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界律師と神殺し  作者: 桐ケ谷漣
第二章「王都学院編」
11/20

王都のすゝめ

前回載せ忘れたやつです。


用語『エリナ』


本名:エリナ・クロネウス

リーヤシュヴァレン魔術学院の生徒会書記。魔術はあまり得意でないが魔法陣学に精通している。今は《魔の産出》の魔法陣化を研究中。魔法陣学で数々の発見と発展を重ねてきた名門クロネウス家の出自であるがゆえに周囲から期待されている。それにも負けず自分のやりたいことに全力を注ぐだけの精神力と実力を兼ね備えた優等生

 僕とバルが荷物を置いて門に戻るとちょうど荷物を置いてきたアイラと合流した。門の外ではリサさんが誰かと話していた。

「リサさん!」

 僕たちは走って向かっていった。

「皆さん、意外にも早かったですね」

「オイ、リサこの子たちは誰だ?」

 後ろにいたちょっと強面の男性が顔を見せた。

「そんな怖い顔をしないでください、ライラ。皆さん、ご紹介します。この強面の男は私の同僚のライラックといいます。ライラ、こちらは私が案内してきた眷属の方々です」

「あぁ、リサの送迎は今日だったんだな。よう、坊主ども、俺はライラック! お前らリサに当たるなんてついてるなぁ! こいつは優しいからな、なかにはテキトーに門のところまで送り届けて「あとは勝手に行ってしまえ!」ってやつもいるんだぜ!」

 強面と思ったら意外にも快活な人だった。

「ライラ、時間は大丈夫なのかな?」

「あっ! すまねぇな坊主ども、俺も使者として送迎のための用事があるんだわ! せっかくあったが失礼するな。これからの王都生活楽しめよー!」

 それだけ言ってライラックさんは颯爽と何処かへ走っていった。僕たちはひと言も発しなかった。

「では、行きましょうか」

「は、はい」

 僕たちは呆気にとられて頭すっからかんでリサさんについて行った。

「まずはこのあたりの中央区からですね」

 街の大通りを歩きながらリサさんが解説を始めてくれた。

「この王都は中央区、東区、西区、北区、南区の五つの街区に分けられています。農作物なら東区、魔工製品なら西区、まぁ学生には縁遠いかもしれませんが南区には歓楽街、所謂風俗なんかがあります、そして北区には魔術関連の専門店が多くありますね。中央区では南区を除いたすべての街区で生産された殆どの物を買うことができますけど専門的なものになればなるほど各街区に向かうといいでしょう。学生が一番利用するのは北区ですかね。あとは中央区にあるレストランはどれもおいしいですからね。是非とも七年間の間に全店巡ってほしいものです」

 リサさんの説明を受けながら街を見渡す。確かにアチラコチラの露店でありとあらゆる物が売られている。

「あの、町中に張り巡らされたあの黒い線はなんですか?」

 バルが空中にかかった黒い線を指さしながら質問した。

「あぁ、あれは魔線ですね。魔力をあのなかに通して各家庭やお店に送っているんです。アレがあるおかげで私たちは魔工製品を自分たちで魔力を使わなくても使うことができるんです。田舎の方にはない技術なので珍しいですよね」

 確かに見たことない、都会の暮らしは便利そうだ。生まれた時からここに住んでる人はこういうのに慣れて過ごしているんだろうか? 少し羨ましいけど、田舎ののんびりとした暮らしを知らないのは少し可哀想だ。

「確かに見たことはないですけど、聞いたことあります! 確かこの魔力を全部作って王都全域のエネルギーを賄ってるのが『アルカナ』って言う巨大設備なんですよね!」

 バルが興奮気味にその話に食いつく。魔工師として何かこう、魂にクル物があるんだろう。

「よく知っていますね。ちょうどここから見えるでしょう。西区にあるアレが『魔力発生装置アルカナ』です。七百年前、神匠と呼ばれる三人の魔工師の内の御一人、レインロッドによって設計、建設されました。それ以降はレインロッドの子孫たちが日々管理を行っているそうです。内部設計や動作原理なんかは一切非公開。まさに私たちからしたら未知の遺産、失われた技術と言ってもいいかもしれませんね」

 バルはまさにそういうのに心惹かれるのだと言わんばかりの眼差しで遠くから見ても明らかに周りの建物とは格が違うほど巨大な建物を眺めていた。

「さて、ちょうどお昼にいい時間になってきましたね。ここらでお昼にしませんか? ちょうどすぐそこにいいお店があるんです。今の時間帯ならランチメニューがあるはずなのでお得になってるはずですよ」

 リサさんの提案はとっても魅力的だったけど一番の問題があった。

「僕たちそんなにお金ないですよ……」

 そう、金がない。こういう時に「オレが払うよ」って颯爽と現れてくれる人がいると有難いけどそんな人は滅多にいない。

「それならここは私が持ちましょう」

 ここにいた。え、リサさんはどこまで善人なんですかね……。

「そんな! 悪いですよ!」

「そうですよ! 村からの送迎と王都の案内だけでも十分なくらいなのに!」

 アイラもバルも申し訳なさから断ろうとしてた。だって露店に並ぶものは村では見たことないくらい高いのだから。そもそも村にいたときは大してお金なんて使っていない。たまに来る商人と売買するときくらいにしか使わないものだった。

「それならこうしましょう。実際に行ってみて値段を見て払えそうなら三人で私の分の食事を奢って下さい。代わりに私が三人分払います」

 ここまで来ると逆に断りにくくなってくる。リサさんは続けて「行くだけ行ってみませんか? もし払えなくても気にしませんから」と言って押し切られるように僕たちは案内された。と言うよりも右隣を見させられた。

「と言っても、もうここなんですけどね」

 そこには大きな看板で「黒猫のしっぽ亭」と書かれている。表にはメニューの看板も出されており、そこに黒猫が寝転がっていた。

「あ、猫ちゃん!」

 アイラは猫の元まで一瞬で移動し、しゃがんで猫の頭をなで始めた。

「はぁー、猫ってどうしてこんなにかわいいのかしらぁ」

 そう、アイラは大の猫好きである。猫が好きすぎて昔は村中の猫に抱き着いてはその腹に顔を沈めてクンカクンカと嗅ぎまわすから村の中の猫は一切アイラに近づかなくなってしまうほどに猫を溺愛している。その事件以来アイラも自重したのか、今は頭をなでたりするだけで満足している。

「アイラ、その辺にしなよ」

 僕はアイラを呼んでみたが、まだ撫で続けているあたり聞こえていない。こうなったらすることは一つ。

「アイラ! 愛が重い人は嫌われるよ!」

「レーイー、今なんて言ったのかな? 最近耳が遠くてね、もう一回言ってくれるかなぁ?」

 まずい予感がするけれど猫から気は引くことができた。これにて任務完了。ささ、バル、一緒にお店に入ろうじゃないか。そう思ってバルのほうを見たが誰もいない。もしやと思い店の入り口を見るとリサさんと一緒に店の中に入っていっているじゃないか。

「オイ! バル! 俺を見捨てないでくれ!」

 僕は必死にバルに手を伸ばしてみたが、それも虚しく空を切る。かすかに聞こえたバルの言葉は「お労わしや」の一言だった。

「レイ? ちょっと私たちはお話、しよっか?」

 いつの間にかアイラが後ろにいて人間が出していいものとは思えないほどの圧を放っている。

「ご、ご飯行かない?」

 決死の覚悟で誘ってみたけど店の入り口からリサさんが「店員さんには私が伝えておくからゆっくり話してきてください」と援護射撃、というか乱射。

「リサさん、ありがとうございます! それでレイ何か言ったかしら?」

「ア、アハハ」

 もう乾いた笑い声しか出ない。この日、僕は死を覚悟した。そして一つ学んだ。女性には地雷があるのだ。地雷原でタップダンスなど決してだめなのだと。そう、地雷を踏むことは決してしてはいけないのだ……。




「わぁ! 美味しそう!」

「やば、メッチャいい匂いする!」

 リサさんに案内されて入ったのは名前を「黒猫のしっぽ亭」というお店。内装はおしゃれ、というよりもいかにも酒場! って感じだった。でも店内は騒がしいけれども、物語で出てくる荒くれの集まりそうな酒場のそれじゃなくてみんな楽しくご飯を食べて賑わっている、そんな感じの騒がしさだった。

「あれ、レイのご飯はまだ来ないのかしら?」

 隣の席に座るアイラからそんなことを言われた。現在、僕以外のすべての人の目の前には料理が置かれている。各々選んだ料理だ。アイラはカレー、バルはピザ、リサさんもカレー。湯気を立てながら美味しそうな匂いを発している。

「あの、もしかしてアイラは記憶喪失ですか?」

 と言うとアイラは笑顔でこう言った。

「何かあったのかしら! 私、全く身に覚えがないわ!」

 アイラがそう言うといかにも筋骨隆々といった感じの二人の男性店員がエッサホイサと樽を運んでくる。

「ヘイ、お待ち! こちら黒猫のしっぽ亭自慢の大食い客専用飯! 地獄盛り唐揚げ焼飯五人前です!」

「それではごゆっくりどうぞ!」

 その二人はそれだけ言うと一人は厨房の奥にもう一人は別の卓の注文を取りに行った。

「す、すごいね」

 どうしてこうなったのか…………あぁやっぱり地雷原でタップダンスするんじゃなかった、と目の前の料理の大きさに圧倒されているとバルが「お前、それ本当に食い切れるのかよ」と言ってくれた。あのあと罰としてこの店で一番量の多い料理を食べさせられる羽目になったのだが……これは想像以上だ。それとアイラに目はついているのだろうか……あのいかにも力自慢ですと言って回ってそうな体格の男二人で担いできたんだぞ。樽だぞ、見たことあるか? 樽に入った大量の焼飯と唐揚げを……。

「大丈夫よね! レイは成長期だもの!」

 アイラのその一言で僕の諦めるという選択は砕け散った。

「そ、それじゃあ皆さん頂きましょうか」

 リサさんが僕にほんの少しの慈悲ある目を向けながらそう言った。みんなで手を合わせて「いただきます!」と食べ始める。

「ウマッ!」

「美味しい!」

「ヤバッ、手が勝手に口に料理運んでく!」

 僕たちは料理のあまりの美味しさからガツガツと食いついた。いや、もう樽いっぱいに入ってるとか関係ない。

「皆さん、お口にあって何よりです。このお店は私のお気に入りなんですよ」

 リサさんは「店の雰囲気もいいですし、料理も美味しいですからね」と言った。

「店名からは想像もつきませんけどね」

 アイラのその言葉にみんな頷いた。なんで「黒猫のしっぽ亭」なんて名前にしたんだろうか。まぁ、そこは店長のみぞ知るといったところなのだろう。

「それにしても、レイのその……何て言うんだ? 樽飯? で何グレンだっけ?」

「五十グレンだよ」

「やっす」

 この店に入って驚いたのはその値段の安さだ。酒樽いっぱいに入ったご飯でさえ子供のお小遣いで注文できてしまう。

「ちなみにバルのは?」

「俺のは八十グレンだぜ」

「やっす」

 なんで、バルのやつのほうが高いんだろうか……。

「こら二人とも、お店の中で値段の話しちゃいけないよ!」

「でもアイラのそれも確か安かっただろ? この値段なら全然俺等で払えるな!」

 リサさんに迷惑をかけずに済みそうで何よりだった。

「物価が最近一気に上がってますからねぇ、ここのお店くらいなんですよ、ずっと安いまま美味しいご飯を食べられるの」

 リサさん曰く、今ほかのお店で普通にランチを食べようと思ったら二百グレン以上はくだらないそうだ。そう考えると、ここの安さは異常に思える。それよりも、確かにおいしい、とても美味しいのだが……いつ食べ終わるだろうか。

用語『王都構想』


東区は農作物、西区は魔工製品、南区は歓楽街、北区は魔術関連。それぞれ専門性を持ってそれらが中央区に流れ込むようになってる。



用語『グレン』


王国の貨幣単位。十円≒一グレン

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