が会議室に集められていた。

「まずは集まってくれてありがとう」

 派閥の頭領であるレナは腰を折って礼をする。

「総長として、呼びかけられれば駆けつけるさ」

「然り」

「そだよー」

「ミラ、ジェニー、ダンテ……ありがとう」

 レナは早速本題を話し始める。

「今日集まってもらったのはほかでもない、魔術大会について特に最も得点率の高い『楽園での決闘』に出場するメンバーを決めること」

 それを聞いて三人とも顔を見合わせる。

「それこそお前の独断独行でいいはずだ、なぜ俺らを頼る?」

 坊主頭で側面に入れ墨を入れた男、ジェニーが質問をする。それに追従するように他二人も頷く。

「理由は……まぁ、あなたたちにならいいかしら」

 レナはそう言うと無詠唱で防音結界を張る。

「ここからは内緒話。私は先日とある生徒にやられたわ」

 それを聞いて三人のうち二人が思わず立ち上がり、一人はボケーと机に突っ伏している。

「レナが!」

「誰だよそいつ!」

「そんな化け物いたのー?」

 大声を上げた二人を制止するようにレナは唇に人差し指を立てる。

「まず、とある情報通と言っても三人とも知ってると思うけど、かの……いや、彼から私を倒した生徒が『楽園での決闘』に出場する事が決まったとの知らせが入ったわ。私の目的はそいつを殺すこと」

 レナが殺気を放つと同時に三人とも息を呑む。覚悟は伝わった。しかし、理由を知りたいそんな表情を浮かべる。

「理由は『私の弟』と『破滅の狂人』が絡んでることだけで察してちょうだい」

 それを聞いて三人とも頷く。三人ともレナの事情は知ってるし理解している。

「わかったよ」

「理解」

「オッケー」

 三者三様の返事。

「それじゃあ、会議を始めましょう」

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