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16.勇者は、学園に行く


三日後、カレルを連れたアーリア夫人が屋敷に現れ、あっという間に家令達の断罪が行われた。


家令と侍女長は財産没収の上、強制労働所へ。黒幕のナハト男爵夫人は離縁後、修道院へ送られた。

そして、王都屋敷の実権はカレルに託されることになり、カレルはお嬢様の側近兼家令となったのだった。



「マリア、迷惑をかけたわね。でも、よくやってくれました。旦那様も褒めておいででしたよ。」

「お義母様、ありがとうございます。全てはお義母様の采配のおかげですわ。」

「ほほほ。」


お嬢様、強くなられたな。感無量だ。


「ランスロット、これからもマリアの為に、身を粉にして仕えるように。」

「はい。」


「では、私は領地に戻ります。」


アーリア夫人の後ろに影のように漂っていた人が、彼女に従うように着いていく。

あ、あれだ、ナハト男爵。存在感うっす!



「皆様、お疲れ様でした。」


カレルがお茶を運んでくれた。少し柑橘系のさっぱりとしたお茶が、清涼感を与えてくれる。


「カレル、良くやってくれました。」

「お嬢様のご指示通りに動いただけでございます。」

「ふふっ、でも、お義母様を動かすとは。私はお父様が動かれるかと思っていたのに。」

「身内の事はご自分で解決したいご気性ですから。厳しく対処なされば、ご自分の身には被害が及びませんからね。」

「そうね。お父様はそのようにされるでしょう。」

「あの報告書はとても良い出来でした。」

「侍女のエンマがしてくれました。」

「それは素晴らしい。エンマ、これからもよろしくお願いします。」

「は、はい。」


「ランスロット、あの帳簿を見つけたのはあなただそうですね?」

「はい。カレルさん。」

「また無理をしたのではありませんか?また顔色が優れない。お嬢様にご心配をかけてはいけませんよ。」

「はい。反省しております。」

「そうですね。」



今まで家令と侍女長のせいで、三歩進んでは三歩戻っていた使用人の教育も、これによって大幅に進むことになる。


彼らも学んだわけだ。逆らい続ければ、次は自分の番だとね。


これでこの屋敷も住みやすくなる。



1ヶ月後、お嬢様は屋敷を出て、学園の寮に移られた。

これから三年間に学生生活が始まる。お嬢様は、どんなご学友と出会われるのだろうか。


俺は学校に行ったことがない。ランスロットも父親の指導の元、お嬢様にお仕えしていて、学校には行かなかった。


初めての学園。

お嬢様よりも俺の方が浮かれているようだ。


「ランスロット、学園は楽しい?」

「はい。」

「三年間、楽しみましょうね。」



学園の授業は座学と実践。実践は武術と魔法だけでなく、マナーと社交術。女子生徒は、それに手芸が加わる。

二年以上になると、更に専門により、内容にも変化がある。

騎士クラス、魔法士クラス、領地運営クラス等、幾つかのクラスに別れ、専門的な教育を受ける。


お嬢様のように、女性でも領主となる地位にある方は少なくない。彼女達の多くは領地運営クラスを選択することが多い。

中には、そちらで学ぶことを家庭教師に任せ、騎士クラスで武芸を磨くものも少なくない。


学生は全て貴族で、学内でと地位は平等との考え方にはなっているが、住まいである寮は、その対象ではない。

高位貴族と下位貴族とでは扱いが異なる。

部屋の大きさや調度しかり、使用人の人数しかり、である。


お嬢様は侯爵家なので、三人まで認められている。公爵家は五人。王家は十人。

伯爵家は一人認められているが、子爵家、男爵家は使用人を連れてくるのは認められていない。更に男爵家になると、部屋も相部屋となる。


授業についても、伯爵家以上は教室の後ろで、一人まで見学を許されるが、一切の発言は認められていない。

壁画のような扱いだ。これは学生が寮内で復習をする際の手助けとして設けられた処置だという。


なので、一度でも居眠りをすれば、次からは見学を許されなくなる。その為、それが守れる人員を用意出来ない家は、最初から見学辞退を学園に申し入れる事になる。


俺は、当然、見学を申し込んだ。


だって、俺も勉強ができるんだぞ。見学中はノートもとってはいけない、体を動かしてもいけないと言われても、それが何だと言うんだ。

お嬢様には無理をしなくても良いと言われたが、無理じゃない。喜んでなのだ。



授業が始まってみたら、見学は俺を入れて、たったの三人だった。


一学年は入学時の実力で4つのクラスに別れる。入学前から家庭教師に勉強を教わっていた高位貴族は、どうしても優位になる。


稀に元の出来が悪すぎて、優位になれない者もいるが。


1クラスは20人。この1組は第2王子、公爵家2名、侯爵家4名、伯爵家10名、子爵家2名、そして、今年から取り入れられた 、平民特待生1名と、なっている。


見学者は王子側近、公爵嫡男側近、そして俺だけ。


彼らが最も気にするのは、平民特待生の挙動だ。貴族としてのマナーを身につけていない平民が、自分の主に対して、どのような態度をとるのかを気にかけている。

場合によっては、排除も辞さないつもりのようだ。


お嬢様は、あの平民の女子生徒とどのように接触されるのだろうかと思うと興味深い。


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