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「その点について、今ちゃんはどう言ってるの?」とゼロダは問うた。
「行政訴訟が法律上の争訟に制限を加えたものかどうかについて?」
「そう」
「そんなこと話したことが無いわね。でも、今ちゃんは、私と似たようなことを言うと思うわ。何故なら、尊法意識が高いうえ、行政の制度構築についても一定の意見は持っているから」
「今ちゃんは政治哲学はやらないよね」
「今ちゃんは政治哲学をやるよ?」
「政治哲学と法哲学の区別で困ってるんだけど」
「それね。今ちゃんの行政法に対して行っているのは政治哲学よ。法哲学とは言い難い。何故なら、今ちゃんは行政の専断的行為をある程度容認する節があるでしょ?」
「そうかしらね。確かに今ちゃんは革命については否定的かもしれない。でも、革命が出来るような力を持つ者は、既に政府というべきだから、という理論構成によっているわ。今ちゃんは現実的な見方をしているだけなのよ」
「だけど、それにも関わらず、一度革命が成功したなら、もはや革命について罪には問わないと言っている。そんな日和見が法哲学において許されると思う?故に、今ちゃんは法哲学を行ってはいないのよ。革命について法的な議論を行っていないんだから」
「そうかしら。今ちゃんは一貫しているわ。革命は認められない。既存の政府を転覆させるのは革命ではない。他の勢力が新たな政府となったことによって転覆させるのだ」
「でも、それは政治哲学よね。既存の政府よりも実力を持った勢力に特有の法を探ったわけではなく、単に、既存の政府が政治的権力を他に奪い取られて消滅する様を独自の見方で述べているだけなんだから。これは、今ちゃんの尊法意識の高さ故というよりも、そういう政治思想を持っていることに起因すると思われるわ」
「言われてみればそうね」
「抑制と均衡にしてもそうよ。今ちゃんは、抑制と均衡を、実務家連中ほど重要なものとは考えていない。三権は別個の役割を有してはいるものの、一人がその内の二つを行う、といったような制度をも容認しているんぢゃないかな、と思う。けれども、それは、今ちゃんの尊法意識が高いからではなく、抑制と均衡の重要性について、そのような政治思想を有しているからなのよ。今ちゃんは為政者ではないからね」
「ふぅん。それぢゃあ、今ちゃんは政治哲学をやっているんだ」
「そういうことになるわね。私法とか刑法については法哲学しかありえないけどね」




