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さて。リカは、小屋を出て、その辺りを散策してみた。成程、小屋の傍には池があり、池には鴨と亀が泳いでいる。辺りで多くの小鳥が囀っている。リカが城のほうへ向かいかけたときに、頭上をアリスが通過した。リカが気配を感じて、振り返ったときには、アリスは小屋のベルを鳴らし、出てきたゼロダに招かれて小屋に入っていくところだった。リカは、今すぐに城へ行く特段の用事も無かったため、小屋に引き返した。もっとも、ゼロダとアリスがガールズトークに花を咲かせているのを察知し、しばらく辺りを徘徊してから、小屋に入った。
「マァ、でも、魚の揚げ物に千切りキャベツや玉ねぎ、トウモロコシを加えた生野菜サラダ、みたいなのが最も美味しいんですけどね」と、リカは開口一番に言った。
「揚げ物は体に悪いというのがAI含め通説らしいけど、美味しいことは確かなのよね。私も揚げ物を人より多く取っている自覚があるけど、この通り痩せているから、カロリー摂取の絶対量が問題なのかもしれないわ」とアリスが言った。
「アリスは普段から空を飛んでいるから、カロリー消費量も通常人を基準にしては駄目だと思うわ」とゼロダは言った。「そんなに皆、揚げ物が好きなら、さっきの魚も一部揚げ物にすれば良かったかしらね」
「いや、いいですよ。揚げ物にするのは手間がかかりますんで。私は、起床して活動しているときには、定食屋かスーパーで購入します。そもそも、小麦粉や油の備蓄はないでしょ?」
「市場に行けば売っていますよ」
「いいですよ」
「ところで、その恰好は何?」とアリスはリカに対して言った。「まるで、ゲームの主人公のようね。その刀で出てくる敵を蹴散らしながら、戦闘力と防御力、生命力を上げていくんでしょ?トカゲやカエルを焚火で焼いて食ったりしながら」
「そんなこと考えもしませんでした。目下、そんな良心的な敵がいないんでね。ぢゃあ何ですか?さっき小屋を出た後は誰か画面の外の人に行動を制御されていた方が良かったんですかね」
「仮にそういうゲームの中に私達がいるとしたら、リカが短時間で戻ってきたのは何故かしら。理由を説明できないのであれば、私達はゲームの中にはいない、ということになるはずよ」
「それは難題ですね。しかし、一つには、そんなゲームは面白くない、ということがあります。目的がハッキリしない。良心的な敵もいない。本編とプロローグとの境界が分かりにくい。何しろ、仮にそうであれば、さっきまでの件はプロローグでしょ?プロローグが終わってすぐに、また戻ってきて、プロローグと同じようなことをやっている。そんなのバグですよ」
「私が来た、という事件があるわよ」とアリスが言った。
「ぢゃあ、何ですか?このゲームは姉さんの謎を探求するのが目的なんですか?そんなものには誰も興味無い。だって、あれでしょ。姉さんは私の衣装を馬鹿にされましたけど、自分のほうこそダサいですよ。なんで室内で防護服を着ているんですか?確かに羽で空を飛ぶことが出来る。これは正当な謎です。しかし、探求する類の謎ではない。羽が生えているから飛べるのだ。それでお終いです。では何故羽が生えているのか。そういう個性なのだ。それでお終いです」
「どうやら、私たちはゲームの中にいるわけではなさそうね」とゼロダは言った。「仮にゲームの中にいるとしても、それは探求するほどの謎ではない。今のところ実害は無いようだから」




