学校生活!!!!
寮の一階には多くの設備がある。
先ほど一悶着あった大浴場、朝昼晩の食事がとれる食堂、そして自由に利用可能な広間。他にもいろいろあるのだが僕たちは男子棟の広間に来ていた。
「それでリファー、男ってのはホントなの?」
「ほんとだよ」
目の前にはピンク色のパジャマを着たリファーがいて対面に座って話していた。夜も遅いのでいくら共用で自由に使用可能だとしても人っ子一人いない。
「本当に?」
「くどいなぁ、流石に魔術でも魔法でも、本来ないはずの性器をつけることはできないよ」
全くもってそのとおり。その通りなのだが、昼間の、あの昼間の振る舞いや眷属会合でのドレス姿が脳裏に焼きついて離れない。今だってそうだ。パジャマ姿も座り方もどこを取っても女性にしか見えない。
「でも、昼は女子の制服だったよね」
「まぁね」
「なんでか聞いても?」
「前にも言ったと思うよー、私は自分が着たい服を着るんだよ、それがファッションってやつだよ」
そんなことを言っていた気がする。その時はカッコいいことを言うなぁと、単純に尊敬した。
「ほかにも聞きたいことはあるんだけど、なんであの時間帯に浴場に来てたの?」
「それは私のセリフだよぉ」
リファー曰く、私は男だってあまり知られたくないからとのことだ。確かによくよく考えたらそうだ。
「僕は眷属会合の後に帰ってきたら時間ギリギリだったからあの時間になっただけだよ」
「ふぅん」
リファーは興味なさげだ。自分から聞いたくせに。
「で、知られたくないのに僕には言ってよかったの?」
僕の疑問に対してリファーはうーんと腕を組み悩んでいる。
「いやねぇ、ホントは隠すつもりだったんだけどね。レイは友達だしアイラちゃんがいるから別に私にはそんなに干渉してこないかなって思ってね」
「なるほど……とりあえず誤解を解いておくと別に僕とアイラはリファーが思ってるような関係じゃないよ」
「うっそぉ!」
リファーは信じてない様子だ。どうせ何かアイラが言ったんだろう。
「とりあえず、僕は今まで通り接すればいいのかな?」
僕がそう尋ねるとリファーは少し驚いた顔をして、優しく微笑んで「それなら嬉しいかな」と言った。
「まぁ、いいや。長いこと引き留めてごめんね、お休み」
僕は立ち上がって部屋に戻ろうとする。
「お休み」
リファーはそう言った途端僕の腕に抱きついてきた。
「私もこっちだし、部屋。それに男同士なら別に抱きついてもいいでしょ!」
僕は頭を抱えたが、別にアイラに抱きつかれたときのように柔らかい何かが押し付けられるわけではない。特に煩悩も起きないからいいやと思い、「好きにして」って言って僕は歩き始めた。
「もう! 少しくらいドキドキしてくれてもいいじゃん!」
「はいはい」
「もー!」
本当に男なのだろうか……いい匂いがする。
アレから数日が経った。ここ数日の授業は数学、歴史、体育、物理、化学と言った基礎科目と呼ばれる分野ばかりだった。
「おはようレイ」
「おはようバル」
僕とバルは同時に目が覚めた。一緒に支度をし、食堂へ向かい朝食を取る。僕は簡素なサンドイッチ、バルは朝からがっつり唐揚げ定食。
「あ、おはよう! レイ!」
バルと朝食を食べていると、リファーがサンドイッチを片手に持ってやってきた。
「おはよう、リファー」
「よっ! リファー」
初対面の時にガチガチだったバルはどこへやら、今ではすっかりと打ち解けている。
「あ、レイもサンドイッチだったんだね。おいしいよね」
「そうだねぇ、卵がいいんだよねぇ」
三人で卓を囲んで朝食を済ませた。食べ終わり、三人で五階まで階段を登る。
「昨日も思ったんだけどさ、なんで五階なんだよ!」
「それは僕も知らないよ」
バルの愚痴を聞き流しながらも僕も心のなかで愚痴をこぼす。寮と校舎は離れており、五階の連絡通路でつながっている。これは一番下の一年生と一番上の九年生が平等になるようにという理由と、一年生には体力をつけさせるためというのが目的らしい。一応一階から行くこともできるが一年生の教室は七階にあるのでどちらにせよ登らなきゃいけない。
「レイー! バルー! リファー!」
五階の渡り廊下は当然ながら女子寮にも繋がっており、五階の階段を登りきったところで前からアイラがやってきた。
「おはよう、アイラちゃん!」
リファーはアイラとも仲良くなったらしく、二人が並んで話しているところを見ているとやはり男とは思えない。
「それにしてもバルはすごいよね。眷属会合の時にリファーを見ただけで男だってわかったんでしょ?」
「まぁな、ほら、俺は魔術はからっきしたげどよ、そういうのは得意だからさ」
バルもアイラもリファーが男だということは知っていたらしく、それを受け入れ四人ぐるみで今はよくつるんでいる。教室でもリファー、僕、アイラ、バルの順で横並びになっている。
僕たちは四人ひとかたまりになって教室へ向かった。いつも通りの朝って感じだ。
《レティシア視点》
私は葛藤していた。
「あぁ、バル君♡」
あの日から、入学式の後の実習測定から私の頭のなかにはずっとあなたが居た。教師として、生徒に恋をするだなんてあってはならない。でも二十八年生きてきて今まで彼氏が一人もいないどころか好きな人でさえできなかったのだから、あなたが欲しい。そう思うことは当然だったと思う。
「ん? アレは」
私は一限目四年生の魔術技術の講義のために校舎五階まで来ていたのだけど、そこでとある四人組を見つけた。
「アレは確か、ディゴスシリーズの子よね♡ それに私と同じ愛の派閥だったかしら♡」
白髪に整った顔、柔和な笑みを浮かべるあたりこの前の新入生で間違いない。それよりもその隣にいる人に目がいった。
「えっ! バル君!」
私はびっくりした。私の派閥の生徒がバル君とつるんでるのだから。それに加えて女子が二人。その時、私のなかで何か煮えたぎるような劣情が湧き上がった。あの女子は彼女なのか、それとも友人なのか。そう考えたらどんどんと溢れてきた。
(もう♡ 全く困るわね♡)
本気だった。今も本気だけど、この時は特に。私の全身全霊を持ってあなたを取りに行く。そう決心した。




