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22.勇者は、説明する


彼らが尋ねてきた時、俺はお嬢様にまだ床上げが許されていなかったので、申し訳ないが、俺の部屋に集まってもらうことになってしまった。


王子様もいるのに……いいのだろうか?


やはり、王子は使用人部屋を珍しそうに見回していた。

だが、俺は言いたい。この屋敷は特別に使用人部屋が素晴らしいと!部屋の広さだけじゃない。窓も大きく、開放感があり、何より個室なのだ。ハッキリ言って凄いんだ!


わかんないよね。うん。仕方ない。



第二王子は最初にお嬢様に深深と頭を下げた。


「ランスロットを無事にあなたの元に戻すと言う約束を守れなかった事、誠に申し訳なかった。」

「王子殿下、それは、もういいです。ランスロットも無理をし過ぎたと言っていましたから。」

「そして、王太子殿下を救ってくれてありがとう。」

「それについて、ランスロットから報告させて頂くことがございます。」

「それを聞きたくて、参った。教えてくれ。」

「はい。ランスロット、お願いね。」

「はい。お嬢様。」



お嬢様は、俺の話を全て聞いてから、質問をして欲しいと伝えてから、俺に話すように促した。



王太子が蓄積型毒の中毒だったこと。その毒のせいで、内蔵が壊死仕掛けていること。そして、王太子がまだ完治していなくて治療が必要なこと。

俺は順を追って説明した。


王子もコーディも頷きながら、話を聞いていた。


「王太子の残りの治療は、ランスロット以外の医師でもできるものだろうか?」

「壊死した箇所を再生しなければならないので、難しいと思います。体内の毒は消していますが、自然治癒できる程、回復していらっしゃいません。」

「そうか。マリア嬢、もう暫く、ランスロットの力を借りたいのだが、いいだろうか?」

「分かっています。それで、王子殿下、今回の王太子の急な回復について、王宮では、どのように言われているのでしょうか?まさかとは思いますが、ランスロットが目をつけられてはいませんか?」

「その心配は今の所は無いと思う。ただ、王太子殿下が精力的に原因究明に動いておられるので、そちらが心配だ。どうランスロットの事を隠したまま、残りの治療をするかだが……。」


そうだよな。


「ランスロット、離れた場所から、こう、バーッと治癒をかけることはできないか?」


思わず、ため息が出る。コーディ、お前、大雑把。


「怪我なら、それもいいでしょうね。その代わり、その辺りにいる人全員に効果が出てしまいますよ。」

「どういう事だ?」

「王太子の事を考えれば、治癒は強めにかけますよね?」

「そうだな?」

「その魔法範囲にいる人は、古傷が治り、腰痛が消え、目が良くなってメガネがいらなくなります。どう考えても怪しい現象だと誰もが思うのでは?」

「グッ……」


王子は、おおっと歓声をあげているが、俺と一緒で、お嬢様は二人を冷たい目で見つめていた。

こいつら、いい加減にしろよ。俺が、どんだけ魔法使わないように我慢してきたと思ってるんだ!


「うーん。どうしようか。」


王子は腕組みをして悩んでいる。


「そう言えば、今回はどうやって王太子に近づいて治療したんだ?私は同じ部屋にいたが、ランスロットの姿は見えなかった。でも、近くにいたんだろう?」

「そうですが、まだ、魔力が回復していないので、暫くは同じ方法は取れません。やり方は、機密事項なので、お話するのは拒否させて頂きます。」

「えー?聞きたいんだけど。」

「嫌です。」


体から精神を離せるなんて聞いたら、何を依頼されるか分からない。絶対に嫌だ!



結局、王太子を王子様ズに加え、秘密共有を前提に治癒する方向に持って行く事になった。

ただ、問題は、王太子に誰が毒を盛っていたかと言う点だ。

せっかく治癒しても、また毒が盛られたら意味が無い。


「そう言えば、ランスロットは毒の匂いを感じ取る能力があると、言ってたね。」


うん。お嬢様が俺を庇ってそんな風に言ってくださった事があったな。


「はい。ですが、全ての毒ではありません。今回、王太子殿下に使われた毒は無味無臭。私も分からないと思います。」


やばいやばい!今度はなんだよ!お嬢様、助けて!


「私のランスロットに毒味役をさせるのはやめて下さいね。」


お嬢様の微笑みが、氷点下なのに、王子とコーディは動じない。こいつらの神経はオリハルコンか?


とりあえず、その日の会合はお開きになり、次、一週間後にコーディの屋敷で再度話をする事になった。



俺は、この世界に来て、ランスロットがあまりにも美形だったので、忘れていた能力をついさっき思い出した。

勇者と讃えられるようになった俺は、外出すれば、人々に勇者と言って取り巻かれ、心安らぐ時間が全く取れなくなってしまった。

そのせいなのか、魔王を倒して、その日魔力を自分の体に取り込んだせいなのか、分からないが、魔王を倒す前にはなかった能力を幾つか目覚めさせていた。

そのうちの一つがこれだ。


【メタモルフォーゼ】


変身能力だ。人以外には変身できないが、顔つきから、体つきまで変えることができ、全くの別人になる事ができる。


この世界では、俺はランスロット以外になりたいとは、全く思わないので、忘れていたが、王子達が帰り、一人になった布団の中で、試してみたら、以前同様使える事がわかった。


これを思い出せていたら、あの糞女から逃げるのも楽だったろうに……。



俺は身支度を整えると、お嬢様の部屋に向かった。


「ランスロット、まだ起きては駄目といったのに。」

「お嬢様にご相談があって参りました。」


お嬢様は俺の顔をじっと見ると、エンマとヤールを部屋から下がらせた。


「聞くわ。」

「私は、別人に変身する能力を持っていました。」

「はい?」

「お嬢様にお仕えする毎日が楽しくて、すっかり忘れていたのです。」

「そうなのね。それで、変身とは?」

「お見せしてもよろしいでしょうか?」

「そうね、ヤールになれる?」

「はい。身長が違うので、少し服がぶかぶかになりますが。」

「見せてちょうだい。ランスロット。」


俺の体から、淡い光が溢れ、体の輪郭が曖昧になっていく。


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