目覚め
改行はあったほうが読みやすいんでしょうか?
愛の月の二週目の土曜日、目が覚めた。窓から温かな光が入ってくる。こんな日は二度寝するに限る。僕はまた布団を羽織った、でも、それはすぐに終わりを迎える。
「レーイ! 遊びましょー!」
そんな声に眠りを邪魔される。でも、悪い気はしない。
「あーい」
僕は弱々しく返事をしたが、どうやら聞こえてないらしく「ねー! レーイ! 遊びましょー!」と元気な声がまた聞こえてきた。流石に起きるかと思い、布団から這い出て窓から顔をのぞかせる。案の定そこには見知った女の子と男の子がいた。
「あ、レイ! あそぼー!」
「待っててー!」
元気な子達だなぁと思いながら僕も着替えて軽く朝食をとって二人のもとに向かう。
「あ、遅いよー。砂のお城出来上がったじゃん」
「毎度言うけど、勝手に人ん所に入らないでよ」
「だって、道で待ってるわけにもいかないでしょ?」
庭に出てみると二人ともいた。
「それでアイラ、バル何して遊ぶ?」
「俺はアイラに誘われただけだからアイラが決めてよ」
二人のうちの男の子、バルがそういった。どうやら彼もアイラの被害者らしい。
「フフフ、今日はね怪獣退治に行くわよ!」
アイラは胸を張ってそう言った。
この世界に生を授かって十五年が経った。僕はこの村、カリフィスの孤児として過ごしている。そこで知り合ったのがアイラとバル。物心ついたときから一つ屋根の下で過ごして今も孤児院の中でよく遊ぶ、たまに外にも出る。バルは孤児ではないけど、仲がよくて、よく孤児院に遊びに来る。
「はぁ、怪獣退治ぃ?」
「そう! この前、先生から聞いたの! 近くの森に魔獣が出たって! だから私たちで倒しに行くのよ!」
「なるほど、ってならないよ」
僕がそう言うと「えー」とアイラは頬を膨らませた。レイラ様から授かった知識には魔獣についての物もあった。
魔獣、それはかつて戦乱をもって世界に暗黒をもたらした者達の創作物、そしてその者達そのもの。生命の創造という神々にのみ許された禁忌の領域に足を踏み込んだ者たちの成れの果て。一般的には大の大人が徒党を組んでやっと一体討伐できるような存在なのだが。
「平気よ! なんてったってお告げがあったのよ!」
「えっ! それ本当か?」
バルが驚いて聞き返す。
「もちろんよ! これでバルに続いて私も神様の眷属なんだから! 今日の朝、神殿で見てもらったもの!」
「ちなみにどの神様の眷属なの?」
「当ててみなさい!」
僕の問いに彼女はさらなる問いを返してきた。
「ハイッ!」
元気よく手を挙げたのはバル。
「ハイ、バル君」
「夢の神様ですか!」
「ぶぶぅー」
「なら、月の神様ですか!」
「ぶぶぅー」
「なら……」
「ぶぶぅー」
「オイッ! まだ何も言ってねぇぞ!」
テンポの良いコントを見せてもらった。その後もバルの予想はことごとく外れて、結局消去法的に僕が「愛の神様?」って言うと「せいかーい!」と満面の笑みが返ってきた。
「でもさぁ、眷属になっても魔獣を倒せるわけではないでしょ?」
僕はそう尋ねる。眷属と言っても加護があって少し頑丈なだけで所詮ただの人間だ、というのが知識の内容。正直、女の子の彼女と先に眷属に昇華したバルがいるとはいえ、無茶には変わりない。
「大丈夫! 私、魔術も使えるようになっちゃったの! 見てて」
そう言うと彼女は辺りを見渡して少し悩んだあと俺を指差した。
「と、とりあえず、レイに魔術を使うから!」
なんかいつもよりぎこちない、緊張してるのだろうか。
「ちょっと待って! それ攻撃魔術じゃないよ ね?」
バルが僕とアイラの間に割って入って来た。
「大丈夫よ! た、たぶん? さっきそこの野良猫に使ってみたけど大丈夫だったし」
「ならいいか」
それを聞いて安心したのか、バルはまた離れていく。
「じゃ、詠唱するよー」
そう言うと彼女は僕に手のひらを向けて言葉を紡ぐ。
『我は愛の化身なり
今、そなたの身に我が名を刻む
《愛の隷属》』
その瞬間、辺りはピンク色の光で照らされた。しばらくするとその光は収まり、僕の胸のあたりに集まって入っていった。
「え? なんか入ってったんだけど」
僕が困惑してると彼女は口を開いた。
『こっちへいらっしゃい』
気がつくと僕はアイラの目の前にいた。一瞬のうちに移動したようなそんな感覚がした。
「え? 今何が起こったの?」
まだ頭の中はぐちゃぐちゃで何が起こったのかよくわからない。
『抱きしめなさい』
また、気がつくと次はアイラを抱きしめていた。
「えっ、あっ! ごめん、すぐにどく!」
そう言って離れようとしたが、体が言うことを聞かない。
「えっ、は? ちょっ、体動かないんだけど!」
僕が焦っていると彼女が「フフフ」と不敵な笑みを浮かべた。
「これが私の魔術『愛の隷属』よ!」
「いや、早く魔術解いてよー!」
「なるほど、アイラの魔術は簡単に言えば相手をちゅきちゅきだーいちゅき! ってさせて、言うこと聞かせる魔術ってことね。いやらしぃわぁ」
バルがとってもわかりやすく解説してくれた。
「なるほど、そういう理屈か」
「んなわけないでしょ! ねぇ、バル。本気でそう思ってるなら私の鉄拳が降りるわよ!」
「大変申し訳ありませんでした」
バルは深々と頭を下げ謝るがアイラは「フンッ!」っと勢いよくゲンコツを落とした。
「いったぁぁ!」
「お労しや」
ド派手にバルは地面に伏した。とは言っても、バルも眷属。こんなことでケガなんてしない。
「んで、その魔術でどうやって魔獣を倒すの?」
僕が質問すると「よくぞ聞いてくれました!」と言わんばかりの顔でこう言った。
「まず、私が魔獣にこの魔術を使うでしょー。そしたら他の魔獣と戦わせて勝ったらそのまま別のやーつ、負けたら勝った方にまた魔術を使う。最後の一匹は動かないようにさせてバルがやっつける!」
「エグっ、思いつくことが魔術を授かって一日目のそれじゃないよ」
でもまぁ、何ともアイラらしい作戦だなぁと思った。アイラの作戦が仮にうまくいくなら、僕たちでも十分に魔獣討伐はできるだろう。でも、やっぱり疑問に思う。
「そもそも、そこまでして魔獣討伐する必要なくないか?」
さっきまで倒れていたバルはケロッと起き上がり、同じことを思っていたのか、そう尋ねた。
「そうだよ、そんな危険冒さなくても……」
「良くないのよ」
彼女の言葉は小さかったが、その言葉に僕の話は遮られた。
「バルも、私ももう人じゃない。神様に仕える眷属なのよ。それに来月には今年が終わって十六歳になるのよ。私とバルは眷属だから王都の学院に入らなきゃいけないけど、レイはそうじゃないもん。でも、王都の学院には一般枠があるから、入学前に実績があればレイも一緒に学院に来れると思ったから……」
しばらくの沈黙のあと、バルは立ち上がった。
「俺、家から剣取ってくるわ。森の入り口、集合でいい?」
「え? マジで行くの?」
「当たり前だろ、俺だってお前たちと一緒にいたいからな!」
バルはやる気らしい。アイラは……言うまでもなく鼻息を荒くしてる。
「大丈夫だよ! レイのことは私とバルが絶対に守るから!」
「僕は……」
用語『カリフィス』
ダリア・リーア王国の東の果てバルカバレル領のさらに東にある。すぐ隣にはアメリア帝国と魔女の森がある。何かと王国、帝国、魔女との交流があり他の村よりも教育水準は高いが、魔女の森の影響で強力な獣が発生しやすい。
用語『魔獣』
ルインが神の打倒のためには現在の戦力では足りないことを悟り、編み出した秘術『領域侵犯・第一審』の不完全体(不完全体は術者が生命を創造した後、自分も同じ姿になって理性を失う)
完全体は魔人と呼ばれる。
用語『魔術・魔法』
この世界には魔力、霊力、界力の三つが存在し相互作用を生む
そして魔力に関してはある程度解明が進んでいる。魔力は魔子の移動によって発生すること、魔子は位階が高い方から低い方へ流れること、同一のものでありながら、自然界に元からあるものと人間の体内に存在するものの二種があること、それぞれの間でも相互作用が働き体内の魔子が減ると自然界の魔子が体内に流れ込んでくること。
魔術とは自分の体内の魔子を利用して魔力を発生させそれを用いて世界の因果を制御する術である。
対して魔法とは未だ解明されていないが明らかに存在している法則のことである
《愛の隷属》
魔術区分:付与魔術
詠唱文
『我は愛の化身なり
今、そなたの身に我が名を刻む
《愛の隷属》』




