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11.勇者は、側近を雇う


俺が今回倒れた理由はわかった。


人間の魂はその魂を入れる器の中に収められている。産まれてから魂と共に、器はその魂に相応しい形へと変化を遂げる。

俺が赤ん坊から転生していれば、今回のようなことは起こりえなかった。


ランスロットの魂の器は、小心で、心優しいランスロットの形をしていた。そこに突然、俺の魂が入り込んでしまった。

器に対して、俺の魂は荒々しく、傍若無人だ。魂の器は、俺の魂を受け止めきれなくなり、傷ついてしまった。

このままでは、魂が支えられなくなり、俺も生きていけなくなるところだった。


治癒魔法は怪我や病気を直せるが、魂の器は修復できない。

だから、器に残るランスロットの自我にお願いして、受け入れて貰うしかない。


今は、少しづつ受け入れてくれている。


だが、俺のこの性格では、お嬢様にも良くない影響を与える可能性に、俺は気づいてしまった。


「カレル、ルドルフ様の執事を辞したら、マリアお嬢様の側近になって貰えないだろうか?」

「何を言ってるんだ?」

「俺は、貴族の習性に疎い。勉強はしているが、あなたや、アラン様の執事のティムには遠く及ばない。」

「大丈夫だ。まだ三年以上あるじゃないか。」

「いや、もうあと三年しか無い。頼む。お嬢様を助けてくれ。」

「……少し考えさせて貰っても良いだろうか?」

「もちろん。」

「お役を辞す前には返事をする。」

「わかった。」

「とりあえず、今年のお嬢様の誕生日は私に任せて休んでくれ。」

「すまない。感謝する。」


カレルは、ゆっくり頷くと、部屋を出ていった。



足りないものは、補えば良い。

勇者だった時の俺は、人に頼った事などなかった。ひたすら自分の力だけを信じて突っ走った。あれはあれで良かったと思っていた。一人で魔王に向かえば、仲間を死なすことも無い。

治癒から、攻撃まで、一人でこなした。


でも、もし、協力できる人がいれば、俺の人生は違っただろうか?



結局、なかなか体調不良はすぐには回復せず、俺は初のお嬢様誕生日を共に祝って差し上げることが、できなかった。


時々、エンマやヤールが様子を見に来てくれたし、カレルは毎日進行具合を教えに来てくれた。

話を聞くだけで、カレルの手際の良さがよくわかる。

俺ではカレルにかなわないなぁ。


でも、お嬢様にお仕えする立場は譲れないから、やっぱり、カレルは側近がいい。


お嬢様、元気になったら、朝から晩までお仕えしますからね!




年末に戻られた旦那様に、カレルはお役辞退を申し出た。


旦那様も覚悟はしていたのだろう。マリアお嬢様の側近へと言う話も快く同意されたそうだ。


尚、ルドルフ様は、後継者候補から外された。旦那様の執事が、彼の借金と無断借用を調べあげていたらしい。これにはカレルも一枚噛んでいた。

今では、厳しい孤島の修道院に送り込まれ、朝から晩まで、厳しい修道士として清貧な生活を送らされているそうだ。


アーリア夫人が泣いて訴えたが、許されなかったらしい。


いや、もう、ほんと、頑張ってくださいね。




「マリアお嬢様、改めまして、本日より、側近としてお仕え致します、カレルでございます。」

「カレル、よろしくお願いします。」

「力及ぶ限り、マリアお嬢様のお力になれますよう務めさせて頂きます。」


カレルはランスロットとは違うタイプの美形だ。

ウブイ女の子が、お兄様〜って腕を絡めたくなるような、包み込むような包容力のある美形。

この世界、もしかして、美形でないと、執事になれないのだろうか?美形で優秀って、どんだけ狭い門なんだよ!


そういえば、護衛のヤールも、最近スクスク育ってきて、ただのクソガキから、最近では侍女のお姉さま方から、笑顔が可愛いだの、弟にしたいだの言われて人気だそうだ。


いよいよお嬢様の男を見る目のハードルが上がってしまわないだろうか?俺は心配でならないですよ。



ヤールと言えば、先日、騎士団長から、実力テストを受けるように言われた。護衛を務めるなら、ある程度の基準はあるらしく、一度テストでその実力を測りたいとの申し入れだった。


「ランスロットさん、俺、本気でやって良いの?」

「ダメに決まってるだろ?」

「加減が難しいんだけど。」

「練習場をこっそり見てこい。騎士の実力を見て、標準を覚えてくるんだ。」

「……見てきたんだけど、あんなに弱くて良いの?」


確かに。俺も思った。弱いんだよね。


「わかった。団長にだけは負けろ。後は勝っても良い。」

「やった!ありがとう。」

「ただし、手心は加えろよ。」

「努力はする。」


しないな、こいつ、絶対に手心加える気無いだろう。

ウキウキと立ち去っていく後ろ姿を思わず睨んでしまった。


どうしよう。俺も行って、こっそり結界張ったり、防御力上昇かけちゃう?

旦那様まで立ち会う事になってしまって……どうすりゃ良いんだよ!


結果、ヤールはかなり実力を上手に隠してくれて、俺を安心させてくれた。団長にも上手く競り負け、騎士団員には8割勝った。だが、気配りは疲れたらしい。


「ランスロットさん。体がムズムズする。俺、夜まで待てないかも。ねぇ相手してよ!」


このセリフを聞いた一部の侍女に、俺はしばらく怪しい目付きで見られるようになった。くっそぉ!




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