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#11

「そなたにやってもらうのは、クローサーとの交渉係ではない。そなたには……このブレンダの王になってもらう」

 …………。

 ……はい?

 何言ってんだ、この人。

 陛下の言うことを、まるで理解できないあたし。

 あたしが?

 ブレンダの?

 王?

 …………。

 あたしというのは、エマ・ディアナスで。

 ブレンダというのは、この国、魔導大国ブレンダで。

 王というのは、国で一番偉い人だ。

 つまり。

 あたし、エマ・ディアナスが、この魔導大国ブレンダの、一番偉い人に、なる?

 …………。

 ……そ、そんな、バカなぁ!!


 がばっ! と、身体を起こす。全身汗ぐっしょり。パジャマが肌に吸いついて、気持ち悪い。

 ……って、ここ、どこだ?

 あたりを見回す。見慣れたベッドに、見慣れたテーブルとイス。見慣れた部屋だ。あたしの部屋。窓からカーテン越しに眩しい光が差し込み、すぐそばで小鳥がさえずっている。気持ち良さそうな朝。

 寝ぼけて鈍ってた頭が、ようやく動き出す。

 ――今のは、夢?

 …………。

 ま、そりゃそうだ。

 あたしが王様なんて、バカげてるよ。普段グータラしてるだけのあたしが、陛下みたいに忙しく城中駆け回るなんて、ないない。ああ。変な夢見たなぁ。ま、夢で良かった。あたしはベッドから起きると、寝汗でぐっしょりのパジャマを脱ぎ、シャワーを浴び、いつもの服に着替えた。

 トントン。ノックの音。アメリアだろう。部屋に入ってもらう。

「おはようございます、女王様。よく眠れましたか?」

「ん。ぐっすり眠れたよ。変な夢は見たけど、気持ちのいい朝だよ」

「それは良かったです。今日もいい天気ですからね」

「そうだね」カーテンを開ける。眩しい朝日が部屋中に差し込む。「うん。絶好のお洗濯日和だね」

 見上げた空には雲一つ見当たらない。

 よし、今日はお洗濯しまくっちゃおう。お洋服におふとんにシーツにカーテンも、全部全部綺麗にして、そして、お昼からは中庭でお昼寝。うん。いつものあたしの一日が、また始まるぞ。

 …………。

 って言うか。

 今アメリア、なんて言った?

「……は? 何ですか?」

「いやだから、アメリア、今、なんて言ったの?」

「え……? えっと……。『今日もいい天気ですからね』って言いました」

「その前」

「えっと、『よく眠れましたか?』」

「その前!」

「『おはようございます』、です」

「その後!!」

「……さっきから何を言ってるんですか? 女王様?」

 そう! それだ!!

 女王様!?

 誰が!?

 あたしがぁ!?

 あたしはムチとロウソク持ってビシバシやる趣味なんて無いぞ!?

「……ですから、さっきから何を言ってるんですか? 寝ぼけているのでしたら、顔を洗ってください」

 いや、顔ならさっき洗った。それより、あたしが女王って、どういうことよ!?

 ――――!

 ようやく動きだしたと思っていた頭は、実はまだ眠っていて、このときになって本当にようやく、あたしの頭は動き出した。

 そうだ。

 さっきの夢は、夢だったけど、夢じゃなくて。

 現実のことだった!!


 あたしが、みんなのドッキリ大作戦に引っかかってから一ヶ月後。

 あのとき、陛下の言葉だけはドッキリではなかった。

 本当に、あたしをこの国の王様にしてしまったのだ!

 陛下はその日のうちにお城の大臣とか偉い人たちを集めて会議をし、そして、いろいろあたしには判らない面倒な手続きを経て、今日から、あたしは晴れて、このブレンダの女王となるのだ!

 ……んなバカな。

 二年前、陛下の側室に選ばれたのだって、いまだに信じられないくらいなのに、それが、この国の王様?

 世の中、おかしいだろ。

 でも、これが現実だった。

 どういうわけだかさっぱり判らないのだけれど、王位をあたしに譲る、という件において、城内から反対意見は全く出なかったそうなのだ。だから、一ヶ月なんて短期間ですんなり王位を譲ることになった。

 ちなみに。

 例のクローサーの大規模な攻撃計画――隕石落下計画は、陛下が王位をあたしに譲ると決まるとほぼ同時に頓挫してしまった。リュースたち第八隊が計画阻止のためにいろいろやったとの話だったけど、それにしたってあまりに簡単な解決だった。多分、最初からそんな計画なんて無かったのだろう。あれも、あたしを騙すための作戦だったんだと思う。

 トントン。またノック。アメリアが扉を開けると、シャドウが立っていた。

「女王、間もなく朝食が始まります。ご準備はよろしいでしょうか?」

「あ、え、はい。まあ」

 そうだ。洗濯だ、お昼寝だ、なんて言ってるヒマは無い。今日は大忙しだ。朝食の後は会議。お昼には近くの街の市長とか知事とかがあいさつに来るので謁見。その後もスケジュールはビッシリだ。

「では、こちらへ」

 シャドウに連れられて、部屋を出た。

 その後、五分で朝食を済ませると、すぐに会議室へ。主に、明日行われる就任演説の打ち合わせ。その他、今後の予定についてこまごましたことを決める。あっという間にお昼になり、昼食を食べる時間もほとんど無く、謁見の間へ向かわされる。市長や知事やその他偉い人たちが入れ替わりあたしに挨拶をしては、ぺらぺらと何かしゃべってるのを適当に聞く。それが終わったのが夕方前。そこでようやく、ほんの少しだけ休憩の時間を貰えた。


 ごろん、と、あたしは横になった。いつもの中庭。あたしだけの特等席……では、なくなっている。

 あたしのそばには、シャドウをはじめとする近衛騎士が十人以上、あたしをぐるっと取り囲むように立っていて、その横にはアメリアたちメイドも控えている。ここで一人ゴロゴロするのがあたしの密かな楽しみなのに。これじゃ、休憩時間の気がしない。

「……あなた、女王になってもこんな所で横になってるの? 少しはわきまえた方がいいんじゃない?」

 女王のあたしにタメ口を利いて現れたのは、もちろんリュースだ。

「何よ? いいでしょ? 別に」あたしは身体を起こして言った。

「私は別に構わないけど、警備する近衛騎士のみんなには同情するわ」

「あたしは警備なんて頼んでないもん。むしろ、ほっといてほしいくらいよ。ゆっくり休むこともできやしない」

「ま、女王になったからには諦めるのね。今までのグータラ側室とは違うんだから」

「うるさいなあ。判ってるわよ。それより、何の用?」

 ふてくされた口調であたしが言うと、リュースは分厚い資料を取り出した。

「明日の就任演説の警備の手順をまとめたわ。ちゃんと読んでおいてね」

 受け取る。ずっしりと重い。百ページくらいはありそうだ。これ、全部読めと言うのだろうか? 気が遠くなる。

「それで、演説で何を言うのかは決まったの?」

 リュースが心配そうに訊くけど、あたしはあっけらかんと。「ううん。全然」

「もう明日なのよ? 大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ? あーあ。ヤダな。逃げようかな」

「何言ってるの。しっかりしなさい。一ヶ月前は、あんなに立派に演説してたじゃない」

 一ヶ月前と言うのは、例のドッキリ大作戦の日のことだ。あの日、陛下の考えは間違っている、武力では何も解決しない、相手を理解することが必要だ、ブレンダニアのように、とか何とか言って、みんなに大ウケだった。

「あれは……あの場のノリって言うか勢いって言うか……あのときと今とじゃ違うよ。って言うか、そもそもなんであたしが王様にならなきゃいけないの? あたし、そんなつもりで言ったんじゃないのに」

「それはしょうが無いでしょ? あんな大勢の前で、陛下のことを批判して、自分の考えを主張したんだから。あれだけ偉そうなこと言ったんだから、ちゃんとやって見せないとね」

「あれは、あなたたちのドッキリのせいでしょうが。あたし、ハメられたのよ?」

「はいはい。もうそんなこと言っても遅いわよ」

 最後は適当にあしらわれる。うーむ。この恨み、いつか晴らさねば。

「まあ、確かにあなたじゃちょっと心細いけど、でも、心配しないで」リュースが笑う。

「ん? なんで?」

「ベルンハルト陛下と同じようにできるか? そう思っているから、不安になるのよ。違う?」

「ん。まあ」

「そう思うのが間違いよ。誰も、あなたがベルンハルト陛下と同じようにできるなんて、思ってないわ」

「悪かったわね。どうせあたしなんて、頼りにならないわよ」ちょっとふてくされて見せる。

「そうじゃないわよ。いえ、頼りないのは本当だけど、でもね、あなたとベルンハルト陛下は違う。あなたは、あなたのできることをすればいいの」

「――――」

「みんなきっと、それを期待しているわ」

 ……そうなのだろうか。

 たしかに、あたしにベルンハルト陛下のように振る舞うのはムリだ。

 あたしは、ベルンハルト陛下とは違う。

 でも、あたしがあたしらしく振る舞うのは簡単だ。

 いつものあたしのままでいい。

 それでいいのなら。

 …………。

 そうだ。いいこと思いついた。あたしは立ち上がり、おしりの埃を払う。

「シャドウ、今からの予定は?」

「はい。間もなくターラ市長の屋敷にて、就任を祝うパーティーが行われます。お昼に謁見した各街の市長たちも出席されますので、会食会談をしていただき、その後は城に戻って再び会議。それから――」

「それ、全部キャンセルして」

「は?」目を丸くするシャドウ。他の近衛騎士やリュースも同様だ。

「アメリア。お城にいるメイド、全員集めて」後ろに控えているアメリアに言う。

「え? 全員ですか?」

「そう。全員。メイドだけじゃなく、コックとか使用人も、全部。うーん。それでも足りないわね。シャドウ。近衛騎士団も集めて。とにかく、お城の中で手が空いている人は、全員」

「ちょっと。あなた、何をするつもり?」と、心配そうな顔のリュース。

「あなたも手伝いなさい。これは、女王命令よ」

 あたしはそう言って、中庭を後にした。みんな、しばらくぽかーんとしていたようだったけど、慌てて後を追って来た。


 そして、翌日。就任演説の日。

 あの日と同じ。ブレンダニア像の立つ、中央広場にあたしはやって来た。像の隣に作られたステージの袖に控えている。いつもの地味な茶色のワンピースは当然のごとく取り上げられ、いまは、王妃が着ていたような、派手な宝石がいっぱいの、でも、王妃のようなイヤミさはない、落ち着いた感じのドレスを着せられている。

「あら? 意外と似合ってるじゃない。ちゃんとした女王に見えるわ。馬子にも衣装とはよく言ったものね」

 なんて失礼なことを言ってるのは、もちろんリュースだ。今回の演説会場の警備責任者である。

「うるさいわね。こんな重たい服、ホントは着たくないわよ。ああ、もう。ヤダな。帰ろっかな」

 広場には、すでに大勢の人が集まっている。着なれない服であんな大勢の前に出て行くのは、なんだか素っ裸で出て行くぐらい恥ずかしい。

「何言ってるのよ。昨日、あれだけみんなを集めて大騒ぎしておいて。今さら帰すわけないでしょ。それと、昨日の祝賀会場の市長や大臣たち、あなたが突然キャンセルして、かんかんだったそうよ? ウィンたちがなんとかなだめたらしいけど、大変だったって言ってたわ」

「ははは。そりゃ、悪いことしたかな。後で謝っておくね」

「それにしても……あなたにはついて行けないわ。まさか、あんなことをやるなんてね」

 リュースは、広場の横の大きな垂れ幕を見た。広場に集まっている人も、不思議そうな顔でそれを見ている。

 あの向こうに、今日の朝までかけて準備した、あたしのとっておきの秘策がある。あれがあれば、今回の演説はバッチリだろう。

「何がバッチリよ……みんなから非難を浴びても、私は知らないからね」と、リュースが言った。

「何言ってるのよ。あなたが言ったんでしょ? あたしにできることをすればいい、って」

「今は言うんじゃなかったと後悔しているわ」

「ふふん。もう遅いわよ」

 あたしが笑うと、リュースは諦めたように首を振った。

「女王。そろそろ時間です」

 シャドウがやって来て、そう言った。

「じゃ、行ってらっしゃい」笑顔のリュース。

「うん。頑張るね」

 そして、あたしはシャドウに連れられ、ステージに上がる。

 とたんに鳴り響く拍手。空が割れんばかりの響きだ。あたしは手を振って応えた。

 みんなを見る。すごく大勢の人の視線が、あたしに集中している。もしかしたら、一ヶ月前のあの日よりも、集まった人は多いかもしれない。

 ステージの真ん中に立つと、拍手は一段と大きくなった。でも、あたしが手を上げると、一瞬で静まり返る。うわ。すごいな。なんか気持ちいい。これ、クセになりそうだ。

 ……そんな場合じゃないな。スピーチスピーチ、と。

「さて、みなさん。今日は、あたしのために集まってもらって、ありがとうございました」

 あたしの言葉に応えるように、また拍手が沸く。あたしは手を振って、それに応える。

「でも、ごめんなさい。今日は、何を言うかとか、全然考えてないの」

 あたしがそう言うと。

 しーん。

 みんな、目が点になる。口を開けて呆れている人もいた。

 そう。結局あたしは、何をしゃべるか考えて来なかったのだ。

「だって、言いたいことは、一ヶ月前に、全部言っちゃったんだもん。あれ、みんなも聞いてくれてたでしょ? あれがあたしの今後の方針の全て。また同じこと言っても、そんなの、つまらないでしょ?」

 いつもの口調で話すあたし。女王って、こんな喋り方するのかな? と、ふと思った。しないだろうな、多分。でもいい。あたしは、あたしらしく。

「その代わり、今日は集まってくれたみんなに、とっておきの贈り物を用意したの」

 そう言って、広場の横の垂れ幕を示した。みんなの視線が、一斉に注がれる。

 今回用意したのは、あの垂れ幕の向こうにある秘策のみ。

 でも。

 それが、あたしのすべてだと言っても過言ではないだ。

 大きく息を吸い込み、そして、お腹に力を入れ、あたしは精一杯の声で。

「あたしの必殺技……エマの、特製シチュー・女王就任バージョンです!」

 言うと同時に、垂れ幕が落ちた。

 その向こうには、大きな鍋に、たっぷりのシチュー。

 それが、なんと三百個! 全六万人前!!

 その量に、広場のみんなから、おお! と、どよめきが起こる。ふふん。悪くない反応だ。

 一晩で、これだけ用意するのは大変だった。最初はせいぜい千人前できればいいかなと思っていたんだけど、集まってくれる人は、そんなものではない。食べられる人と食べられない人がいたんじゃ、さすがに申し訳ないので、広場に入りそうな人数を広さから計算し、その倍は余裕で食べられるくらいの量を作ったのだ。もちろん、いくらお城にたくさんの人がいるとは言え、一晩で六万人前なんて普通は無理。でも、そこはあたし、魔導大国ブレンダの女王。この国が世界に誇る魔法技術を最大限に駆使し、見事、間に合わせたのだ。

 ……まあ、ホントに大変だったけどね。

「全員の分あるし、お代わりもできるわ! みんな、遠慮なく食べて行ってね!」

 あたしがそう言うと。

 その日一番の拍手と、歓声が沸き起こった。

 そしてみんな、群がるように特製シチューへ。

 アメリアを始めメイドや使用人、騎士団の人たちも手伝って、一人一人に配っていく。食べてくれた人の、おいしいという声と、その笑顔が、ここからでも判るような気がした。良かった。みんな、喜んでくれたみたいだ。

「どうやら、なんとかごまかせたみたいね」リュースがステージに上がって言った。

「ごまかせたとは失礼ね。あたしがあたしらしく振る舞おうとしたら、自然とこうなっちゃうのよ」

「まあ、確かにそうね。それにしても、この先が思いやられるわ。王の最も得意なことがシチュー作りだなんて。こんなので、この国は大丈夫なのかしら」不安げなリュース。

 でも、あたしは。

「大丈夫に決まってるでしょ?」

 自信満々に言う。

「その根拠は何?」リュースは疑わしそうな目を向ける。

 でも、この自信は、根拠の無い自信なんかじゃない。

 なぜなら。

「簡単よ。あたしのそばには、いつもあなたがいるもの」

 あたしは、にっこりと笑って言った。キョトンとするリュース。

 そう。

 リュースの言う通り、あたしは頼りない女だ。一人ではできないことは、たくさんあるだろう。

 でもリュース。あたしのそばには、いつもあなたがいてくれる。

 あなたは、あたしと違って強い人。あたしのできないことを、あなたはできる。

 二人で力を合わせれば、きっと、たくさんのことができるはず。

 ううん。二人じゃない。

 あたしの周りには、シャドウもいる。アメリアもいる。ウィンも、アランさんも、アーロンさんも、騎士団のみんな、メイドのみんな、大臣のみんな、そして、この街の、この国の、全ての人たちがいる。

 そして――イサークがいる。

 そう。あたしは、一人で王になるんじゃない。

 この国のみんなが、あたしを助けてくれるはず。

 だから、何も不安になることはない。

 みんなが一つになれば、できないことなんて何も無いんだから。

「――それもそうね」リュースが笑った。あたしも、笑い返した。

 空を見上げた。そこには、ブレンダニア――ブレンダを護る者。あたしたちを、広場の人々を、そして、この国を、見下ろしている。


 ――――。


 こうして、あたしはブレンダ王としての一歩を踏み出した――。


     ☆


 ――それぞれのその後――


 エマ・ディアナス

 第五十四代ブレンダ国王に就任。ブレンダ初の女王となる。

 就任後は悪化したクローリナスとの関係改善に力を注ぐ。

 前王と異なり、武力よりも対話に努め、クローリナスの民からも高い支持を得る。

 後に、クローリナス前王の遠縁の少女を新国王として擁立。クローリナスを再興した。

 その慈愛に満ちた性格から「ブレンダの女神」と呼ばれ、多くの民から慕われた。


 リュース・ミネルディア

 騎士団第八隊の隊長として、クローサーとの戦いに全力を尽くす。

 クローサー壊滅後も、第八隊は国の防衛に力を尽くし、ブレンダ騎士団最強の部隊として、国内外にその名を轟かせた。

 その勇猛な姿から「ブレンダの鬼神」と呼ばれ、長く歴史に名を刻むこととなる。


 ウィン・アスティル

 近衛騎士隊長の座を他の者に譲り、第九隊の隊長となる。

 リュース・ミネルディアの第八隊とともに、クローサーとの戦いに全力を尽くした。

 後に第八隊と同様、第九隊もまた、国内外にその名を轟かせたと言う。


 シャドウ・アルマ

 一度は除隊を申し出るものの、エリザベートと女王に説得され、騎士団にとどまる。

 後に近衛騎士隊長となり、生涯女王の護衛を務めた。


 アラン

 第八隊の副隊長として、リュースを支え続ける。

 クローサー壊滅後は、第十四隊の隊長に任命された。


 アーロン

 第八隊の優秀な隊員として活躍する。

 後に副隊長となった。


 ジミー・ベイン

 第二十七隊の騎士として、エンフィールドの街の警備を中心に、与えられた任務を忠実にこなす。

 その功績を認められ、後に近衛騎士団に入隊した。


 アメリア・レイン

 従者として、生涯女王に尽くした。

 しかし、ゲームは弱く、女王との対戦では連戦連敗だったと言う。


 ベルンハルト・フリクセン

 王座をエマに譲り、城を去る。

 首都ターラ郊外の屋敷にて暮らすが、一年後に死亡。死因は公にされていない。

 暗殺、自殺、病死、など、様々な憶測が流れるが、真相は不明。


 エリザベート・フリクセン

 ベルンハルトとともに郊外の屋敷で暮らすが、彼の死後、どこかへ旅立って行った。

 クローリナスの孤児院で働いているとの噂があるが、詳細は定かでない。


 アルバロ・フェルナンデン

 ベルンハルトと供に、城を去る。

 彼の死後は、隣国のアシュナードに渡ったと言われている。


 レイラ・エスタリフ

 国家の転覆を謀ったとして、終身刑となる。

 生涯を暗い牢獄の中で過ごした。


 マイルズ・エスタリフ

 国外の後見人のもとで暮らしている。


 アシュレイ・オズボーン

 相変わらずスラムの店で妖しい商売を営んでいたが、後にリュースに店を潰される。

 その後はターラから逃げ出したが、別の街で商売を始めたとのウワサも……。


 セルマ・ビアス

 故郷に戻り、母親と静かに暮らしている。

 女王とは手紙でよく連絡を取り合っているようである。

 近々結婚の予定。


 クレア・オルティス

 国王暗殺を謀ったとして、本来なら極刑となるところであったが、恩赦により釈放。国外追放となった。

 その後、クローリナスに戻ったとされるが、詳細は不明。


 イサーク・バーン

 数々の功績を認められ、近衛騎士団への入隊が認められるが、それを断り、騎士団を除隊。城を去る。

 その後、単身クローリナスに渡り、小さな自警団を設立。周辺の悪漢や盗賊団から恐れられた。

 数年後、彼の自警団は、復興したクローリナスの正式な騎士団と認められ、国の平和を支える存在となる。


     ☆


 エマ・ディアナスとリュース・ミネルディア。

 女神のごとき優しさで民を癒し、鬼神のごとき強さで敵を倒しとされる二人。

 彼女たちは「現代によみがえったブレンダニア」と呼ばれ、多くの国民から愛され、支持された。

 後にブレンダは、この二人の力によって、かつてない繁栄を見せることになる――。


 ……なんてね。


               (ブレンダニア~女神と鬼神~ 終)



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