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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第一章「カリフィス編」
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遭遇 前編

改行だるいので次回は改行しません

 時々、不思議に思うことがある。僕はこの世界についての知識をある程度持った状態で生まれてきた。それはつまり、レイラ様との会話は実際にあったということの証拠だ。そして、レイラ様は僕のことを眷属だと言っていた。でも、眷属の判定をする教会では僕は眷属ではなかった。


「あ、バル! こっちこっち!」


 東の魔女の森の入り口にぼくたちは集まっていた。


「よっ、持ってきたよ武器」


 バルの腰には二振りの剣が携えられていた。


「今日は二本とも持ってきたのね」


「おう! 風の眷属としてみっともない戦いは嫌だからな」


 バルは風の眷属。眷属ごとに特性がある。例えば雪の眷属は大抵寒さにつよく暑さに弱い。同じように、風の眷属は足が速くなったり、風の魔術を発現させやすい。


「それじゃあ、行こっか!」


 アイラが早々と森の中へ走っていった。


「おい! ちょっと待てって!」


 僕とバルも置いていかれないように森の中へ足を伸ばした。


 森に足を踏み入れた瞬間、バルと数歩前を行くアイラの動きが止まった。さっきまで聞こえてきた風で木の葉の擦れる音も耳元で風が過ぎ去る音も何もかもが止まった。まるで時間が止まったように……。


「何だ、これ」


「世界の断片ですわ……小僧」


 わけも分からず混乱していると後ろから女性の声が聞こえた。


「誰!」


 振り向くが、そこには誰もいない。


「わるおすけど、あんたにはまだうちの姿を見られるわけには行かへんさかいなぁ」


 また後ろから声が聞こえた。僕は深呼吸をして自分を落ち着かせる。


「とにかく、あなたは誰」


「……ふーん、中々に高圧的な。まぁ、ええやろう、うちの名前は吹雪と申します。あんたに接触したのはこれから起こることについての忠告と、循環の……言うてもわからしまへんか、レイラからの伝言を届けに来ましたわ」


「レイラ様の?」


 この世界に生まれて、レイラ様の名前を聞いたのは初めてだった。


「あなたは一体……」


「うちのことについてはどうでもええんどす。それで、伝言と忠告、聞くんどすか? 聞かへんのどすか?」


「……聞きます」


 少し疑いながらも、彼女の提案に乗っかると「素直でよろし。ほな、そのまま動かへんで聞いたらええのにな」と言って話し始めた。


「まず、忠告から。この先であんたは危機に遭遇する。その時にあんたの取る行動で未来は変わる。具体的に話すことはできまへんが、大切なものを守りたい思うたら自然といい方向へ向かうやん。次に伝言」


 一旦、深呼吸をしたのが聞こえてきた。


「ごっめぇーん! わたしぃ、《産声》の召喚文、教え損ねちゃったから、教えるねぇ! だそうです」


「……は?」


 急に声質が変わって口調も変わった。思わず、結構ガチトーンで聞き返してしまった。


「それ、本当にレイラ様が言ってたんですか?」


「はい、言葉は違うたどすけど、どうせ奴のこっとすさかい心のなかではこないな感じに思うとったんやろう思いもって再現したったんどす」


 絶句、それ以外にその場には何もなかった。でも、一つの疑問が解消された。


「僕が十五年間《産声》を一度も使うことができなかったのってもしかして……」


「神造武器は通常は天界にあるんやさかい、下界に降ろすためには召喚するしかあらへん。ほんでレイラはその呪文をあんたに教え忘れた。そんなんどすわな」


「なるほど、スッキリしました」


 今までの疑問が解けるのと同時にまた新たな疑問が生まれた。


「なんで十五年も経ってから伝えに来たんですか?」


 伝え忘れて誰かに伝言を頼むにしてももう少し早くは来れないものなのだろうか?


「簡単に言うたら天界と下界では流れる時間がちゃうさかいっちゅうのんが大きいやろうなぁ」


「流れる時間の違い」


 それなら納得もいく。レイラ様がなるべく早く動かれても、下界に届くまでに十五年程かかるという時間の流れの差があるということだろうか。


「そやけど、今回はそれに加えてうちがじゃまくさがってしばらく来へんかったのもあるかもしれしまへんなぁ」


「オイ」


 思わずツッコミを入れてしまった。


「まぁ、いいですわ。取り敢えず召喚文のメモを渡しますから、後ろに向かって手を伸ばしなさいな」


 そう言われて、僕は前を向いたまま後ろに腕を伸ばすとサラサラしたものが手に触れからそれを掴んだ。


「では、確かに」


 そう聞こえた瞬間、世界に音が戻った。


「戻ってきた?」


 手のひらを見ると確かに紙がある。中身を見ようと広げたとき「レイ! 早くー!」とアイラに呼ばれとっさにそれをポケットにしまった。


「今行く!」




《アイラ視点》

 私には嫌いな男の子がいた。


 その子とは孤児院で知り合って、一緒に育った。でも、私はその子が嫌いだった。だって、話しかけても素っ気ない返事しか返ってこない、せっかくお友達になろうって話しかけてるのにそんな反応されたら私だってがっかりする。私には素っ気ないのに、同じ年の男の子とはよく話してるのをよく見ていた。だから、私はその子が嫌いだった。


 ある日、私はものすごい重い病気にかかってしまった。高位の魔術でないと解毒できない病気。正直、ここで死ぬんだって思った。でも、死ななかった。大人の人たちに話を聞くとその子が薬草を摘んできて、薬を作ってくれたそうだ。おとなたちも知らないような薬草を森から採ってきて自分で調合したんだって聞いた。その後、ちゃんとお礼しなきゃと思ってその子のところへ行って「ありがとう、助かったわ」と言うと、その子は微笑んで「家族だもん、当然だよ」と言った。彼の目を見ていると心臓の音が大きくなるのを感じた。


 その日から、その子に対する見方が変わった。根気強く話しかけに行くと、次第にその子の方からも話しかけてくるようになった。そして、そこで初めてその子の名前がレイだって知った。話しているうちに段々と仲良くなっていった。彼を通してもう一人男の子とも友達になった。そして、気がつくとレイを目で追っていて少しぼんやりすると「いま、何してるのかな」とレイのことばかり考えるようになってしまった。その気持ちと状況が恋と気づくまでに時間はかからなかった。


 そして今朝、私は眷属になった。眷属はどの神様の眷属かに関わらず、王都の学院に入ることが義務になっている。だから、私はレイと離れ離れ。それは絶対に嫌だった。


 そこでひらめいた。眷属の私が、レイを連れて魔獣を倒せば一般枠で彼を学院に入学させられるんじゃないかって。


 はじめはうまくいっていた。三人で森に入って、一匹目の魔獣を見つけたから魔法を使って操って他のと戦わせた。このまま行けば! そう思っていた。なのに、どうしてこうなったんだろう。知らなかった、魔獣のなかに魔人が紛れ込んでいたなんて……。


 私は病室の花に水をやりながら酷く後悔していた。

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