表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第一章「カリフィス編」
1/21

回帰

僕が受験勉強の息抜きに書いてたやつです

『目覚めろ』


 その言葉に導かれるまま、気がつけばここにいた。辺り一面真っ白な空間。不思議なことに足元に影もないから方向感覚がおかしくなる。


「やっと起きましたか」


 さっきまで誰もいなかったはずだが、声のする方を見るとそこにはベールを深くかぶった女性がいた。


「随分と長い眠りでしたね」


「あなたは?」


「私は……そうですね、ひとまずレイラと名乗っておきましょうか」


「レイラ、さん?」


 知らない名前のはずなのに何故か懐かしさを覚える。彼女は近づいて僕の頬に手を当てる。


(近くで見ると、この人……美人だなぁ)


 あまりの美貌にどこか見とれている自分がいた。それにどこがとまでは言わないが大きい、そう思った。


「あら、今不敬な事を考えましたね」


 彼女はそう言うと、親指の腹で僕の唇をなぞったあと僕をそっと抱きしめた。


「名前は言えますか?」


「僕の名前は……名前?」


 おかしい、自分の名前が思い出せない。


「僕……なるほど、大丈夫です。落ち着いて」


 彼女は僕の背中をそっと叩いてくれた。だんだん落ち着いていく。


「あなたの名前は、レイ」


「レイ」


 僕は彼女の言葉を繰り返した。


「そして、私は循環を司る神です。少し、この世界について話しましょう」


 彼女が指を鳴らすと、見るからに上質なソファが現れた。


「さぁ、こっちへ」


 彼女に腕を引かれながら僕たち二人はソファに倒れ込んだ。


「うふふ、相変わらずあなたは可愛らしい」


 彼女は僕を知っているのだろうか。ふと、そんな疑問を抱いて、もしそうなら申し訳ないなと思った。彼女は僕の頭を胸に抱き寄せ頭を撫で始めた。


「この世界は歪んでいます」


 彼女は開口早々そんな事を言った。


「昔々、大きな戦乱がありました。その戦乱はある一人の人間が率いる集団とそれ以外のすべての生命体との対決、いわばその一人の人間と神々との代理戦争でした。結果を先に言えば神々が勝利したのですが、その後その人間の消息が途絶えました。そして今なおその余波で世界は混乱しています」


 彼女はより一層抱きしめる力を強めた。


「あの、少し本筋からズレますけど質問していいですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「僕とあなたはどんな関係なんですか? その、僕は多分神様じゃないですし、どうしてもこうされてる状況が不思議だし、でもどうしてか落ち着くんです」


 僕がそう問いかけると、彼女はニッコリと微笑んだ。


「あなたは私にとっての希望、この循環の神の唯一の眷属です」


「……眷属?」


 私がそう言うと彼女はコクリと頷きました。


「眷属とは、神々が見初めた人間あるいは生物のことです。そして、あなたは私が見初めました、だからあなたは私の眷属です。そして眷属は皆、かつて世界に災いをもたらした人間、名をルインと言いますが、その人間の始末を使命に持っています」


「……ということは、僕もその人を殺さなきゃいけないんですか?」


「まぁ、確かにそうですが」


 そう言うと彼女は足を絡めてより一層密着して来た。


「あのっ!」


 あまりの近さに少し離れようとしたが、彼女の腕はそれを許してはくれなかった。


「お願いだから死なないで、眷属の使命なんて二の次でいいから無事に私の元まで帰ってきて」


 彼女はそう言うと僕の額に唇を落とす。その瞬間、おそらくこの世界に関する知識であろう情報が一気に頭の中を駆け巡った。


「あなたに世界の知識を授けました……名残惜しいですがもう時間です。あなたをこの天界《無の狭間》から現世に送ります」


 やっと彼女は僕から離れた。


「世界はとても生き物にとって優しいとは言えない。さしあたり、武器を授けます、何か希望はありますか?」


「武器……ですか」


 しばらく悩んだ末。


「特に希望とかはありません、得意不得意もよく分からないので」


 記憶がない僕にとって得手不得手はないに等しい。その意図をくみ取ったのか、彼女は「それもそうですね」といって指を鳴らした。その時、彼女の足元から一本の真っ黒な槍が現れた。辺り一面真っ白なおかげでその姿がよく目立つ。黒の刀身に黒の柄。だけど、所々に青色の線が入っている。


「これは、銘を《産声》といいます。私でも扱えますから、ちょうどよいでしょう」


 手に持ってみる前はめちゃくちゃ重たそうに見えたけど、持ってみるとまるで手に吸い付くように軽く全然そうでもない。


「では、今から送還の儀を始めます」


 彼女がそう言うと手元に杖が現れた。一呼吸おいて、彼女は言葉を紡ぎ始めた。


『世界は廻る

 天外の星々は道を照らし、巨大な山々は勇気を与え、広大な大地は安寧をもたらす

 世界は秩序の砦なり

 あなたを願い、あなたを望む、私はあなたを愛している

 今一度世界の理を読み取り、あなたに運命の祝福を、どうかあなたに夢と希望が満ち、私の元へ舞い戻らんことを

 そして、世界の壁は砕かれる

 世界を離れ、世界へ至りあなたの望みを果たしなさい

 忘れるな、私はあなたと共にある』


 その時、僕の体は突如として浮遊感に襲われた。


『《回帰の宴》』


 彼女が言い終えた途端、世界が暗転した。



《レイラ視点》

 レイの送還が終わった。また、彼の冒険が始まる。


「また会いましょう」


 私はソファに座り込む。送還の儀は他の儀式と違ってとっても疲れる。


「今回は『僕』でしたか」


 さっきまで二人で座っていたソファに寝転がり、顔を埋めると彼の匂いが強く感じられた。


「あぁ、どうしてあなたは私の心をこんなに掻き乱すのかしら」


 一度顔を離す。でも、体はとっくに出来上がっていた。


「次はいつになるか分からないし、良いわよ ね。私、神様だし」


 そう言って私の手は股の方に伸びていった。が、その興奮は一気に冷めさせられた。この《無の狭間》に別の神が入ってきた。


「あらあら、循環のは随分とお盛んでありますなぁ」


「何の用よ……深雪?」


「……そう安々と神名を口にしないでくださいまし」


「それは悪かったわね。改めて何の用よ、雪の」


 雪の神、深雪、それが入ってきた神の名だ。


「いやぁ、お主は毎度大神様の目ぇ盗んでは、自らの眷属と戯れていらしゃいてはるさかいなぁ。ちと、ちょっかいでもかけたろかと出てきたけど、遅かったようでござんすね」


「別にいいでしょう? 私たちは愛し合ってるのだから」


 この神とは昔から何かと縁があった。ある意味では私の母のようなものだ、そして二番目に苦手な神。


「『愛し合うてる』ねぇ。けったいな話でございますわぁ、相手はあんたの事なんて微塵も覚えとらんちゅうのに」


「私のように信仰心が根付いていない神は眷属を多く作れない、その代わり俗世からの理を受け付けない。だから一人か二人眷属を作ってその子たちに自らの力の大半を譲渡する。あなたも知っているでしょう? それともビッチだからそんな事も忘れちゃったのかしら?」


 少し言い返してやろうと思い、皮肉を混ぜる。


「ハッ、不在のあいつならまだしもうちがそこまで言われる筋合いはあらへんわ! 第一、男の味も知らん生娘の分際で語るでないわ!」


「ウッ! そ、そこまで言わなくったっていいじゃない!」


 なかなか筋のいい言葉のストレートパンチをもらってしまい思わずよろめいてしまった。


「フンッ! 興が冷めたわ!」


 彼女はそう言うと私に背を向け果てへ歩き始めた。


「今はまだ、あんたのおイタを見逃したる。大神様には新しい眷属を迎えたとして報告したるわ」


 それだけ言うと、彼女は霧になって消えた。


「はぁ、より一層疲れた気がするわ。これだから頭の硬い十二暦神は嫌いなのよ」


 私はまたソファに倒れ込むが彼の匂いはとっくになくなっていた。

用語集みたいなのをちょくちょくここにはるかもしれません


用語『産声』


稀代の刀匠「ヴァディゴス」によって作られ、レイラが祝福を授けた神造武器。


用語《十二暦神》

ルインの一派を壊滅まで導いた十二の神々で、その後の世界の暦に名を残す


雪の月  雪の神 《深雪》   女神

星の月  星の神 《アストル》 男神

風の月  風の神 《風花》   女神

花の月  命の神 《リーリア》 女神

弓の月  狩の神 《アルトリア》女神

雨の月  天の神 《紫雨》   男神

愛の月  愛の神 《フレイル》 女神

終焉の月 終焉の神 《崩》   男神

烈日の月 日の神 《創》    男神

夢の月  幻影の神 《朧》   男神

大地の月 地の神 《グレンダ》 女神

憎悪の月 嫉妬の神 《イルラ》 女神


1月 雪の月

2月 星の月

3月 風の月

4月 花の月

5月 弓の月

6月 雨の月

7月 愛の月

8月 終焉の月

9月 烈日の月

10月 夢の月

11月 大地の月

12月 憎悪の月

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ