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グロテスクな表現があります。

魔王城まではまだ2週間ほどかかる予定だが、食糧が遂に尽きてしまった。


辺りには瘴気の影響で動物も植物も存在せず、人によく似た容貌で知能の高い人語を話す魔物しか生息しなくなっていた。


更に、魔物は倒すとその体はとなって消え、魔石といくばくかの素材になりそうなものしか残らないのである。


このままでは魔王城に着くまでに餓死してしまう。


極限状態に追い込まれた戦士は、人型の魔物を生きたまま捕え、その肉を喰らうと言う信じ難い行動に出た。


人型の魔物を食べることに抵抗のあるパーティーメンバーは嫌悪を示したが、お前らは魔王城に着く前に死にたいのか?と言う戦士の言葉で魔物肉を食べる決意を固めた。


だがしかし、流石に生肉を喰らう気にはなれなかった勇者達は、生け捕りにした魔物が舌を噛んで死なないように、猿轡を噛ませて棒にきつく縛り付けた上で、太ももやふくらはぎなど、致命傷にはならない場所の肉を削いでは焚き火で焼いて食べた。


自分が生きたまま食べられている所を、涙を流し、苦悶の表情でくぐもった雄叫びを上げながら見ていることしか出来ない魔物が不憫に思えるほどの光景である。


リュシーは生きるためと割り切って、必死で咀嚼して飲み込んだ。


吐き出しそうになるのを必死でこらえ、なんとか自らの血肉にしようとした。


アナは幼少期まともに食事を取った記憶が無いので、食べられるだけ何でも有難いとなんの躊躇いもなく大量の肉をもりもりと食べた。


レオンはもはやポーションで半ば壊れかけているので、理性なんて肉を一口食べたら消えてしまった。


満腹になるためにもう1匹狩りに行こうと言い出す始末だ。


問題はディアだ。


日本で女子高生をしていた記憶が強い彼女は、人の形をした生き物の肉を食べるなんてとてもでは無いが受け入れられなかったのだ。


目を瞑って鼻をつまんで丸呑みにしようとしたが、生理的な嫌悪感から魔物の肉を吐き出してしまった。


「こんなもの人間が食べるものじゃないわ!」


そう泣きながらメンバーに訴えるが、生きて魔王城にたどり着くには必要なことなのだ。


ディアの目につかない所で、戦士の手により魔物の肉は干し肉へと加工され、町で買った最後の残りだと言って少量づつ分け与えられた。


ディアは本当に気付いていないのか、気付いているけど現実逃避をしているのか、その干し肉をたくさんの水と一緒に飲んだ。


魔物を捉えるのは主にシーフのアナの役目であった。


致命傷は与えないけれども逃げ出すことも出来ないような罠をいくつも設置し、安定して魔物の肉を手に入れていた。


そんなある日のことである。


罠に大人の魔物がかかっていた。これはいつもの事だ。


だが、その罠を解除しようと奮闘する、その魔物の子供も一緒に捕らえられたのだ。


子供の肉は柔らかくて美味そうだ、と戦士と勇者は思った。


しかし、まずは落とし穴にかかって、中にある木の杭で体を貫かれている母親の方を調理してしまわねば失血死してしまうだろう、と判断した。


勇者と戦士は母親の魔物を罠から引きずりあげると、適当に止血だけしてキャンプへと子供ごと連れ帰った。


「お母さんをどうするの!?お母さんを離して!!!助けて!!!」


叫ぶ子供は適当な木に縛り付け、さっさと母親の処理を始めていく。


太い棒に運ばれていく豚のような格好で吊るし、口に猿轡を咬ませる。


そして戦士とレオンが交互に太ももの肉を抉り、削ぎ、木の枝に刺して焼いていく。


母親は大きく目を見開いて痛みに悶絶するが、戦士に


「少しでも長くあの子供を生かしておきたいなら暴れるのは止めな」


と言われて、必死で声を抑えて耐え続けていた。


魔物を殺さないで食べられる部位は少ない。


太ももとふくらはぎの肉をきつく止血しながら取ったら、後はほぼ廃棄である。


が、今日はちょうどこの母親の下腹部に穴が空いていることに目をつけた戦士が、可食部を削ぎ落とした後で腹の傷をナイフで割いて広げた。


「どうじでごんなごどずるの!?!?おがぁざんをがえぜぇぇえぇえ!!!!」


一部始終を見せつけられていた子供がひときわ大きな声で叫んだ時、レオンはポーション切れの幻覚を見ていた。


アナを貶めたディアと魔物の子供の姿が重なり、思い切り平手打ちをしてしまった。


「おまえがあんなことをしなければ、おまえがあんな風に擦り寄ってこなければ、俺は、俺は!!!!」


あまりにも身勝手で理不尽な八つ当たりのとばっちりを受けた子供は、鼻血を流し左頬を真っ赤に腫れさせていた。


目の周りは青く変色し、左耳の鼓膜が破れてぐらぐらと視界が回る。


切れて血まみれの口の中には、歯が数本転がっていた。


更に泣きわめくかと思いきや、脳震盪を起こしたのかそのままぐったりと動かなくなったのであった。


リュシーが慌ててレオンに駆け寄り、濃く煮出したポーションを飲ませたら落ち着いたようであった。


ディアはそのさまを見て、遠くない未来自分に起こるであろう悲劇を思い浮かべ、


「ごめんなさい、ごべんなざいぃいぃい!!!」


と、うずくまって泣き叫び始めてしまった。


アナは、そんなディアの頭を優しく撫でる。


「大丈夫よディア、私は本当に穢れた存在だから。良いのよ、本当のことしかあなたは言っていないもの。もしその時がきたら、私もリュシーも貴女を守るわ。」


そう約束して、ディアの震えが治まるまで背中を撫で続けた。


戦士は黙々と母親の腹から腸を抜き出していく。


人間ならばショック死してもおかしくない程の激痛だが、魔物は人間よりも体が丈夫なため、死ぬことも出来ないでいた。


しばらくは絶望に満ちた顔で自分から引きずり出される臓物を眺めていた母親だが、急に白目を剥いて口から泡を吐いて痙攣し始めた。


戦士はそろそろ潮時かと取り出した腸をナイフで切り離すと、川に腸を洗いに行った。


「レオン、今のうちに剥げるところ全部剥いでおいてくれ」


と言い残したので、レオンは二の腕や脇腹の肉を剥いでいく。


尻の肉を削ぎ落とし、胸の肉を切り落としている途中で母親の姿は黒い塵となって消えてしまった。


だが、まだ子供が居るから数日は大丈夫だろう。


戦士が戻ると、レオンは叩いたクズ肉を洗った腸に詰めていく。その途中で子供が目を覚ました。


「お母さんは!?ねぇ、お母さんはどうしたの!?無事だよね!?ねぇ!ねぇ!!!」


レオンは母親が死んだ時に残した魔石を子供の方に向かって投げた。


足元にある魔石が誰のものかを理解した子供は


「お゛ま゛え゛ら゛全員ぶち゛ごろじでや゛るう゛ぅうぅううう!!!」


と物凄い形相で暴れ始めたが、勇者パーティーにかかればこんな子供はひとひねりである。


騒ぐ口に猿轡をはめ、今度は子供の解体作業へと入る。


「子供の肉は柔らかいから今日食べることにして、母親の方は保存食用に加工しようぜ」


「そうだな、腸詰も出来たし、思いのほか死なずに沢山の肉を残してくれて助かったよ。やっぱり子供が心配で死ねなかったのかな?」


「それならこれからは子連れの魔物を狙った方が効率がよくなるな!」


等と信じられない内容の軽口を叩き、淡々と解体作業の準備を進める戦士と勇者。


アナは弱肉強食の中生きてきたから何とも思わなかったが、リュシーは不快そうに眉をしかめていた。


ディアは今まで食べていた干し肉が魔物の肉だったことに気が付き、込み上げる吐き気を抑えることが出来ずにその場で胃液を吐き出した。


このままディアが弱りきってしまったら困ると考えたアナは、


「貴女を辱めて穢し、薬物中毒にした連中の仲間よ?憎くないの?そんなヤツら、人間と同じ姿かたちをしていても、家畜にも劣る下劣な存在だと思わない?」


アナの言葉は、慰めなどではなく心からの本心であった。


幼い頃から愛情を知らずに育ち、誰かに利用され、穢され搾取されて生きてきた彼女は、本気でほぼ全ての人間に対してそう考えていたのだ。


その言葉に、ディアの瞳が一瞬だけ光を取り戻し、そしてまた今度はさらに深い闇へと沈んだ。


「そうよ...あんな奴ら、見た目が人間と似ているだけで、中身は畜生にも劣る下劣な存在だわ。私は何を悩んでいたのかしら...」


そう呟くと今まさに子供の解体をし始めようとしている戦士とレオンのそばに近付いた。


二人は「子供は可哀想だから逃がして」なんてことを言い出すのではないかと一瞬警戒したが、どうやら様子がおかしい。


「それ、貸して」


そう言って戦士からナイフを受け取ると、いちばん柔らかそうなおしりの肉を削ぎ落とし始めた。


「柔らかい新鮮なお肉...どうして人間と同じだなんて考えてしまっていたのかしら?死んだら体も残らない、下劣で低俗な種族なのに。」


片側の尻肉を削ぎ落としたディアは、戦士にナイフを返すと焚き火で肉を焼き始めた。


こんがりと焼けた匂いは、とても食欲をそそる。したたる血ですら甘く感じた。


「アナ、こっちに来て。お礼に貴女にもいちばん美味しいところを食べさせてあげる。」


ディアの変貌ぶりに全員驚いたが、これでディアも弱ることなく魔王城までたどり着くことが出来るだろう。


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