↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/29

19.勇者は、友情を見守る


翌日、クラス全員が揃う時間を見計らって、制服を着せたタチアナを連れたお嬢様が部屋に入ると、ざわめきが広がった。

それはそうだろう。

タチアナとリーシアは本当に瓜二つだから。


そうそう、タチアナに着せた制服は、イアンがどこからか調達してくれたものだ。既に彼は学園にもすり代わりの件を報告してくれているのだろう。


「皆さんにご紹介します。彼女こそ、私達のクラスメイトになる筈であった、タチアナさんです。」

「クラウド様、では、彼女の席に着いている方は、どなたなのですか?」

「タチアナさんの双子の姉妹のリーシアさんです。」


また、驚きの声が、漣のように広がる。


ラグレスが仕える、モンゴール公爵嫡男が、頷きながら、一歩前に出て、


「では、本来、学園に通う権利のある者が、その席に座るべきだ。ラグレス。」


意を汲んだラグレスがリーシアの手を取って立たせようとする。


「違います!その女がリーシアです。マリアさんは間違ってます!」


お嬢様を名前呼びの上に、さん付け!!巫山戯てるのか?この馬鹿女。


「リーシア、駄目です!クラウド様をお名前で呼ぶなんて!許されないわ!!」


タチアナが悲鳴のように叫ぶが、リーシアは不貞腐れるだけだ。


「この学園は身分差別をしない場所なんです。そんな事も知らない、お前こそ、リーシアで間違いないわ!」

「リーシア!」


イアンがニコニコと笑いながら、紙を持ってきた。

「簡単な方法があります。これは、去年の入学試験から抜粋した問題です。特待生になった程の優秀なタチアナさんなら、苦もなく解けるでしょう。我々の目の前で問題を解いて頂きましょう。」

「では、私の席をタチアナさんにお貸ししますわ。」


お嬢様が、自分の席を指さして、タチアナに頷いた。


「ありがとうございます。」


タチアナはイアンから紙を受け取ると、持っていた鞄から、ペンを取り出した。

偽物タチアナであるリーシアは顔を青ざめさせて固まっている。当然だ。あの女に解ける問題では無いだろう。


沈黙の中、タチアナが走らせるペンの音だけが、聞こえる。


「解けました。」

「拝見しましょう。うん。間違いありません。」


一斉にリーシアに全員の注目が集まる。誰かが言葉を発する前に、学園の警備がリーシアを連れて部屋を出て行った。

リーシアは、試験をどうやって誤魔化すつもりだったんだろう。何も考えてなかったか、それまでに男を捕まえるつもりだったのだろう。それにしては王子は高望みすぎたな。


ラグレスがタチアナの手を取って、彼女の席に案内する。

第二王子の拍手に全員の拍手が重なり、タチアナは涙を流しながら、頭を下げ続けた。



お嬢様は、自ら、タチアナの遅れた勉強の相手を名乗り出て、毎日二人で授業後、図書館で過ごすようになった。


タチアナは優しい性格で、お嬢様は、彼女に身分の差を超えた友情を感じているようだ。

二人でいる姿は、とても親しげで、時折混ざる笑い声に、お嬢様の楽しげな様子が伝わってくる。



「ランスロット、今回の件は、助かった。」

「イアン。」

「まさか、そっくりな双子が入れ替わっていたとは思わなかったよ。第二王子がそろそろ限界のようだったので、学園に申し出て彼女を退学にしようとしたところだった。」

「お嬢様が気にされていてね。特待生にしては態度がおかしいと。」

「そうだね。ただ、我々は平民なら、あんなものかと言う気持ちがあったからね。」

「タチアナは大丈夫。きちんと立場を弁えて、一線を画す事ができる人だから。」

「そう思う。」



勉強熱心なタチアナは、あっという間に勉強についていけるようになった。それでも、二人の図書館での勉強会は続いている。この勉強には俺も参加して、協力しているのは言うまでもない。


初めての試験の結果が、この二人の勉強の成果を示すことになった。

学年一位は、お嬢様。二位がタチアナ。


少しづつ、お嬢様と、タチアナに近づく生徒が増えていく。

図書館での勉強会にも参加する者が現れた。モンゴール様だ。


「失礼します。私も、学びの席に加えて頂いてもよろしいですか?」

「もちろんです。モンゴール様。」

「ありがとうございます。クラウド様。」

「マリアで、良いですわ。タチアナさんにもそのように呼んで貰っています。」

「では、私の事もコーディと。」

「はい。コーディ様。」


コーディ・モンゴール様は武の家門らしく、武術は一通り得意とされている。だが、座学の成績も悪くなく、先日の試験の結果は七位。


俺と、ラグレスは、それぞれの主の後ろに立って、勉強の様子を見ている。時折、二人にも質問があるので、答えているが、そのうち、俺達の出番は無くなりそうだと思う。



でも、俺の出番はラグレスとは違う場所にある。


手芸だ。


お嬢様は学園の部活に手芸部を選ばれた。現在、俺はその部の、非正規指導者の立場にある。

俺の刺繍やレース編みを見た学園の教授にお嬢様を通して、依頼があったのだ。

授業はさすがにできないが、部活指導をとの事。


お陰で、俺は一躍学園で知らない者がなくなってしまった。

静かに三年間を魔法を使わずに過ごす予定だったのに。うっかり見られでもしたら、速攻監禁ルートだ。


大丈夫だろうか、俺。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。