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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第三章「魔術大会編」
26/49

交差点

新章開幕

「あなた……何者」

 レナ先輩のその言葉に僕は言葉が詰まった。それ以前に、先輩から発せられる殺気とでも言うべき圧力、立つことも息をすることさえも許されない雰囲気が僕の上に重くのしかかる。まるで喉元に刃物を押し付けられているような、全身を拘束されているような、そんな緊張感、圧迫感。

「ど、どういう意味ですか?」

 僕は右手で右耳の裏をかく。冷や汗がこめかみからうなじからブワッと出てくる。汗が首筋を伝う感覚が分かる。恐怖で身体がこわばる。

「言葉のとおりだよ。君は何者」

 それと同時に先輩の圧がさらに強くなる。全身の震えが止まらない。今すぐにでも片膝をつき、命乞いをしたくなる。

「僕は、レイ……ただの、レイですよ」

「そう……もういいわ。《応えろ》」

 その言葉に呼応して、レナ先輩の足元からゆっくりと黒い何かが出てくる。

「もう、言葉は必要ない」

 先輩がそれを掴むと同時に機械音を立て、刃先が現れる。

「黒い……鎌」

 僕の《産声》と同じように青の線が張り巡らされた武器。武器に見入ってると一瞬にして僕は後方に飛ばされ、壁に叩きつけられた。

「カハッ!」

 何が起きたかわからなかった。突如として襲ってきた口のなかの血生臭さ。口を切ったと言うよりも内臓がつぶれたようなそんな鈍くて重い痛み。鳩尾が痛む、体を起こそうとしても動かない。頭にも生ぬるい感触が広がっている。

 言葉が出ない。レナ先輩は僕がさっきまで立っていた場所に立っている。レナ先輩から発せられる殺気がさっきの比じゃない。

「た、だすけ……て……だれ、か」

 涙が溢れ、命乞いの言葉が自然と口からこぼれた。頭から出血していたのか、額を伝って流れ出た血が右目に入り、涙と混ざる。

「助けは来ないよ、防音の結界を張ってるからね。君がいくら喚こうとも誰にも聞こえない。まぁ、さすがに見られたらその限りじゃないけど、この時間のこの場所には誰も寄り付かないよ」

 先輩がゆっくりと僕に近づいて来る。怖い、ただただ、先輩の立ち姿に恐怖があふれる。

「ご、ごめ……さい」

 もう、口も回らない。唇は震え、浅い呼吸を繰り返すだけ。先輩が一歩、また一歩と足を進めるたび心臓の鼓動が速まり、呼吸が乱れる。とうとう先輩が目の前までやってきた。

「大丈夫、殺さないよ」

 先輩はそう言いながら僕の頬を撫でる。優しく、腫れ物を扱うように。でも、優しさなんて微塵も感じない。ただ無機質で事務的だった。先輩の目は依然として冷たく、僕の瞳孔の奥を貫く。目をそらすことさえ許さない。眼球が針で固定されているような、そんな感覚。

「ちょっと頭の中をのぞくだけだから」

 先輩のその言葉を最後に僕の意識は途絶えた。



《レナ視点》

 レイ君を気絶させた。

「ごめんね。でも、あのこのクセまで見せられたらもう無理だよ」

 緊張したとき右手で右耳の裏をかく、これはあの子のクセだ。私はレイ君を背負う。目的地は私しか知らない場所。レイ君がレイである確証はない。でも、レイと何かしらつながってることは確かだ。

「敵なら殺す、なんとしてでも情報を吐かせる」

 でも、弟だったら? 心の声はずっと私にそう問いかけてくる。あえて考えないようにしている可能性。

「まぁ、いい。取り敢えず建物を直さないと、あと死なない程度に治すか」

 私はレンガの壁を一度砂に戻し、また固める。そしてスクロールを取り出しレイ君の傷を少しだけ癒す。

「これでいいかな」

 私はレイ君を連れて夜の闇に消えていく。

「君は一体何者なの……どうしてそんなに弟に似てるの?」

 私がレイ君にひとりごつように投げかける。当然気絶しているのだから返事はない。返事はないはずなのに確かに聞こえた。

『レイ君はあなたの弟だよ、レナ』

 ねっとりとした気持ち悪い声で聞こえてきた。

『いつまで見て見ないふりするつもり?』

「うるさい」

『怖いだけでしょ? 弟に覚えられていないこと、わざと避けられてること、それのどっちかが確実だから』

「うるさいって言ってるでしょ!」

 私は大声で叫ぶ。私は早足になって目的地まで急ぐ。もう言葉は必要ない。


 記憶が全てだ。



《??????》

『さぁさぁ! さぁさぁ! 面白くなってきましたぁー!』

『やかましいわ! アストル!』

『おーっと神名で呼ぶのはご法度だぜ! 深雪!』

『チッ、なんでうちがこないな奴と……』

『まぁ、夜だし、冬だしな! それよりもどうするよ、あの姉弟! 俺としてはもっと面白くなってほしいんだけどぉ』

『どうだってええわ、うちの眷属じゃあらしまへん』

『そういうお前の薄情なとこ好きだぜ!』

『黙れ』

『おぉっと! これは手厳しぃ』

『……まぁ、この先どないなるのか見てみたいのはあるわぁ。レイラに一泡吹かせられるかもしれへんなぁ』

『ちょっかいかけるのかい?』

『まぁ、おもろいこと起こりそうなら手ぇ出してみるわ。あんたは?』

『俺は手は出さないさ! オーディエンスはお菓子を片手に傍聴に徹するに限るのさ!』

『あんたほんまにほんでも十二暦神やの?』

『星とはいつだって下界の人間をワクワクさせる! それなら俺はこの世界で一番ワクワクさせる立場にいなきゃいけない! オーディエンスでありながら僕はこの世界の主役さ!』

『相変わらず何言うてるのかさっぱり』

マジで受験期にこれやってたのアホやで、だから落ちるんや

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