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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
27/52

特異点

《???視点》

 鈍い頭痛とともに男の目は覚めた。体を動かそうとしたが動かない、どうやら椅子に拘束されているらしい。辺りは仄暗い。目の前の机に置かれた蝋燭のおかげでかろうじて辺りを確認できる。

「気がついた?」

 声のする方を向くと部屋の端に誰かいる。その人は立って足音を分かりやすく立てながら近づいてきた。

「……レナ、先輩。ここは、どこですか?」

「レイ君」

 女は男の呼びかけには応じず、男の前にしゃがみ込み髪を右手でつかみ無理に引っ張る。

「イッタ!」

「ねぇ、私の目を見て」

 無理やり頭を引っ張られる。首が無理やり伸ばされ引きちぎれるんじゃないかというほど。目を開けると女の瞳が目の前にあった。その光の宿っていない深い深い洞窟の奥底のような黒い瞳。男はそれに恐怖した。

「い、いや! は、離して! 離して!」

 男は耐えきれなくなり頭を必死に動かして女から逃れようとするが、全然動かない。次第に涙が溢れ、男の瞳に映る女の顔が歪んでいく。女の唇が微かに動いているのが見えたが、それに気がつくほど男は正気ではなかった。

「たすけっ! 助けて! 誰か、お願い……」

 最早、男に正気など無かった。十五歳の男が、七つも年上の女に詰められ、生殺与奪を握られている。男が恐怖し、発狂するには事足りすぎる。


『謌代?縺薙l繧医j螟ゥ逅?↓縺昴?縺

逾槭?縺ソ縺ォ險ア縺輔l縺溯?鬮倥?蠕。讌ュ

莉贋ク?蠎ヲ蠢?↓貎懊j蜈ィ縺ヲ繧定ァ」縺肴?縺九☆

縺輔=蟋九a繧医≧

《繝。繝「繝ェ繝シ繝上ャ繧ッ》』


 女が何を言ったのか、何をしたのか男は理解していない。だが、ここから起こったことは確かに男にとっての転換点であり、女にとっての絶望だった。



《レナ視点》

「どうやら成功したみたいね」

 私はレイ君の記憶を覗いている。現代の魔術では行使不可能の神の御業。

「エリナには感謝ね。取り敢えずレイ君の最も昔の記憶を見つけましょう」

 私は瞼を閉じ体の感覚を外化する。自分の存在、記憶、意識、それらを媒介としてレイ君のそれらを自分のなかに取り込み内化させる。

「……見つけた」

 ゆっくり瞼を開くとそこは穏やかな村だった。そこには真っ白の髪の毛の男の子と茶髪の男の子が仲良く遊んでいる場面だった。

『これが、レイ君の一番古い記憶? なんで赤子じゃないの?』

 私はもう一度瞼を閉じ、もう一度集中する。

(もっと深いところにあるはず)

 しかし、いつまでたっても見つけられない。先ほど見たレイ君と、友達だろう、男の子と仲良く遊んでいるところが最も古い記憶だった。まるで生まれてからそこまでの記憶がすっぽりと抜けている状態。本人が忘れているという次元の話ではない。本人さえも記憶がないことに違和感を持っていない。これほど気色の悪い現象はない。

(もっと、どこかに手がかりがあるはずなのよ!)

 私は必死だった。ここまでやって実は無関係でした、なんてことが一番下らない。必死に記憶を探しているうちに一つの「繝舌ャ繧ッ繝峨い」を見つけた。

(これだ!)

 私は確信してこれを開ける。そして瞼を開く。

「あぁ、村の人達なの? そうだねさっき賊徒が来たね」

「は、はい。それで相談なのですが……」

 どうやら女の人と三人の男の人が話している。会話から察するに貴族と平民と言ったあたりだろうか? でも、あの魔女帽子には見覚えがある。

「その賊なら問題ないよ、私が全部殺したから」

「さ、左様でございますか」

「それでこの子供、まぁ多分どっかの貴族だろうけど相当精神がおかしくなってたし、まともに受け答えもできなかったから記憶消しといた。孤児としてそっちの村で育ててよ」

 魔女がそう言いながら男の子を一人抱きかかえる。五歳ほどの男の子。

『レイ!』

 確信があった。あれは間違いなくレイだった。五歳の頃連れ去られたままの姿だった。

「ご自身で育てないのですか?」

「……お前、死にたいの?」

 突如として女の雰囲気が変わった。私でさえ身震いするような鋭い殺気。

「も、申し訳ありません!」

 男三人は必死に頭を下げ、許しを請うた。

 そこで記憶は途切れた。

『取り敢えず、レイ君はレイで決まり……になるのかしら』

 私は心の突っかかりが一つ取れた感覚を味わった。それと同時に心臓を締め付けられる苦しさ。言い表すことのできない苦痛もまた私の心を締め付け、犯す。

『謝らないと』

 それが今私にできる事に違いない。きっと怖がられる。それでもやっと会えたんだ。散々悩んだけどやっぱり笑顔で抱きしめてあげたい。

「生きててありがとう」

 そう伝えたい。そう思って術を解こうとしたとき。

『娘、お前誰だ?』

 男の声がして急いでそっちを振り向く。私以外の人がいるわけがない。

 振り向くとそこにはレイ君に似た男の子が一人いた。でも髪は白ではなく黒色、紅い瞳に黒の瞳孔。

『あなたは誰!』

『質問を質問で返すな、痴れ者が』

 その瞬間私はその場に倒れた。

『え?』

 何が起こったのか、何をされたのか、一切合切が分からなかった。足元を見ると膝から下が、ない。

『まぁ、ここにいるということは原初の魔術をそこそこに使える人間と見た。久々に人と語らうのもまた一興だろうが……』

 私は久しぶりに恐怖した。恐怖なんて味わったのはレイが連れ去られたあの夜以来。

『人の領域に土足で踏み入った者には罰を与えねばな』

 その瞬間、頭の中を直接かき混ぜられるような痛みに襲われた。

『あ゙あ゙っ! あ゙あ゙ァ゙ァ゙!』

 頭を押さえのたうち回る。眼球から太り針をねじ込まれ脳をかき混ぜられるような痛み。

『この程度で悲鳴をあげるとはな、全く現代の魔術師というのは貧弱なものだ……とは言えダイアナでも見つけることのできなかったここを見つけたんだ。それに免じて、ここで見たすべての記憶を消すことをもってお前への罰としよう』

『い゙や゙! やめで!』

 目の前の男は両手をパンとたたき合わせる。それと同時に、抵抗する間もなく私の頭は潰れた。



「あ゙あ゙っ! あ゙あ゙ァ゙ァ゙!」

 私は悲鳴と共に目覚めた。全身をくまなく触り欠損がないか、ケガはないか、足はあるか、目はあるかを確かめる。

「なになに! いったいどうしたの?」

 隣から声がした。振り向くとそこにはエリナがいた。辺りを見渡す、見慣れた自室。何が起こったのかわからない、いつの間に部屋に戻ってきたのか。だけど、それよりも安全な場所に帰ってこれたという安堵から私は落ちる様に気を失った。

文字化け? ggrks

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