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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第二章「王都学院編」
18/20

真実

 僕たちは移動しリビングまで来ていた。新入生全員と他数名の上級生で大きな机を囲み、そのほかの上級生は僕たちのさらに外側で椅子に座っている。もちろん全員が女性。

「では改めて自己紹介から始めましょうか。私の名前はレイシナム。ここ、愛の派閥の頭領を務めております。学年は七年生、分からないことがあれば遠慮なく言ってくださいね」

 その後に続いて続々と上級生の幹部と思われる人たちの自己紹介が続いていく。

 次に立ったのはレイシナムさんの右隣に座っていた人だ。

「わたくしの名前はエイリスと申します。愛の派閥の総長です。頭領と同じ七年生です」

 その次に立つのはレイシナムさんもエイリスさんのさらに両隣。似た顔立ちの赤毛の少女二人。

「私の名前はナリス」

「私の名前はニリス」

「私たちは双子」

「六年生」

「愛の派閥の右翼、左翼担当」

「よろしく」

 息の合った自己紹介だった。なんだか少し聞き取りづらかったが名前くらいはわかった。

「他にも百五十人くらいこの派閥にいますけど、さすがに自己紹介が終わらないので悪いですけど省かせてもらいます」

 レイシナムさんが言う人たちというのは、多分僕たちを取り囲むように座っている人たちのことだろう。

「さて、今自己紹介したのがこの派閥の幹部になります。頭領はその名の通りこの派閥のリーダーです。総長は派閥全体で何か行動するときの現場指揮官の様な立ち位置です。そして右翼、左翼は大隊長といった感じに捉えてもらえば結構です」

 レイシナムさんは主要な役職の説明を一通りしてくれた。そのほかにも色々な役職があるらしいが、さすがに全部は紹介しきれないため後々紹介するとのことだった。

「さて、本当に宵闇も深まってきたことですから早めに終わらせますね」

 レイシナムさんはそう言って説明を始めた。

「まず、派閥とは何かについて説明したいと思います。派閥とは各神々の眷属が競い合いながら技術を高める機会や、上級生との交流を通じて研鑽を積む機会を充実させるための体制です。派閥全体として行動するのは年に二回。来月にある魔術大会、そして弓の月にある体育祭の二つです。その他にも各々の学年で派閥がまとまって競い合う機会は多いです。そして、年度末に最も成績がよかった派閥はなんと予算倍増。できることが大幅に増えますよ」

 その他にもレイシナムさんは多くのことを教えてくれた。眷属会合改め、派閥会議というのが月一で開かれ強制参加なこと、派閥棟は何時でも利用可能なこと、男子は僕以外にもう一人いるということ。

「さて、本当に夜遅くになってしまいましたね。ここらへんで説明は終わります。皆さん今日は来てくださりありがとうございます。明日から本格的に授業や訓練が始まると思いますが、分からないことは何でも聞いてくださいね」

 レイシナムさんのその言葉を最後に僕たちは解散した。



《愛の派閥・派閥棟・幹部会議室》

 そこは異様な場所だった。

 部屋の照明はすべて間接照明で仄かに明るく、仄かに暗い。それに加えて甘い匂いの香を焚き、中央の円卓にはロウソクが立っている。そこはまさに歓楽街の一室、大人が来れば娼館とも見間違うほどの場所であった。そこで行われるのは至って真面目な幹部会議。艶めかしいことなど一切ない。

「さて、会議を始めましょうか」

 派閥の頭領、この建物の主であるレイシナムがそう言った。

「さて、エイリス。あなたから見て今年の新入生はどうだったかしら?」

「わたくしとしては、まさか本当に男子がいたことに驚きましたわ」

 総長エイリスがそう言うと双子も続く。

「それは確かに」

「私たちも思った」

 最後にこの派閥に男がやってきたのは十三年前である。

「でも、事前に送られてきた名簿には男子は二人ってなってたけど、見た感じ一人だったわね。体調がすぐれなかったのかしら」

 エイリスはそう疑問を唱えた。事前に学院側から提示された情報には男子は二人となっていたからだ。

「ねぇ」

 レイシナムが至って真剣な顔で声を発する。何かしらあるのかと他三人も顔を固める。

「あの男の子、めっちゃ可愛くなかった?」

「………………は?」

 次第にレイシナムの頬の肌が紅色に染まっていく。それを見て他三人は驚愕した。

(あの、レイシナムが魅了されてる!)

(あのルクス先輩に!)

(見向きもしなかったのに!)

 手を頬に添えて体を少しくねらせる一人の女性に、皆言葉を失った。

 ここは愛の派閥、派閥棟、会議室。ここでは派閥としての方向性を吟味する会議が行われる神聖な場所である。艶めかしいことなど一切ない。恋バナなどあってはならないのだ。

「あの白髪に綺麗な目! チラって目が合った瞬間からもう駄目よ! あれは反則だわ!」

 そう、恋バナなどあってはならないのだ…………



「はぁ、いい湯だなぁ」

 僕は一人寮のお風呂に入っていた。眷属会合の後帰ってきたのだが、思ったよりも遅くバルはすでに風呂を済ませていた。そして気がついたら大浴場の閉まる時間ギリギリで急いで浴場まで来て、湯船に浸かっている。

「今日はいろいろあったなぁ……疲れが取れてくよ」

「まったくだねぇ」

 ……………………ん?

「ねぇ、レイは体力測定の結果とか良かった感じ?」

 僕以外に、人の声が聞こえる。それも、女性の、聞き覚えのある声。いやいやいやいや、さすがに、さぁすがに気のせいだろう。僕はもう一度湯船に深く肩をつからせた。

「ありゃ、無視ですかー?」

 気のせいじゃなかったらしい。僕はゆっくりと左隣を向く。

「あ、やっと気づいたぁ」

「ねぇ、リファー……なんでここいるの?」

 そう、リファーがいた。僕の頭のなかが大量のなぜ、という疑問符で満たされる。

「いやいやいやいやいや、落ち着け僕。そうだよ、リファーがこんなところにいるわけないじゃん」

 僕は一度目を閉じ、ゆっくり深呼吸をし目を開けた。

「どぅわぁぁああ!」

 いた。目の前にリファーがいた。僕は驚いて立とうとしたが足を滑らせて転んでしまった。

「もう、なにしてんのさ」

 そんな僕を見ながらクスクスと笑うリファー。長い髪を後頭部でまとめてタオルで覆っている。胸元は丸見えで、てっぺんの突起まですべて見えてしまっている。かろうじてお湯のなかにある秘部が見えないことに安堵した。

「ね、ねぇ……ここ男湯だよ?」

「え、知ってるよ?」

「なんでいるの?」

「レイがいたからだけど」

 話が見えない。ここは混浴だったのだろうかと疑問を持ち始めてきた。

「女湯閉まってたの?」

「開いてたよ」

 もう本当に訳がわからない。とりあえず僕は自分のモノが見られないように股で隠した。女湯開いてたのに男湯に入ってくる? 訳がわからない。

「じゃ、じゃあ今からでも行っきたら?」

「無理だよぉ~」

 僕の提案にはどうやら乗らないらしい。どうしよう、まだ体洗っていないというのに。

「念のために聞くけどさ、本当になんで男湯に入ってきたの?」

 僕のその問いにリファーは口角を上げる。

「知りたい?」

「…………知りたい、かな」

「そっか」

 リファーが突然立った。

「なっ、なにして、んの………って、は?」

 あまりに急だったために目を瞑る余裕がなく、リファーの下半身をモロに見てしまった。モロに見てしまったのだが、そこにはないはずのモノがあった。

「だって私、男だもん!」

 リファーは無い胸を張って自慢げにそう言ってきた。

「はぁぁあああ!!!」

 僕の驚嘆の声が浴場にこだました。

用語『レイシナム』


本名:レイシナム

平民出身の愛の眷属。現在は愛の派閥の頭領を務めている。精神干渉系魔術に強い適性を持っている。普段は艶めかしく、優雅に振る舞って、いかにも多くの男性を手籠めにしてきた雰囲気を醸し出しているが普通に処女。男性と手をつないだことすらない。いつか好きな男性から強引に迫られて純潔を散らすことに少し憧れを抱いている。生粋どMであるが別に好きでもない男にぶたれることはうれしくない。



用語『エイリス』


本名:エイリス

愛の派閥の総長を務めている七年生の女性。精神干渉系の魔術師が多い愛の派閥の中でも異質な武闘派の魔術師。魔術大会や体育祭では毎回期待されている。勉強はからっきしで毎年留年しかけているが、なんとか進級できている。果たして今年は卒業できるのか……



用語『ナリス』


本名:ナリス・アヘンベラ

愛の派閥右翼を務めている六年生。魔法陣学に長けており戦闘は好みではないが、戦うときは自前のスクロールを惜しみなく使う。魔術とは違う面で脅威である。

双子の妹がおり、顔がめちゃくちゃ似ていてよく間違えられる。本人たちもたまに自分がどちらかわからなくなるという。



用語『ニリス』


本名:ニリス・アヘンベラ

ナリスの双子の妹。愛の派閥左翼を担当。スペックはナリスと遜色ない。



用語『リファージ』


本名:リファージ

バルカバレル領の西側にある都市「リガンド」出身の『男の娘』。特に何かすごいわけでもなく平凡な眷属。ただ持ち前の明るさと性自認が女であることだけが非凡である。ちなみに愛の眷属


追記:「非凡」という表現は現実世界での差別を助長するものではありません。この世界観的に「非凡」なだけです。現実世界とフィクションを区別できないアホはここで退場してください

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