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【二度目の政治は、恋に厳しい】〜宰相令嬢リディアの奮闘録〜  作者: 春野 清花
第七章 才覚証明編

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第百六十一話:偽使



 場の空気が、凍る。


 グランディルの問いに。


 使者は、答えない。


「……」


 沈黙。


 わずかに、呼吸が乱れる。


「ぐっ……」


 言葉が、詰まる。


 視線が、泳ぐ。


 その一瞬で。


 すべてが、十分だった。


「……衛兵」


 グランディルの声が、落ちる。


 冷たく。


 迷いなく。


「この者を捕えよ」


 一拍。


「伝達魔法の残滓が無いか、調べよ」


「「はっ!!」」


 即座に動く。


 距離が詰まる。


 逃げ場はない。


「待て――」


 言いかけた瞬間。


 腕を取られる。


 抵抗は、出来ない。


 連行される。


 そのまま。


 扉の向こうへ。


 音が、遠ざかる。


 沈黙が、戻る。


「……」


 誰も、すぐには口を開かない。


 だが。


 全員が理解していた。


 あれは、使者ではない。


「……妙だとは思っていた」


 グランディルが、静かに言う。


「早すぎる」


 一拍。


「いかに友好国といえど」


「ここまで迅速に動けるはずがない」


 事実を、並べる。


 冷静に。


「つまり」


 視線が、わずかに鋭くなる。


「事前に情報が流れていた」


 断定だった。


 逃げ場はない。


「……」


 空気が、重く沈む。


 外ではない。


 内だ。


 この国の中で。


 誰かが。


 動いている。


「……アルトゥール」


 誰かが、名を呟く。


 低く。


 確信を含んで。


「……十中八九、あの男だろうな」


 グランディルが、淡々と続ける。


 怒りはない。


 だが。


 見逃しもしない。


「……」


 場の空気が、変わる。


 今度は。


 敵が、はっきりと見えた。


 外ではない。


 内にいる。


 しかも。


 確実に。


 こちらを見ている相手が。

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