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17.勇者は、授業を受ける


学園の授業が始まり、俺はお嬢様とともに授業を受けている。

しかり、この見学はなかなか過酷だった。学園側の見学をさせたくないと言う意図が丸見えに成程に。

道理で、見学者が少ないはずだ。

しかし、教室内で、お嬢様の護衛も務められると思えば、どんな我慢もできると言うものだ。


見学者に与えられるのは椅子ひとつ。姿勢を崩すこと無く、じっと座り続けなければならない。当然だが、ソファではなく、椅子なので、座り心地もよろしくない。


俺は結界魔法を利用して、椅子にクッションのような座り心地と、背もたれ、そして、体を包み込むリクライニング効果をうみだした。

見た目は椅子に真っ直ぐ座っているだけだが、体のどこにも力を入れること無くラグジュアリーな気分を味わえる。


注意すべきは眠気だ。


それも俺は対策した。右手の指先に小さな突起を用意し、それを押すことで、微弱電気が流れるようになっている。

これで、居眠りもさようなら。

この微弱電気が筋肉を刺激するので、座ったままでも、筋肉が強ばることも無い。


授業三日目、見学仲間の二人の顔に疲れが出てきたのを俺は見逃さない。


「お疲れでいらっしゃいますか?」

「ええ、そうですね。まだ、この椅子に慣れないようです。あなたは、随分お元気そうで、羨ましい限りです。」


王子の側近がそっと笑顔を向けてくる。公爵嫡男側近も頷いている。

見学仲間を助けたい気持半分と、今後、主人達の関係を友好にしたい気持半分で、俺は彼らに提案してみた。


「よろしければ、私が使う魔法で、少しお体が楽になるのではと思うのですが、いかがでしょうか?」



俺の結界魔法は、優秀だった。彼らはもう手放せなくなってしまったのだ。

結界は椅子にかけてあるので、座ればその居心地の良さを認識できる。

そして、私達は、気心のしれた友人となるまでに大した日数は、必要としなかった。


王子側近はイアン、公爵嫡男側近はラグレス。二人は俺と殆ど年が離れていない。

考えてみれば、俺にとっても初めての友達かもしれない。

カレルやアボットは執事仲間だが、友達と呼べる程の気安さは無い。



今の時間は剣術の見学だ。この見学は楽なので、俺たちにとっては休憩時間に近いものがある。

練習場の木の下で座っていてもいいし、立って木に持たれていてもいい。


「なあ、ランスロット。」

「なんだ?イアン。」


お嬢様の剣筋チェックに余念のない俺は、顔も向けずに返事をした。彼らはその程度の失礼な態度は気にしない奴らだ。


「お前、ずっと領地にいたのか?」

「そうだけど?」

「だからだな。」


ラグレスがうんうんと頷く声も聞こえる。え?俺、何か変なの?


「なんで?どこかマナーが間違ってたか?」

「そういう意味じゃない。」

「じゃあ、何?」


「私も、ラグレスも、凄く感謝しているから、口外するつもりは無いんだ。それはわかって欲しい。」

「うん?」

「お前に施して貰っている、見学椅子の結界魔法だが、他の人間に言わない方がいい。」

「どうして?」

「あんな結界魔法は見た事が無い。王家の魔法塔の人間に知られれば、お前は塔に監禁されかねない。」

「ええ?!そうなのか?」


驚いた。あの程度で、この世界では監禁されるのか?


「やっぱり驚いてるな。イアンの言う通りだ。」

「ラグレス、あの程度で?本当に?」

「お前、今、あの程度って言ったな。」

「あ。」

「イアン、どうする?こいつ、不味すぎ。多分、これから先、無警戒にやらかしそうだ。」

「そうだろうね。どうしたものかなぁ。」


いや、待って。不味すぎって言われても、どうすれば良いんだよ。


「お前がどこまで魔法が使えるか、聞いてしまったら、私達も問い詰められた時、誤魔化しきれないし、とりあえず、魔法は使わずに暮らせないかな。」

「無意識に使う事はあるかも。」

「だからぁ、意識して使うなって言ってんの。」

「ううん。」

「じゃあ、ランスロットはどういう時に魔法を使ってるんだ?」

「最近は、あまり使ってないかもしれない。結界魔法位かな?」

「それなら、我慢できるな?」

「多分?」

「危機感ねぇ。」


二人は真剣に俺の事を心配してくれている。でもなぁ、魔法は俺にとって、別に特別なものじゃない。呼吸するのと変わらない。

もし、怪我人が出れば、治癒魔法は絶対に使ってしまいそうだ。


「なあ、治癒魔法って、一般的?」

「一般的な訳無いだろ?まあ、でも、大きな怪我の治療には使われるな。」

「そうだね。ただ、使える人間が少ないから、教会預りではあるかな。」


やばい。教会預かりになんかなったら、お嬢様のそばに居られなくなる。

これは使っちゃいけないやつだ。

でも、ちょっと、気になるんだが。


「治癒魔法って、病気は治せないのか?」


恐る恐る聞いてみる。俺は蘇生はできないが、病気も治せるし、なんなら再生もバッチりなんだが。


「それは当然って、……まさか!」

「わーわー!イアン、俺は聞きたくないぞ!その先を言うな!!」

「ごめん。ラグレス。もう言わない。だから、理解しろよ。ランスロット。」

「あ、ああ。」


うわっ!やばい!! どうか、お嬢様が、健やかでありますように。はぁ、剣術止めて頂きたくなってきた。



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