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雑談  作者: waterflea
プロローグ
4/19

4

「ローマ帝国の属州であれば、何かと得なことがあったのだろうか。帝国化した時期に、ローマは衰退の道を歩み始めたのだと思うけど。何故なら、それまでの民主政で培った市民の情熱と信頼が国家を拡大させる。兵士をより勤勉にし、併合される国からしても、早めに降伏することが利益になるから。と同時に、真の意味での民主政からはますます離れていく。人を集めるのが単に大変になるから。既得権益の増大とマンネリ化してきた政治のせいで、中央では謎の分裂が起こる。地方のほうではますます諸侯の力が強くなる。そして、中央に対して反旗を翻す者共が現れてくる。それらを鎮めるために中央の力はより弱まっていく。ローマは、かつての威光を売るだけの商売国となっていく。それでも、それにより領土は広がり続ける。ただし、精力は衰え、もはやかつてのローマとは異質のものになっている。聞くところによれば、ローマは民主政の時代、最も勤勉で真に戦争でも強かった時代にも、征服した土地の文化を根絶やしにせず合理的に取り入れていったらしいよ。余計なところに力を注ぎ込まない仕組みが出来ていた、ということだろうけど」

 ゼロダは、YoutubeでPerfumeのMVを観ながら言った。「それにしても、何故、Perfumeの再生回数は比較的穏当なのかしら。私からすれば何がいいのか解さないアーティストばかりが億の再生を取っていて、全然分からないわ。それも、私からすれば、Perfumeこそ、資本主義、民主主義、自由主義、といったものを表現した、大衆受けのみを目的としたコンテンツに思えるし、たとえば、米津玄師の音楽性には癖があって大衆受けしなさそうに思えるのに、10億再生くらいある曲もある。あ、あれかな、世代が古いのかな」

「そのローマの話は本当なんですか?」とリカは、ホテルのベッドに寝そべったままで言った。「皆が興味あることについて適当に話していると皆離れていきますよ。嘘を聴いている時間は無いんだ、ってね」

「そもそも、あんまり資料が無いわよね。そして、私は、一定量の資料を読んだ事実は有するけれど、あくまで趣味の読書としての読解に留まるうえ、殆ど記憶にも無いので、それが役立っているかは分からない。頼っているのは勘よ。単なる、勘。けれどね、それでも、論理的に反論が出来るようには話している。聞き手が論理的に反論が出来るのであれば、その事項については、聞き手が正しいとの推定がなされるわよね。だから、それでいいんぢゃない?」

「そうですか。じゃあ言いますよ。まず、ゼロダ姫は、ローマによる世界征服の過程を、フランチャイズ契約のようなものとして思い描いている。本当にそうなんですかね。普通に戦争を行ってローマの軍隊が何かしらの事情で強く、連続的に勝ち続けたから領土が広がったのではないですか?次に、姫様は、あたかも、慣性の法則により、ブレーキをかけた自動車がけたたましい音を立ててなおも道路を滑りながら進むように、民主政の途絶えたローマが動力源を失ってもなお、残り火により拡大し続けたものと思っていられるようです。そして、その根拠として、帝政では諸勢力、特に中央から離れた場所の勢力が独立して動くほうが得となるまで力を持つことを考えていられる。また、民主政は為政者の恣意や暴走を防げるために、より良い政策判断が出来るし、市民が主体的に政治や社会運営に参加するために技術革新も進みやすく、文化の発展や市場の活気にも繋がるとの立場を前提にしていられる。しかし、それは本当なのですか?」

「確かに、私は、現代の政治思想の雰囲気から、かつて栄えたものの性質を逆算している節があります。しかし、だからどうだというのですか?タイムマシーンがあるわけではないのです。また、学術的に興味があるなら、大学で学び直せばいい。私は、今リカが言ったような理解でもあながち間違いではないと思っています。何しろ、圧倒的に広がった国ですよ。何か他と異なるところがあったのです。それを私は、名板貸しのような征服方法、と、高度な民主政とその残り火、に求めました。だって、その後の中世は、封建制だから、国王と諸侯との封建契約で国が定義されるんでしょ?三十年戦争の講和会議で確立された主権国家体制とは数え方が異なるでしょう。主権国家は、領域と国民、政府、外交能力辺りが要求されたと思いますが、古代の国がどのように定義されたかは専門的な歴史家でなければ分からないでしょう。聞くところによれば、封建契約すら、その内容がよく分かっていないのです。確かに、マグナ・カルタは参考になりますね。あれは封建契約の内容が高い精度で記載されているようにも思えます。それによると、土地賃貸借のような話だったと思いますが、それはもはや不動産賃貸借なので、フランチャイズよりも征服感は無いですよ。特にローマ法は自由意思を初期から比較的重視しているので、国王と貴族がほぼ対等な関係であり、どうしてその上下関係が出来たのか、については、戦争というよりも契約であったとさえ考えられるのです。故に、これをローマと属州との関係の解釈に応用すると、先の様な結論となるわけです。確かに、中央から派遣されて領地と農奴を与えられた貴族もいたでしょうが、元からその土地を仕切っていて、何らかの事情で国王と封建契約を結んだ者もいたでしょう。ローマと属州との関係は、後者に似ているのではないか、というのが私の考えです。民主政についてですが、それが良いか悪いか、というと、良いと思います。何故なら、一人で考えるより大勢で考えた方が、良い案は浮かびやすいから。政治家として社会の発展に貢献する意思も能力もある者達の才能をどれだけ生かせるかが国家運営の鍵を握るでしょう。しかし、自由の無いところでは、彼らの才能は枯れてしまう。また、自ら主張させなければ埋もれてしまう。逆に、才能の無い者に政治を担わせるわけにはいかない。その審査は政治により直に影響を受ける市民自らが行わなければならないのです。為政者の恣意により市民が基本権を侵害されることは本末転倒なのです。何故、為政者が為政者たりえるのか。それは、少なくとも市民の基本権は保護するという確約を有しているからであり、それの行えない為政者は為政者たりえないわけです。そして、それを監視し、判断するのは、市民自身をおいて他に無いのです。この基本的なことが行えているか否かだけでも、街の活気は相当異なってくるでしょう。民主政が上手く回っていれば、市民の為政者に対する、また市民相互の信頼が醸成されます。そうした信頼は生活の質を上げ、技術や文化を高めます。そうではないですか?そして、しかし、単純に国土が広くなれば、統一的な政策を民主的に決定するのは困難になるでしょう。現代のように情報技術が進んでいるわけではないですから。国を横断するなら、驢馬で数か月から時に数年も移動せねばならないような状況だったと思います。そんなところで民主政など出来るはずもなく。そこかしこの戦争で活躍した武将が各地で支援を得て力を蓄え、中央の権力を怯ませるほどになっていったと考えるのが自然でしょう。故に、民主政ローマは、民主政が耐えられる最大領土になったときに崩壊したのです。崩壊して帝政となりましたが、ローマはローマなので、諸外国には看板が高く売れたのです。それで、もう少しだけ広がりました。内部では分裂が進みましたが、中央は実質的には寧ろ、まだ民主的な運営がなされていたので、繁栄し続けました。でも、野蛮な制度も多いでしょ?内部に生じ続けた亀裂の量が閾値を超えたとき、ローマは本当に崩壊しました。崩壊して本当に分裂し、別の国になりました。それでも、まだローマの看板は、それのみで殆どの有力者を震えあがらせることが出来ました」

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